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何処からか降りてくるモノ ソレを綴ってみた

 『身代わり ニート?』



 生まれ持っての病のせいで、姿は奇形だと思う。いや、奇形だ。

それで、酷いイジメや差別に遭って来た。身内血族に、同じ病の人はいない。

完治不可能、治療法も無し。奇異なる見た目の為、就職は出来なかった。

それでも、見た目だけで、五体は動くし五感もある。そう思って生きてきた。

だけど、五体も五感も病によって、縛されてきていた。

親族縁者の中で、私だけ。

ある時、ふと気付いた。

歳の近い親戚が、体調不良だという時、私は、激痛で蹲る。

また別の親戚が、車が大破する事故を起こしても無傷だった時、私は術後の経過が悪くて、大変な状態だった。私以外、大きく体調を崩したり、怪我をするコトも無い。

子供の頃から、そうだったと思う。

更に、弟の結婚以降、持病が急激に悪化した。

従姉妹が結婚して、子供が出来た時も、確か具合は良くなかった。

持って生まれた難病以外で、子宮の病気をした時も、従姉妹に子供が生まれていた。

重度の内膜症で、子宮摘出した時、弟の見合いがあり、後に結婚。

そのうえ、弟が尿路結石になった時、私には、大きな胆石が出来ていた。

それで、今に至る。

なんで、私ばかり、こんな苦痛に縛られるのだろうか?

何故、従姉妹には何も無く、フツウの姿で元気なのだろうか?

なんで、私ばかり……。

 ある漫画を読んでいて、気になるコトがあった。

『片目・片足に印なり傷をつけて、神の憑坐とする』

それは、まるで私そのモノに思えた。


―だから、気付いた。


 私の難病は、遺伝性と孤発性がある。家系にある疾患でもあるのに、私だけ。

私だけが、突然変異で難病になっている。親族の中に、同じ疾患の人がいれば、少しは受け入れれたかもしれないが、私だけ。

「〇〇ちゃんは、キレイになったね」「〇〇ちゃん、結婚おめでとう」

その言葉の外側に、私はいる。

私だけが、異質。


―だから、思った。

 

私は、親族縁者の業を独りで全部背負っていて、災いなどを肩代わりする為の存在だと。

そのコトに気付いてから、あらゆる呪術や民俗学の本を読み漁った。

少なからず、その様な人間は存在すると。

一族の業を背負う、或いは背負わせる。そうすることで、災いから逃げる。

そういうコトだ。

昔だったら、丁重に扱われる存在、または座敷牢に幽閉される存在だった。

もし、本当に、その様な存在だったとしたら、災いを引き受ける代わりに、その対価を貰っても良いのではないか? と思う。


そうするコトで、呪術として成立する。

親族縁者の厄災を、私が引き受ける。その代わり対価を貰う。私は、自分の苦痛と共に引き受けた痛みに耐えながら、ただ、自分の好きなコトを好きな時に出来ればいい。

私は、どう考えても親族の災いを引き受ける、身代わり。

そういう存在に、生まれ堕ちたのだろう。

そう思わないと、納得出来ない。ソレは、ある種の呪詛でもある。

 厄災を対価を貰い引き受けてる。もともと、社会生活は出来ない躰だし。

それが、ある意味

「働く事なく、好きなことをして暮らす」に

なるのかもしれないが。

私の難病を、苦痛苦悩を知らない人間から見れば、私は怠け者に見えるだろう、親戚からも、よく言われる。

―あんたが、自由に仕事が出来て、自由に色々楽しめるのは、私が厄災を引き受けているから。私が、あんた達の厄災や病魔や怪我を、肩代わりしているからー

何度も、そう思ってきた。

まったくの他人で、 事情を知らない人間から見れば、ただの『ニート』にしか見えないだろう。でも、ニートの定義には入らない。

なにせ、指定難病を抱えて、自分の身の回りの事がやっとの生活。激痛で眠れない。歩くのもやっと。片目は視力があっても機能していない。日常生活にも支障があるから、ニートには入らないし、一緒にはされたくない。

