死んだら異世界で幽霊になってたけど愛しい彼のために元の世界へ戻ります!
初めまして。月下美人と申します。
いつもなろう様では読む方を専門にさせていただいていたのですが、深夜の勢いで一作品書いてしまいました。
拙い文章でございますので、ゆるーくお読みください。
ピ、ピ、ピーーー
私は、死んだ。
生まれつき肺が弱く、成長すると共に正常に戻ってると過信したのが悪かったのだ。私は風邪をこじらせて死んでしまった。
笑顔の良く似合う彼の事は沢山泣かせた。
犬は苦手だと言う彼に、自分のペットと仲良くなって欲しくて近づけて泣かせて、大切にしていたグッズを踏み潰して泣かせて、嫌いなトマトを無理やり食べさせて泣かせて、ただの風邪を拗らせて死んでしまって、泣かせた。
泣いてる顔も好きだが、笑ってる顔の方が何倍も好きだった。
死ぬ時はおじいちゃんとおばあちゃんになって、しわしわになった顔をもっとしわしわにした笑顔を見たかった。
でも、泣かせてしまった。
あぁ、彼は私の後を追わないだろうか。
友人に託した私の手紙をちゃんと読んでくれるだろうか。
ちゃんと手紙に書いた通り、生きてくれるだろうか。
たくさん心残りはある。
心残りしかない私は幽霊になって、なんなら彼の守護霊にでもなれないだろうか。
そんな事を暗闇の中で考える。
そういえば、死んでしまたったが今からどうなるんだろう。
閻魔様の前に引きずり出されて、天国行きか地獄行きか審議されるのか?それとも私の希望通り、彼の守護霊にでもなれるのか。はたまた、この死んでしまった病室の幽霊にでもなってしまうのか。
あぁ、ここは寒いな。
なんだかサワサワと草の音のようなものも聞こえてきたような…。
先程まで肉体も何も無いただの深層心理だったような自分に体があるような感覚がある。
生きていた頃の名残だろうか?
あれ、なんだか本当に体があるような……。
「え」
目を開けるとそこは深い森の中だった。
私は、死んだはずでは…。
「あ、あー、あー」
声も出る。体の感覚もある。
ただ、生きてるという感じがしない。
温度がない。そして、足も膝くらいから透けて消えている。
これは、幽霊になったということか?それにここはどこだろうか。もしかしたらアマゾン、なんてこともあるかもしれない。
悶々と考えるが、ふとここは森だと思い出す。
よく耳を澄ますと遠くから獣のような声もする。
1人で考えたところで何も変わらない。とりあえず周りを散策してみようか。
そしてしばらく散策すると、
まるでゲームに出てくるような生き物がたくさんいた。
もしかして、これは異世界転生と言うやつか?でも、私は幽霊だ。だれにも認識されないだろうしただこの異世界で彷徨うだけになるのか…?
そう思っていた矢先、近くにいた骸骨のモンスター?と目が合ったような気がした。
いや、骸骨なので目は無いのだが…何となくこちらを見ているような気がする。
すると、そいつは私に向かって走ってきた。
な、モンスターには私が普通に見えるということなのか!?それとも、あいつがなんか闇属性みたいなので、同じ属性だからわかるだとかそういうのか!?
なにわともあれそんな場合じゃない。どうにかしなくては!
でもどうすれば…?
そうこうしてるうちに、骸骨は私にその手を伸ばし、何かその手から黒く禍々しいものを私に向かって投げてきた。
だが、それは私の体をすり抜けていき、私は無傷だ。
幽霊だから攻撃は効かないってこと…?
だが、それなら好都合だ。
骸骨もなにがなんだかわからない様子で、固まっている今が逃げ時だ。
私はなるべく生き物の気配のない方へ体を滑らせていった。
そうして、進みながら私は気づく。
こうして重力を無視して飛べるということは、上にも飛べるということでは…?
