遠日
遠い落日から潮騒はやってくる
輝きは砂時計から零れおちた
海硝子になれなかった貝殻たち
遺されたものは夜光貝という
幻のかそけき冷たさ
或る日、海鳴りを聴いたことがある
流木を壮大な船とし
あわい色の砂を踏みしめ
地平に指でふれた日のことだ
空の螺旋を耳にあてて聴く
遠のいてゆくというさみしさは
もはや砂を浚ってゆく漣だ
小さく渦を巻く波間へと指を立て
セピア色のさようならを再生させる
落日へ掲げた手の隙間から
届かないという遠さに目が眩む
測りがたいことばかりだ
こんなにも眩いというのは