ニートか。そんな身の上なのに、厄災を引き受けてしまう。

親族縁者の中には、ソレに気付いている人もいるだろう。だから、ご機嫌をとる。

対価を貰えば、呪術として成立する。

それで、いいのかと、思うが。ソレしか無いのかもしれない。


―身代わりニート。

そんな、言葉が浮かんだ。







  『勇者の生まれ変わりらしいけれど、引き籠もる事にした』



 『勇者の家系だから、勇者になりなさい。あなたは、予言された者』

幼い頃から、そう言われ続けられた。

でも、自分は違う。とても『勇者』なんて向いていないし、なるつもりも無い。

そもそも、ソレが無理なことなのに、そう言われて来た。


 ―数百年前。世界を欲する魔界の王『魔王』が、人間界へ攻めてきた。

その影響で、人間界にいる在来種の魔物までも凶暴化して、人間界は瀕していた。

それぞれの国から、魔王討伐隊が組まれて、魔王のもとを目指して旅立った。

だけど、悉く全滅してしまった。

叙事詩に名を遺しているような、騎士や魔術師も、魔王との戦いで命を落とした。

名もなき剣士・魔導師達も、多くいたけど、同じ。

魔界・魔王との戦いは、圧倒的に人間にとっては不利。

誰しもが絶望し、明日を見ることを出来なかった。

魔王による、人間界乗っ取り。

徐々に追い詰められていた人間。

そんな状況のなか、一組のパーティーが、魔王の手勢を追撃したことで、人々は反撃のチャンスを得た。

『神話に語られた”勇者”』という言葉。

勇者と仲間達は、突如として現れて、魔王を倒し、魔界へ封印した―


 その勇者一行の末裔という家系。

ただの伝説や英雄譚なら、「はい、そうですか」となるけど。

世界のあらゆるところに『勇者』の痕跡が残っているし、王国の公文書にも、自分の家系は『勇者の家系』であると記されていて、代々、引き立てられていた。

各国の公文書にも記されている以上、伝説であり史実。

『勇者の家系』として、人間界で暴れている魔物の討伐を、率先して行ったりしている。

しかし、それは自分にとっては『昔話』でしかない。

『勇者の血』を絶やしてはいけないとかで、親戚は多い。

皆、魔王を討伐した勇者一行の血を引いている。

騎士・剣士・魔術師・賢者に、司祭や占い師まで、様々な『チカラ』を持っている。

現在も、その職業は引き継がれていて、家系や弟子入りで、その職になるのだ。

自分の身内親族は、その様な職業ばかり。

そのうえ、王国の公認だ。

由緒ある家系というものなのだろう。

それが、自分と関係あるのかが、理解出来ない。



「魔王の脅威は消えていない、何時、再来する。その時の為に、勇者である必要がある」

と、言い聞かされてきた。

兄姉弟がいるのに、何故か自分にだけ言ってくる。

兄は、国王から直々に騎士としての称号を貰うほど、人望と力量のある人物。

姉は、王宮魔導師で、弟子もいる。

弟は、学者。人間界以外の世界を研究し、交流をしている。そこには、魔界も含まれるし、精霊やエルフ達の住む、世界もある。仮に幻夢界と呼んでいるようだ。

人間界には、ひっそりと魔族も暮らしているし、エルフも出入りしている。

その辺りは、古代から続いていることらしい。


 何故、優秀な兄姉弟ではなくて、貧相な自分が『勇者』なのかは、理解出来ない。

だけど、幼い頃から家族や親戚、周りの人達から、そう言われてきた。

剣も、まともに握る事すら出来ない、魔法も才能がない。人望も無い。

人目が怖いし、他人との関わり方が解らない。

そんな『勇者』が、何処の世界にいるのだろうか?


