第二話 本当の意味
「すみれ?」
後ろから話しかけられ澄玲は、振り向くと右の頬に桜の指をあてられた。
「引っかかった~」
ほんわかと現れたのは、桜だった。昔の母は、私が見てきたよりも、天然のような気がする。多分、成長するにつれて少しずつではあるが、強くなってきたんではないか、と思う。
私は、満を持し母にそれとなく優斗のことを聞いてみることにした。言葉使いにも気を使って自然に。
「そういえば、桜。私の兄貴に何か言った?」
ふと、桜の顔を見るとこちらから目をそらす。澄玲は、桜に目線を合わせようとしたが恋に目線をそらされた。
「何か?まずいことでも言った?」
「ううん。違うの。一応秘密にしておきたくて……」
「秘密?なんかまずいこと聞いた?」
私の中では理解不能だ。
(秘密ということはもう二人は……そういう関係?もっとも、お似合いだとは思うけど……まずい、まずいこのままでは、澄玲は生まれない)
私は、首を横に振って硬直した。
「すみれ?何か上の空になっているけど」
「いや、なんでもないけど。もう桜って兄貴と……」
少しの沈黙が澄玲をより不安にさせた。
「すみれは、さっきから何を言ってるの?そ、そんなわけないでしょ?秘密にしておきたかったのは、もうすぐ、すみれの誕生日だったから……。もう、内緒じゃなくなっちゃった」
桜は不服そうに言った。私はあっけにとられていた。
勘違い全部が、自分に返ってくるとは思ってもみなかった。自分ではなく、鈴木すみれだが。
「え!?じゃあ、“付き合って”って、言ってたのって、“買い物に付き合って”って、いう意味だったの!」
私は思わず口に出していた。
あんなに二人がもったいぶるから。それに、優斗のとらえ方は違っている。
__もしかして、優斗は気があるとか?
決して声にはしなかったが、胸のもやもや感は収まらなかった。