落ちこぼれ天使1
「この町、恋が峰は昔から天使見習いの試験の地だったのよ」
要約すると、その試験内容が天使見習いが、天使の輪を完成させると言うものだった。恋を進展させたら天使の輪が少しずつ完成していき、失敗したら天使の輪が減っていく。そのため、この町は恋愛がやけに盛んなのは、こういった事情からだった。
「ん?でも、お前、頭に天使の輪なんてねーじゃねーか」
「あるわよ!ほら、ここ!!みて、ここ!!」
6等分されたチーズをさらに半分こにしたようなものが、頭の上に乗っていた。てっきり髪飾りかと思ったわ。
「ちっさ…お前、やばいんじゃ」
「まずいわよ。あと、お前って呼ばないで。わたしにも名前があんのよ。ラブって呼んで。あんたも名前教えなさい」
「らぶ?また大胆な名前だな。俺は大好 愛之助。じゃあ、らぶは落ちこぼれの天使なのか?」
「うっさいわよ。愛之助あんたが、恋を進展させないから、こうなってんじゃない!!恋愛なついて不器用すぎんのよ、こんなにも応援してたのに」
「ああ!悪かったな。恋愛不器用野郎でな。ん?応援?応援ってなんだ?」
ふふーんと彼女は得意げに空中から、弓を取り出す。
「これよ。愛創器、恋の弓矢よ。この矢に刺された者は、天使の加護を受けるの。」
「は?。愛創器?具体的には」
「愛創器。私たちに与えられた天界の道具よ。原則1人に1つ貰えるの。私の場合は、こうなるといいなって思ったことを無自覚に相手に思い浮かばせるの」
物凄くドヤ顔だった。凄いでしょと。褒めたっていいんだよ。と。
「じゃあお前がずっと、おれの恋路の応援をしてくれていたわけか」
「そうよ。まさか愛之助が箸でぶっ刺してくるとは思わなかったけど。思わず姿表しちゃったじゃない」
この子がおれの背後にいた理由がなんとなくわかった。だが
「お前のアイデアが俺に伝わるのか?」
「そうよ」
「おれが、ど付き合ってくださいやら、カレーパン咥えながら遅刻遅刻と内股で走ったり、好きな相手の靴箱に果たし状置いたりしたのは」
「ぜーんぶわたしのアイデアよ。あ、うん、アィディアよ。有難く思いなさい」
なんでわざわざ発音よくする。
「って、ラブ、お前のせいか!!!!」
「あら、感謝してくれて、崇め奉ってくれていいのよ」
「恨み貶したてまつるわ!!」
今までの恋愛遍歴がみょーに上手くいかないのは半ばこいつのせいか。毎回告白しようとするとふっと意識が遠くなり、口が勝手にうごいたのだ。
「んで、蓮のやつも同じように、ラブみたいな迷惑キューピットがついてんのか」
「少し違うわ。って誰よ迷惑キューピットって」
天使の輪がなくなってしまうとペナルティーがあるらしく、手当たり次第で恋人を作らせようとしてくる天使も一定数いるようだ。
「あなたの幼馴染が運悪く、その焦った天使の愛創器に巻き込まれたみたいなのよ」
「なにかまずいのか」
「いい?わたしの愛の矢はあくまで1例。十人十色で色んなものがあるの」
「今、あんたの幼なじみが巻き込まれてんのは、」
「巻き込まれてるのは」
生唾を飲みこむ。一体蓮の頭には矢が刺さってるのか。剣が刺さっているのか。早く抜いてやらねーと。
「恋のうさ耳よ!!」
「そいつは、まずい!早く抜いてやらねー、、、、と?うさ耳?」
「そうだぴょん」
「……いい歳して、恥ずかしくないのか」
「脳みそに矢を貫通させちゃうぴょん♡」
「とってもかわいいです!すみません!でも、それって可愛すぎないか、いや、危険すぎる」
蓮は綺麗なボーイッシュガール。普段クールだが、男子にも女子にも隠れファンがいる。そんなクールな蓮がうさ耳姿なんて、萌え姿。ファンクラブの連中が見たら、死人が出かけない。早く回収して、詳しく分析しないと。ふぅー!!!
「盛り上がってるとこ悪いんだけど、突き刺さったのは、男のほうよ。」
「解さーーん!!!撤収ー!!」
叫んでしまった。
あいつの付き合ってるあいてって、かなりのゴリラ、もとい、筋肉質の先輩だったよな。
「おぇええ」
「はいてる場合じゃないわよ?あの愛創器って厄介なのよ。」
「どう厄介なんだ。」
「兎が成熟するのは、だいたい4ヶ月から半年。そうなると性欲の嵐が。って聞いてる?」
「おい、ラブ。それってまさか。」
「あんたの幼なじみちゃん、襲われちゃうわよ」
蓮!!!




