【■■警察署.取調室】
【■■府.■■市.■■区.■■■■.■丁目■番■号】
【■■警察署.取調室】
【2023/9/29.10:53】
インタビュー記録
インタビュー対象:国元浩一
インタビュアー:エージェント出灰
日付:2023年9月29日
補足:インタビュー対象は捜索中の和泉洋平と、何らかの取引を行なったと推測される指定暴力団「■組」に所属する構成員である。他の組員は同日、当該団体の事務所において、自らが使用したクラスA記憶処理剤、クラスD記憶処理剤によって昏睡状態にあるため、インタビューできず。
〈記録開始〉
出灰:貴方の名前と年齢を教えてください。
国元浩一:……これ言う意味ある? 知っとんのやろ?
出灰:ええ、あります。教えてください?
国元浩一:国元浩一、今年で24。
出灰:今の職業はいつから?
国元浩一:何歳で組入ったかって意味?
出灰:ええ。
国元浩一:ええと……17? いや、18? ……多分それくらい。
出灰:高校中退したんですか?
国元浩一:……あんた警察官?
出灰:ええ、警察官です。……答えたくないならそれで構いませんが。
出灰:この男を知っていますか?
〔エージェント出灰が和泉洋平の写真を提示する〕
国元浩一:……知らんよ。
出灰:……事務所、玄関にある監視カメラに。この男が写っていました。あなたの仕事は来客の対応などの雑務だと聞いています。この男を玄関で迎え入れたのはあなたではありませんか?
国元浩一:……あんたホンマに警察官?
出灰:質問に答えてください。あなたはこの男を見たことがありますよね。
国元浩一:……そう。……そやけどマジで玄関開けただけやで。その人が何しに来たかまでは知らんわ。
出灰:同じ建物内にいたんですよね?
国元浩一:おった。けどさ、組長が「お前はカメラ行っとれ」とかゆってさ、「茶ァもワシが出すから」とか。
出灰:では取引については何も知らないと?
国元浩一:知らん。
出灰:……そうですか。では、その男の様子はどうでした?
国元浩一:様子ゥ? ……まあ、クマがすごかったな。この人、マスクつけとったんやけどさ、それでもわかる……こお……骸骨……みたいな? 頬とかも落ちくぼんで……ああ、あと、手も傷だらけやったな。
出灰:その時に、なにか荷物を持っていたりしていませんでした?
国元浩一:……手ぶらやったな。
出灰:……おそらく……あなたも気づいていると思いますが、■組はこの男と……『よろしくない物』に関する取引をおこないました。それに関する経緯だとか……何か組に変わった事はありましたか? 何かを受け取ったとか、隠したとか。
国元浩一:別に……何もなかったと思うけどなぁ。確かに、ここ1週間ぐらいは……なんか、俺がのけ者にされてんのかな、とか思ってたけどな。……ほら、俺が部屋入ったらパッタリ話すのやめたりさ。そんな感じかなぁ。
出灰:なるほど。……取引の後、この男はどうしていました?
国元浩一:そのまま帰っとったったな。……組長が「車で送ろうか」ってゆったけど、断ってたわ。電車で帰るとか、なんとか。
出灰:どこに向かったかわかりますか?
国元浩一:わからんなぁ。組長もアニキも何もおしえてくれへんかったし。
出灰:そうですか。……そうですね……■■町ってご存じですか?
国元浩一:ああ、えっと……山の方にあるやつやんな。
出灰:行ったことは?
国元浩一:まあ、何回か……。
出灰:それはお仕事に関係したものですか?
国元浩一:そうやけど。
出灰:それはどういった仕事ですか? ああ、言いたくないなら黙っていても構いません。
国元浩一:……お前……ようそんなこと言えたな。
出灰:教えていただけますか?
国元浩一:……組長の出身がそこら辺りらしくてな、不動産いくつか持ってんねんて。まあ、誰かが使ってるってわけでもなんやけど。たまに掃除するんや。……そこにこの人がおるって考えとるん?
出灰:あなたには教えられません。……異常でインタビューを終わろうと思いますが、質問とかありますか?
〔8秒間沈黙〕
国元浩一:……組長とかアニキとかってさぁ、あのままなん?
出灰:医者ではありませんので詳しいことはわかりませんが、手は尽くしますよ。
国元浩一:頼むで、ホンマ。そのために協力したんやから。
〈記録終了〉
終了報告:インタビュー後、国元浩一はAクラス記憶処理。事件は老朽化によるガス漏れ事故として処理。現在、組員達は脳に重度の障害が残っており回復の見込みはなし。記憶処理剤の出所に関しての情報を早急に求む。
お願いしますよ。ホントに。毒ガス持ってたらどうするんですか。