試して見たところ、それは成功し、ちょうどいい高さの木の枝に腰掛けた。正確には、この位かな、という所で留まっているだけなのだがそれは置いておこう。
さて、ここは異世界のようだ。
死んだ後幽霊にはなれたが、彼のいる世界ではない。
ならば、ここは異世界転生ものらしく成り上がっていこうじゃないか。
進化や、レベルアップなどが存在するのかはわからないが、魔王にでもなればもしかしたらあの世界へ行けるかもしれない。
そうしたら、あの世界へ戻り彼に会いに行こう。
また、あの笑顔を見るためならば
私は何にでもなれる。
そうして凡そ二年が過ぎた。
まず、一ヶ月ほどで私はあの森にいるアンデッド達を支配下に置いた。
どうやら、私のようなモンスターはこの世界にはいなかったらしく、物理攻撃の効かない私と、ポルターガイスト等を起こして無差別に攻撃のできる私とでは差がありすぎたようでさほど時間をかけずに支配下に置くことが出来た。
その時に私は1つスキルを得た。
ステータス、と呟くと自分の今の種族と名前、そして使える技などが見れるらしい。実に異世界らしい。
そこの欄に、ポルターガイストの他に眷属と闇魔法が増えた。
こうして少しづつスキルを得られることを知った私はこの世界のアンデッド、そしてモンスターを支配下に置くために世界を巡った。
そこから半年ほど経ち、私は自らの眷属を手に入れた。
生きる気力をなくした吸血鬼に、甘い言葉を囁き忠誠心を植え付けた。
罪悪感はあったが、全ては彼のため。どん底に居たそいつは甘い言葉を囁く私にすぐに堕ち、喜んで眷属となった。
そしてまた半年ほど経ったある日。魔王と名乗る男が現れた。
彼はこう言った。
「異界の者よ。なぜお前はそれだけの魔物を支配下に置きながらも更にその数を増やそうとする?世界の均等を壊す気か。それとも、お前がこの私に成り代わろうとでもいうのか」
「私は私の世界へ帰るために、その世界を渡る力を手に入れるために支配下におくの。魔物達を支配下置けば置くほど、その力へは近づいてきている。あと少しで辿り着けるのよ。だから邪魔をしないで。私はその力を手に入れる為ならば魔王にでもなるわ」
そう私が応えると、魔王は嘲笑った。
「世の理も知らぬ小娘が。少しばかり力を持つからと気が大きくなりすぎておるな。お前のような子狐が魔王なろうなど笑止千万。現に意思のない魔物と吸血鬼一人しか支配下に置けぬのがその証拠。そのようなお前が界渡りの力を得るまであと少しなどと、そんなに世が甘いわけないだろう。お前も心の底では分かっているだろう?」
カッとなりかけたが、その通りだった。
私は確かに物理攻撃の効かないチートのような存在だ。初めはこんな世界支配することなんて余裕だと思っていた。
だが違う。そう感じたのは吸血鬼の男に出会ってからだった。
魔物は動物と同じで、力の差を見せるとすぐに従ってくれる。
だが、魔族はちがう。
魔族は人のように意志を持ち、それぞれも個々で強い。
何度か交渉はしてみたが、まだ年端もない私には何百年も生きる平常時の魔族を支配下に置けるほどの舌もなく、まだまだ未知の部分も多いこの体では力も上手く扱えず、まるで子供を相手するかのようにあしらわれた。
でも、
「でも、私は、
彼に会うために、力をつけなくては行けない。
どうしても、会いたいの。まだまだたくさんやりたいこともあった。行きたいところもあった。でも行けなかった。笑顔が好きだった。少し音の外れた笑い声が好きだった。…でも、最期にみた彼の顔は泣いていて、声も掠れて、あんな姿は見たく、なかった。だから、会える可能性があるのなら、また、二人で過ごせる可能性が少しでもあるなら、私は、どんな手を使おうとも…」
途中から涙が止まらなかった。
彼に会いたい。
たとえ話せなくても、触れられなくてもいい。存在を見つけて貰えなくてもいい。ただ、その姿を、その声を聞きたい。
「私は諦めない」
歪んだ視界でよく見えなかった魔王の顔を、見上げると彼は笑っていた。
まるで出来の悪い娘に対するような苦笑いだ。
「その彼に会うために、お前はいくつもの国の魔物を支配し、ここまで来たのだな。」
初めの威圧的な態度はどこかへ消え去り、魔王は私の手を取った。
「私がお前にその力をさずけてやろう」
その代わり、支配下に置いた魔物達は解放してくれるな?
もしかしたら、嘘かもしれない。世界の均等とやらを崩しかけた私を消すために言っているのかもしれない。
だが、彼に会うための力を手に入れるためなら藁にでも縋る思いだ。
私は頷き、魔王の手を握り返した。
果てなくして、魔王の言っていたことは本当で、1年ほど私は修行を詰んだ。
本来なら魔力を練ったり、訓練を繰り返すことによってスキルを手に入れていくそうだ。それをすっ飛ばして無理やり自分の力を上げてスキルを手に入れていた私のやり方は異常だそうで、魔物全てを支配するということはもはや魔王とも呼べる力を手に入れてしまうことになっていたそうだ。
この世界では魔王はひとりときめられているらしいここで、二人も魔王が出てくると均等がおかしくなり、私が世界を渡る前に崩壊してしまう所だったらしい。
そこは申し訳なく思っている。本当に。
断じて彼に会えなくなるからという理由ではない。
あと、吸血鬼の彼は眷属なので解放することは出来ず、今も私に使えてくれている。
