嫌味なイケメンに「いくら幼馴染とはいえ、あんなダサい陰キャと付き合ってんの?w」と言われてブチ切れて暴れた幼馴染が職員室に呼び出されてるので、僕はそれを夜空を眺めて待っている
職員室といくつかの部屋の電気だけついた、最終下校時刻後の学校。
うす暗い校門の前に、僕は立っていた。
星を見てみた。
ちょうど簡単にオリオン座を発見できた。
三つ一直線に並んでいる、オリオン座の中央の星が意外と目立つ。
今なんでここで待っているのかというと、幼馴染の由莉を待っていた。
由莉は、職員室に呼び出されていた。
呼び出された理由は、暴れて教室の椅子をふっ飛ばして、クラスの掲示板を破壊してしまったからだ。
でも由莉は悪くない。
由莉は僕を馬鹿にした人に対して、怒ったのだ。
僕と由莉は一か月くらい前に、付き合い始めた。
もともと幼馴染として仲良かったけれど、付き合うってなってからは、ちょっと違った仲の良さになった気がしていた。
そんな僕と由莉の関係をクラスの多くの人たちも知っていたわけだけど、そんな中、クラスの中心人物のイケメンな人が、由莉にはなしかけて、そして、
「いくら幼馴染とはいえ、あんなダサい陰キャと付き合ってんの?w」
と言ったのだ。
もともと嫌味めなことを言う人だったのだが、由莉は、僕を馬鹿にしてるって言ってすごく怒った。それでそのあとはさっき話した通りである。
由莉はもともと怒ると色々と暴走するところはあったし、先生はその点について怒っているのかもしれないけど、僕はそれとは別に、自分のことが情けないと実感していた。
だってそうやって嫌味な人に馬鹿にされるような僕なせいで、本気で由莉が怒ることとなってしまった。
それがダメなのだ。
ほんとは僕がかっこよく由莉を助けたりしたいのに。
現実では、由莉が僕をかばって怒られてるようなもんだ。
だから僕は絶対、どんな遅い居残りに由莉がみまわれようとも、ちゃんと待つ。
そして僕は由莉と話して帰るんだ。
☆ ○ ☆
オリオン座を眺めつくしたころ、遠くから一人の女の子が校門に向かって歩いてきた。
由莉だった。
「宏太、なんでまだ学校いるの?」
「由莉を……待ってた」
「待たなくてよかったのに。私、ただ怒られてただけなんだよ?」
由莉はそう言う。とても由莉らしいまとめ方だ。
けれど、
「ごめんな」
僕はまず謝る。
「なんで宏太が謝るの?」
「いやだってさ、僕がちゃんとしてたらさ、あいつが由莉に嫌なことを言うことはなかったわけだもん」
「そんなことないって。あーいう人はどんな人にだって嫌味を思いつくもんだと思うなー。まあそれで椅子をふっ飛ばしたのは私が悪いけど」
「いや悪くない」
「いや学校の備品壊すのは悪いでしょ」
「でも僕の中では悪くない」
「ありがと」
空はとても暗かった。
だけど由莉の姿は、いつも以上にちゃんと見える。
「僕……もっと頑張る」
「今でも結構頑張ってるから無理しない方がいいと思うよ。毎朝野球部の朝練前も走ってるし、夜も筋トレしてるらしいし、勉強も結構してんじゃん」
「走ってるのも筋トレしてるのも、基本代走でしか出番ないからこそ、動きだけは素早くしとかなきゃってだけだぞ」
「それでいいんだって」
「そっか」
「うん。宏太はいいの。だって私が宏太を好きだから」
「……僕も由莉が好き」
「ありがとう。それを一番言って欲しかった」
「そうだよな」
「そうだよ? ねえ、寒いからあっためあお?」
「手?」
「なるべく全部がいいな」
そう言って、由莉が軽く抱きついてきた。
誰もいない高校からの下り坂。
僕も少し抱き返した。
「ありがとな、ほんとに。僕のことなのに怒ってくれて。僕、もっと彼氏らしくなってみせるからな」
「私こそありがと。待っててくれて。これからは暴れないで、宏太にたくさん好きっていうことにする」
野球部の練習がどんなに伸びてもこんなに遅くなったことはない。
まだ家に帰ってないとしたとしても、みんなでファミレスあたりでご飯食べてる時間だ。
だからこんなに寒い高校からの帰り道で、幼馴染と一緒に立ち止まっていられる僕は、幸せだった。
「もっとくっつく」
「しばらく歩きたくなくなっちゃいそうだな」
「たまには、それでもいい」
「うん、それでもいいかもな」
オリオン座の下で一緒にいる由莉は、とにかくあったかくて、大好きだ。
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