 それは、曾祖母の予言からだった。

「曾孫の中から、勇者が出る。勇者の使命を受け継いだ者が。勇者を示す刻印を身体に持った子供が、生まれるだろう。その子が『勇者』だ。だから『勇者』として、育てなさい」

と言った。

『勇者の刻印』とは、初代・勇者が身体に刻んでいた文様のコトらしい。

その文様には、魔術的意味や願掛け祈願の意味合いがあったらしい。

ソレを持って生まれた子供は、『勇者』の生まれ変わりだと伝えられていた。

文様が、どのようなカタチだったかまでは伝えられていない。

だから、自分が生まれた時に、全身に『ソレ』が現れていたので、生まれながらの『勇者』また『初代勇者』の生まれ変わりだと、一族だけでなく、王国を上げて喜んだらしい。

意味が理解出来ない。

コレは、文様ではなく、先天的な痣だ。

もし、本当に生まれ変わりなのであれば、身体は健康であり、五体満足であるはず。


 自分は『勇者』には、なれないし、なるつもりもない。

何処の世界に、片眼片足が不自由な『勇者』がいるのだろう?


『勇者』ということで、イジメられていたし、極一般的な同い年からしても、軟弱。

家族や親族は、それでも『勇者』だからと言う。

出来ないのに、剣術や魔術を習わされた。

一応、王国の信用を寄せている家系だから、王国からの期待もあった。

それでも、自分が『不自由な身体』なのには代わりない。


 そんな毎日が嫌になり、家から出るコトは無くなり、一日の大半を自分の部屋で過ごしている。『勇者』では無いし『勇者』になんて、ならない。

なることは、出来ないのだから。

何時しか、家族親族は、自分のコトを『魔王に呪いを掛けられた』者として、周囲に話し、解決策を探していた。

ーいや、そうじゃないだろう。

思っても、口に出すコトは無い。

自分は『勇者の生まれ変わりなのに、ソレを潰そうとしている魔王に呪われた』

存在になっていた。

まったくもって意味不明。

『勇者』なんて、行動して結果をだした者のコトだろうに。

血筋や生まれ変わりで『勇者』なんて、迷惑だ。

だから、引き籠もる。

自分は、これからも、引き籠もる。

たとえ、魔王が再来したとしても、歩くコトすら、ままならない自分に、何を期待しているのだろうか?

呪われているのは、家族親族の『勇者』信仰だろう。

魔王が再来した時に、後ろ盾もなく、魔王に立ち向かう者がいたなら、その者こそが

『勇者』であると、思う。

 暗い部屋の中で、書物を読み漁る生活しかしていない、引き籠り。

いっそ、本当に魔王が再来してくれればと、思うほど、自分は歪んでいるのを感じている。

もし、魔王が復活して、世界が闇に沈んだら、誰が魔王と戦うのだろう?

歩くコトも、ままならない自分。片眼しか機能していない自分。

どうやって、戦うのだろうか?

魔法でも、この躰を正常にするコトは出来ないのに。

世界を統べるという神々に縋ったところで、治るコトは無かったのにな。

笑える。

◯◯◯な勇者とでも、呼ばれるのだろうか?

速攻で、魔物に殺されるのが、みえみえだしな。いっそ、そうでも良いかな?

「勇者の末裔、あっさり魔物に喰われる」

と、世界に知れ渡るのだろうか。

そう鬱屈しながら、日々を過ごしている。

現世を離れたい。そう思って決行しても、失敗に終わる。

ソレは『勇者』だからなのか?

いや『勇者』だから、周りの人間が、そうさせてくれないのだ。


 そんな暮らしの中、何処かの国で、魔物が町や村に攻め込んで壊滅させたと、世間の人達が話していた。在来種の魔物ではないと、噂が流れているとか。

討伐隊が組織され、なんとか追い払ったけれど、魔物は増えるばかりと。

『勇者』は何処だと叫ばれているらしいが、『勇者』とは『行動』した者のコトだ。

暗い部屋に引き籠り、不自由な躰と痛みで鬱屈した日々を過ごしている人間が、『勇者』では無い。生まれ変わりとか、啓示とかでは無いのだ。

フツウに見るコトも歩くコトも出来ない『勇者』が、どうやって戦うのだろうか?