初めは甘い言葉を囁いて、そこから依存しているだけだと思っていたが徐々に母のように世話を焼き始め、今ではどちらが主人がわかったものでは無い。
そんな1年だったが、私はふと考える。
少しづつ愛着が湧いてきてしまったこの世界を、何一つ思い残す事無く去れるのだろうか。
もちろん、今でも彼が一番で、彼に会うためならなんだって出来る。
でも、態度はでかいが意外と可愛いものが好きで、しかもガーデニングが趣味だとかいう女みたいな魔王や、母より母らしくなってきた吸血鬼、そして魔王城に住む魔族達と離れるのは少し寂しい。
「情がわかないように、名前も覚えないようにしてきたのになぁ」
そうして思いを馳せる私に、その時はやってくる。
いつものように、魔王に遊ばれながら訓練をしていた時の事だった。
ふと、体に何かが入ってきた様な感覚がした。
これは、スキルを授かった時に感じる感覚だ。
動きがいきなりぎこちなくなった私に、魔王は攻撃を止める。
「どうした」
様子のおかしい私に魔王は休憩をとるぞと言い、サンドイッチ用意してくれた。
いつもは美味しいサンドイッチに食欲も湧くのだが、今はそうじゃない。
「魔王」
「なんだ、小狐」
「さよならをしなくては行けない時が来たわ」
そう言うと、魔王は少し寂しげな顔をして、小さくそうか。とだけ呟き、サンドイッチを食べた。
私もサンドイッチをいつもよりゆっくり、味わうように食べた。
もう、このサンドイッチを魔王と食べることもないだろう。
吸血鬼にもこのことを伝えると、そうですか。とだけ返された。思っていたよりも冷たい反応だった。
でも、その方がいい。
その方が、心置き無くここを去れる。
次の日、私はひっそりと界渡りの魔法を使うことにした。
見送ってくれるのは、吸血鬼と魔王の二人だけ。
「二人とも、今までありがとう。」
そう伝えると、二人は何か堪えるような顔をした。
やはり、少しは悲しんでくれているのか。
そうしみじみと思っていた矢先。
「ぶはっ!やっぱりもうむりだ!」
「本当にもう会えないと思っているんですか、あなたは」
「…は?」
どういうことだ。
「お前、ジークフリートと眷属の契約をしたことを忘れたのか?」
「何がいいたいの?」
「眷属の契約の効力を言ってみろ」
「主となる者の命令には絶対服従、主となる者に敵意を向けられない、主となる者とは魂で繋がっている…」
「そうだ。お前とジークフリートは魂で繋がっている。だから異世界に行こうがどうしようが、いつでも会えるのだ。そして私はお前より遥かに上の存在だ。お前に出来て俺が出来ないことがあるとでも?」
…言葉を失った。
二人はわかっていたのか。
わかっていて、私が悲しんでいる姿を眺めていたということか。
言いようもない恥ずかしさが込み上げてきたが、それもなんだかもういい。私はもうあの世界へ帰れるのだ。そのくらい許そう
「そうか。なら、精々あちらでもこき使ってあげるわ。覚悟しておきなさい」
「それはなんとも恐ろしい」
ふ、と笑うと、私は界渡りの呪文を唱える。
二人は笑いながらまた会おうと言った。
だがそれにええ。と返すのは少し癪だったので、
「ジークフリート、アルドベリク、また会いましょう」
初めて2人の名前を呼んだ。
その時のふたりの顔は少し見物だった。
体がばらばらになるような感覚がする。
そして、また集まってくるような感覚。
目を開けると、愛しい愛しい彼の後ろ姿が見えた。
懐かしい人工物で溢れるこの世界に、戻ってきた。
彼の姿を見て、作り上げてきた"私"が崩れていく。
本当は怖かった。
誰も知らない異世界で、一人ぼっちで、話も通じない魔物ばかりで、初めてであった疎通の出来る人は生きる死人みたいで、力をつけていた時に出会った魔王も怖くて、訓練も厳しくて辛くて…
でも、君を見て全てどうでも良くなった。
「ゆうくん!」
君に会えた時、ちゃんと声が届くように、触れられるように、実体化を覚えたんだ。
これを覚えたら君は喜んでくれるかなって、凄いよって褒めてくれるかなってたくさん覚えて、君を守れるように強くなってきたよ。
死んでしまったけど、人じゃなくなってしまったけど、君に会うために世界を渡って、会いに来たよ。
私を見て、泣きながら抱きしめてくれる君の温もりを、もう二度と私は離さない。
いや、離れない。
これからは、ずっと、ずーっと、死んでも一緒だよ。
愛してる。
この度は最後までお読みいただきありがとうございました。
主人公は少し?病んでいて、誰がなんと言おうと彼が一番です。魔王と吸血鬼に対しては、仲良くなった友達と転校で離れてしまうなー。くらいの気持ちでした。
でもいつでも会える。ということを知り、少しでも寂しく思ってしまった自分を恥じた。と言うところです。
彼が心変わりしている可能性につきましては、裏設定で実は彼女が死んでからこちらではそこまで時間はたっておらず、そして彼の方が重度のヤンデレで戻ってきた時彼は死のうとしていたのです。
そこに彼女が現れて、思い立ってこれからは二人ヤンデレ同士イチャイチャしていく予定です。
また機会がございましたら、もっと話もしっかり書いて、そのイチャイチャ等も書いて行けたらな、と思います。
それでは皆様、またどこかでお会い致しましょう。