夏祭り3
楽しげな笛の音や太鼓の音が聞こえてくる。
香ばしい香りに、甘い香り、祭りというのは、なんと心を揺さぶるものなのか。
恋弓神社は、学校の裏手にあたり、古くからある神社をリノベーションしており、恋のご利益ありとの触れ込みで若者たちに人気のパワースポットになっている。バリアフリー完備、清潔なトイレ。町の支援も入っている。一大スポットだ。恋愛御籤や、恋愛破魔矢、恋愛お守り、恋愛身代わり。などなど様々な恋愛のご利益をもとめ、県外からも買いに来るほどだ。
「さてと、なぁ、ラブ」
「なによ」
「その格好は?」
「どうよ」
彼女はにかっと笑った。
ラブは黒にヒガンバナを描いた浴衣を着て、楽しそうにくるくるまわる。真っ赤な花がよく映える。
「いつか着てみたかったのよね、浴衣。どうよ」
「まぁ、似合っているけどよ」
「ふふん」
彼女はまんざらでもないという顔をしていた。
「さてと。やるか。」
「おうよ。チャチャっと片付けて、お祭りを楽しみましょ。ここのお祭り行ってみたかったのよね」
ラブは、弓を取り出し、恋之助はコンタクトをつける。つけた視界は特に変化はなく。ラブの方を向く。
「あんまり、変化ないな」
「そうね。まぁ、わたしが、ちょっと楽かしら。触れたり、見られるためには、気合をいれないといけないし。さてと、まずは、兎狩りね。」
矢を取り出して、愛之助の方に渡す。普通の矢のように見えたけども、うっすら光って見えた。
「…さてと…あんたのあの子への想いを込めなさい。鮮度と濃さが大事だから大量には用意できないから、しっかりね」
鮮度と濃さってなんか牛乳みたいだな。こう、気持ちを込めるってなんか気恥ずかしいな。
「さぁ、うさぎ天使を探しましょう。彼女を抑えてしまえばOK。さきに蓮ちゃんたちを見つけたら、矢を刺してうさぎ耳を回収しましょう。」
「よっしゃ!まかせろ」
学校の校門前。
「蓮ちゃん、かわいいね」
「ありがとうね」
彼女は紫色の下地に蓮の柄の浴衣を来ていた。となりにいるのは、彼女の友達だった。流川も浴衣を着てきてはいたが、二人きりではないデートにため息をつく。
「……今日もお友達がいるんだね」
「うん?そだよ、友達いた方が楽しいじゃん」
蓮が笑う。流川は若干面白くなさそうな顔をしたが、すぐに切り替えて、手を繋ぐ。
「行こうか。蓮ちゃん」
一瞬でも、その手をみた蓮も、手を取る。
「そうね」
そんな様子を上空からうさぎの天使が見守る。
階段はひたすら長い。
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ、なんなのよ。この階段の量」
「……おまえ、飛べるなら、わざわざ歩かなくていいだろ?」
「……ぜぇ……バカね。いくら、普通な人は見えなくても、見える人には見えるのよ。ここ神社だし」
「ふーん」
「魔力や霊力、あとは縁があったり、油断したりすると見られやすいのよ。」
「あぁ、はじめてあったときは油断してたわけか」
「まぁ、そうね」
「いや、すごい顔だったな」
「忘れなさい!」
頭をひっぱたかれた。
「あ、アイ」
その声に2人して、ドキっとする。
「レンかっ」
「ん?さっき誰かと話してなかった?」
「い、いや。俺はひとりだけど」
「ふーん…」
蓮はじっと、ラブがいる場所を見つめる。恋之助は、心臓がバクバク音をたてているのが、聞こえた。ラブも口を手で押さえて、息を殺して、目の前の蓮が体に触れないように注意する。
話をそらさねーと。
「あ、あれが、蓮の彼氏か。イケメンだな。」
「ははーん。アイ。驚いたか」
「お前が面食いとは、思わなかったぜ」
ほんの軽口のつもりだったが。ラブが両手でバツの印を見せる。あ、まずい。
「あたしが、顔で彼氏選んでるとでも?」
眉間に皺がよる。
「いや、そういうつもりで」
「あたしが、どんな思いで!!」
蓮がこちらに訴える。涙を目に溜めて。
「いや、ちが」
「もういい!」
とたんに視界が暗くなる。じんじんとする頬に自分が叩かれたことに気づく。




