落ちこぼれ天使2
自室に戻り、スマホを取り出し再び蓮に連絡をとる。他の家族にはそもそも彼女は見えるのか?
「あー、愛之助の家族には、見えちゃうかもね。わかんない」
何度かコールが鳴った後に、留守番電話に切り替わる。
「……なぁ、らぶ。確認したいことがある。」
「なに?」
「お前の弓で俺の口をあやつったように。そのうさ耳は、人をあやつるのか」
「あやつるって人聞きが悪い。あくまで、きっかけだけ。愛之助の中にあった深層心理を刺激しただけ。だから恋愛不器用なのは、元から。」
ぐふ。そうなのか。
彼女は矢をチアガールのバトンみたいに指先でクルクル回す。
「言ったでしょ十人十色だって。恋するために必要なこと。見た目や言動、価値観好きになるきっかけはいっぱいあるでしょ?普通お互いの愛創器の特性は詳しくは知らないの。わたしがたまたま知ってたのは、1度そのうさ耳つけたサラリーマンが猥褻物陳列事件起こして担当が大目玉食らったからよ。人の欲望刺激して、誰彼構わず襲っちゃうの。その人はもしかしたらはっちゃけたかったかもね。好きな人の前でうさ耳つけて、半裸でぴょんぴょん「うさぴょんだぴょーんって」叫びながらスキップしてたらしいの。うさ耳つけてだいたい半年くらいたった時かしら。恋が峰の住人に過干渉するなって。たしか、天使の輪をかなり没収されたはずよ」
事件現場の阿鼻叫喚っぷりを想像して、頭が痛くなった。
「……なぁ、ラブ。いまのお前、十分まずいんじゃないか?俺だいぶ話を聞いちゃったぞ。これって過干渉になるのか?」
「…あー、まぁ、ね…悲しむじゃない」
「え?」
「愛之助、あんた、あの子に何かあったら悲しむじゃない。あんたを見守ってきて、何度振られてもひたむきに頑張っていたのを私知ってるんだから。助けたくなっちゃったの!」
「見守ってって、でも、おれが告白上手くいかなかったのは、お前のせいじゃ、、、」
「あ、、、、、あー、、、うん!ま、そのあたりはあとでクギバットで記憶消すから大丈夫よ!」
この世から消されちゃうよ。
「なぁ、そのうさ耳変態野郎になるのを止めるためにはどうすればいい。いきなり、なるわけじゃないんだろ?見つけて引き抜けばいいのか?」
「発情するまではね。うさ耳は普通は視認できないのよ。でも、ステレオタイプなうさぎの特徴がだんだん濃くなっていくらしいわ。人参好きになったり、寂しくなったり」
いまどのくらい進行してるんだろ。先輩としか聞いてない。手がかりが少なすぎる。
「天使見習い同士ならお互いのことわかるのか?」
「それはわかるでしょ。じゃないとくっつけたい子達がかぶっちゃうじゃない。ターゲットの被りはできるだけ避けるように言われてるわ」
「じゃあこんな取引はどうだ?ラブが、その天使見習い見つけて、おれが対処するってなら。ラブへのペナルティは減るんじゃないか?おれは蓮を助けたい。ラブはこれ以上天使の輪をへらしたくない。なんだったら、恋人くっつけるのに協力してもいい」
「なるほどね。あり、だわね。」
「まずは状態確認だ。」
「まずいぴょん、まずいぴょん」
天使見習いは自分の輪を鏡ど確認しながらつぶやいた。頭に生えたうさ耳を揺らしながら彼女は、爪を噛む。
「しくじったぴょん。こんなことになるなんて」