世界は広いし、強者も大勢いる。その人達が戦えば、いいことなのに。

歩くコトさえままならないのに、どうやって戦うのか? ソレを説明し実行できるコトを証明してくれたら、『勇者』として生きてもいい。

そう言うと、誰もが黙る。

―そういうコトなのだ。

出来るわけが無いのだから。





 『転生したら、前世の自分が ダーウィン賞を貰っていた』


 気がついたら、まったく知らない場所にいた。

なんだか、変な感じがする。不思議な違和感。見回すと、誰かの部屋。

だけど、こんな部屋知らない。思い出せそうで、思い出せない。

『何か』が、あったことは、覚えているけど。

ソレが、なんであるのかが、思い出せない。

姿見があったので、自分を映す。

ー誰だ?

一瞬、自分自身なのに、まったく知らない人物に見えた。

飲みすぎたのか?

部屋のテーブルには、ワインや焼酎の瓶が並んでいて、どれも空っぽになっていた。

飲みすぎたのか? いや、私は下戸だったはず……。

頭の芯に霧がかかっている感じ。

私は、もう一度、鏡を見る。

確かに『自分』だけど。

夢なのか、何か、アホみたいな事をしていて大変な事になった。

夢だったのか。

 

 とりあえず、散らかっている部屋を片付ける。

まだ、夢を見ているのか、違和感が拭い切れていない。

明晰夢というのか、夢の記憶は覚えている方だ。

何処かで、ハイテンションで騒いでいる夢。数人集まっての、パーティーだったのか。

とにかく賑やかな感じの夢。そちらの方が、現実的に感じる。

それだけ、印象のある夢だったようだ。

部屋を片付けているうちに、頭が冴えてくる。夢は、お酒の飲みすぎのせい。

冷蔵庫から、水を取り出して、一気に飲み干して一息つく。

 だけど、妙なリアルさのある夢。

そういえば、夢は前世の記憶説というのを聞いたことがある。

夢は、記憶の整理というのが、科学的な意見だが。

あんなバカ騒ぎな夢。この前、たまたま観ていた洋画の一場面に、バカ騒ぎをする若者が出ていた。それを無意識に記憶して、夢に見たのだろう。

そうやって、目覚めの悪さを誤魔化した。

あんな、あの映画の様な『バカ』な死に方は、夢の中でもゴメンだ。

余りにも、バカバカしい結末。コメディ映画だけど、笑ってしまう死に方だ。



 色々考えながら、部屋の片付けをしていたら、散らかっていたゴミに足を取られて転んでしまい、頭を強打した。

痛すぎだろ、と何度も瞬きをしていたら、色々なビジョンが浮かんでは消えた。


―なんて説明すればいいのか

酔った勢いで、核燃料プールで泳いだ

ゴミ屋敷で、ゴキブリに食われた

寄生虫を生で、食べた

冬虫夏草を培養しようとして、自分の身体に寄生されてしまった

そんな夢をよく見るけれど、なぜだろう。

それに、一番鮮明な夢は

と、あるゲームに出てくる『光り輝くジュース』を再現して、飲んだ。

そして、ソレが原因で死んだ。

『ラディトール』間違った知識で造られた、エナジードリンク。

それを愛飲していた

『エベン・バイヤーズ』という人は命を落とした。

その後は、厳重に埋葬された……。

え、ソレも前世の一部?

『光り輝くジュース』は『ラディトール』が、もとネタ。


 自分でも理解出来ないけど、ソレらが前世の自分の記憶だと思った。

もし、そうだとしたら。

無知と好奇心・出来心と思い立ったら即行動は、アレだなと


自戒しなければ、今生現世でも、同じコトをしてしまいそうで

―ヤバい、な、自分。



 


降りてきたら、また綴るかも。

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