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ダンジョンに銃火器を持ち込む  作者: アメリア・ベスブッチ
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エロい話

広い心で

昔、何もない真っ白な部屋では人間は数日足らずで気が狂う、なんてことを友達から聞いたことがある。

感覚に刺激がいかなくなると、自ら刺激を作り出すようになるそうだ。これを「幻覚」というらしい。

日常では些細な雑音ですら、感覚を正常に維持するために必要で、人間は常に「刺激を欲している」そうだ。


当時、僕はこのことを知って何故か「エッチダァ…」と言った。なぜだ…

教えてくれた彼は「お前天才?」と感心してきた。なぜだぁ…

恐ろしきかな中学のエロガキ、全てをエロく出来る。さしずめ中学男子は口にてエロスである。

かれこれ3年前の話である。


今、僕は洞窟らしい空間にいた。

らしい、というのも陽の光が刺さず、完全な闇のために手探りで触れた床や壁がひんやりとした岩肌だったから、洞窟だろう。


ペタペタと時に四つん這いになり、触覚で周囲を確認する。

「洞窟」纏まらない思考が口を突く。

岩肌が何度も騒ぎ立てる、だんだんしりすぼみに消えていく。


「わ!」大声を出せばピンボールのように跳ね回って遠ざかっていく。

「ちんこ!」あれから歳を重ねても、根本は何も変わってないようだ。

「セッ◯ス!」

ぼくは こんらん している!



ところでいつ覚えたのか、覚えていないが、人間は食物を食べないと三週間、水を取らなければ3日で死に至るそうだ。

食物に関してはグリコーゲンとやらのお陰で、数月は生きていられるそうだ。存外に人間はしぶとい。

膝丈もない大きさの犬に負けるような、軟弱極まる二足歩行の猿だというのに。

水を取らなければ3日で死ぬ。3日。


あれからというモノ。

現状、洞窟らしき場所での2日目の朝を迎えました。

もちろん朝日もなければ時計もないので、本当に日を跨いだか、そうでないかなんて判りはしない。

寝て、起きたからそういうことにしている。

何もない暗がりは時間の感覚を奪い去り、自分の足音だけがやけに大きく響く。


飢餓は本当に辛い、今ならばコンビニの募金にお釣りを入れることぐらいならば出来るだろう。

正気を保つために昨日から歩き続けているが、こっちが出口なのか、奥に入り込んでいるのか定かじゃない。


とにかく歩いている。

空腹からの腹痛で前屈みで、フラフラと。

朝メシを抜いた昼前の体育の終わり際の、あの空腹感が蚊に刺された程度に感じる。


既に意識は限界をとうに超えていた。

「…ぁ」頼りなく歩いていた速度が急速になくなっていき、不意に視界が飛んだ。

暗闇の洞窟は一切の太陽が差し込まず、その闇の中で力なく横たわる。


災害などで生存の可能性は、48時間で半分であるとされる。72時間では三割を割る。

意識の覚醒から既に3日は近く、事実として彼は底へと進んでいた。


少年の体に無機質な光が当たる、太陽光などではないもっと人工的な。

ハードディスクじみた稼働音が響くと、唯一の光源が地面から迫り出した。


『ーーーようこそ、管理者様ーーー』

迫り出したそれは、土台にタブレットのついたコンソールそのものだった。

『生産プラント管理No.not set、新規管理者設定を実行します。』

抑揚のない、男とも女ともつかない真っ白な声。


『適合スクリプトの実施、完了』

岩壁にコンソールと同様の光が走る。

『ようこそ、管理者様。現在の稼働率は 96.2% です』

感情を感じない機械音声は、何故だか笑っているような気がした。

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