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詩「糸と紙切れ」

作者: 有原悠二

目の前の沈んでいく一枚の紙切れに

私の今までのすべてが記載されていて 

そして私たちのこれからのすべても透かして

 見える


だから紙切れは沈んでいくのだ

糸に絡みついて

糸にしがみつかれて


力の入れ具合によっては

あなたと私の距離は近くまた離れていく

沈黙とは暴力よりも暴力的かもしれない

海が凪いでいる

私はただ平和的に生きたかっただけなのだ

無言の視線のその先に

水の中へと消えていく

あなたの手を握り締めながら

雨雲のように言葉を並べていた

まだなにも知らない子供たちの

吹いたその口笛に流される帽子たち

私はあなたに捧げたい

足首を傷つける海の破片が

どうか消えないで欲しいと

どうか消えないで欲しいと


思えば

ロウソクの火を消せなくなったのは

いつからだろうか


海の上を鳥が飛ぶ

海の中を魚が泳ぐ

その光景をただ眺めていたのは

海の向こうにある

今にも消えそうな岬の上の老夫婦

ただその視線の先に

一欠片の氷の涙を浮かべている薄いあなた 

 見える

だから私は口笛を吹きながら

砂の上を歩きながら

視線を海へと落としながら

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