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中三病は伝説になる  作者: 山波アヤノ
1.日常の崩壊
8/9

リミッター・オン・リミッター(1)

 オレは突然、魔法が使えなくなった。

 オマケに、学校にも行けなくなった。

 いや、それ以前に……


「啓太、俺は学校行ってくるぞ。なんかあったら俺に電話してくれ」

「ああ、行ってらっしゃい」

「それはそうと、その状態はいつまで続くんだ?」

「中三病に詳しい医者の話だと三日くらいらしい」

「ほんと、突然そんな物理的な金縛りされたときはビックリしたよ」

 ────そう、オレは今、金縛りされている。物理的に。原因は不明だ。


 * * *


 魔法が使えないことに気がついたが、瞬間移動をしないと絶対に間に合わないから、何度も魔法陣を発動しようと呪文を唱えた。

 そしたら、五回目で魔法陣が出てきたと思ったら魔力を持った鎖が飛んできて、オレの体を拘束した。抵抗できずにその場に倒れた。幸い倒れた先がベッドだったから大きな怪我はなかった。

 祐斗にスマホを操作してもらい、まずは理事長に電話をし、事の始終を話した。

「理事長、これってどういう状態ですか?」

 オレが聞くと、理事長は静かに口を開いた。

『藤倉君は、《オール5の呪い》を知っているかね?』

「初めて聞きました」


 理事長の話を要約すると、こういうことだ。

 つまり、5時55分55秒に魔法を発動してしまうと何者かによって封印されるというものだった。

 過去に時を操ることができる最強の中三病少女がいたらしい。しかし、魔法を発動しているところを悪質な科学組織に見られ、研究施設まで拉致された。

「──過去に()()ということは、まさか、そこの研究施設で……」

「ああ、その通りだ。彼女は解剖手術を施されて死んだ」

 しかし、おかしいと思った。

「でも、そんな最強とまで言われた異能力者のマナはどうなったんですか?」

 一ヶ月くらい前の魔術教室で習ったが、能力値が高い人のマナは野に放てば凶暴化する。人に乗り移ってはその人が死ぬまで寄生し続けるという、恐ろしい習慣がある。つまり、そうなれば研究所は無傷で済むわけがない。確実にその場所──もしかしたら、街一つが消し飛ぶかもしれない。でも、理事長曰く

「そのマナの行方はわからない。だが、奴らの話だと解剖手術された体が光ったかと思えば次の瞬間に消えたらしい。その後、研究者らはすぐ後を追うために時空間を探索するサーチ魔法を使ったそうだ。しかし────」

 すると、理事長は一呼吸置いてこう言った。

「その次の瞬間に、彼らは突如として飛んできた鎖に縛られ、二週間もの間、指一本動かすことすらできなかったらしい」

「……今のオレと同じ状態ですね」

「ああ。そして、このときに研究者らが魔法を使ったとされる時刻が5時55分55秒だった」

「だから『オール5』なんですね」

「そういうことだ」

 それ以来、何人かが時刻の数字が全て5になる瞬間に魔法を使ってみたのだが、試した人全員が鎖で縛られるという結果になった。

 比較実験で、問題の時刻の1秒後に魔法を発動した研究者がいるらしいが、彼は拘束される事なく魔法が発動できたらしい。

『だから、藤倉君がオール5のタイミングで魔法を発動してしまったと考える方が自然だ』

「そうかもしれないですね」

『あと、最後に一つだけ伝えておく』

「なんでしょうか?」

 理事長は静かに、かつ冷静に言った。


『その鎖、どうやらマナ=スピーリトゥスの変形した姿らしいから、長時間拘束されると魔力を失いかねない。くれぐれも気をつけ給え』

「──ということは、この状態のまま放置したら……」

『そう、一週間後にはマナが全て吸い取られてしまう。それは、知っての通り死ぬことになるから、十二分に気をつけてくれ』

 昔はそんな力なんてなかったから、ただ拘束されるだけで済んだが、ここ最近で鎖が強くなり、魔力を吸収することが可能になってしまったということらしい。

「どう足掻いてもタイムリミットは一週間か……」

『私も解決策を見つけるのに協力するよ』

「よろしくお願いします」

『それでは、お大事に』

 理事長が電話を切り、スマホがトップ画面を映したことを確認してロック状態にする。

「……動けないんだった」

 仕方がなく放置した。


「電話は終わったか?」

 祐斗が部屋に入ってきた。確かこの後は学校がないはずなのになぜか制服を着ていた。

「どっか行くのか?」

「食料を調達してくる」

「なんで制服?」

「なんか、服を選ぶのが面倒だった」

「まあ、その気持ちはわかる」

 小さな笑いが起こる。

「じゃあ、俺は行ってくるけど、なんか食いたいやつあるか?」

「いや、特にない。それに、仰向けの状態なら食べることもできないから」

「そっか……」

「気にすんな。一日なにも食べなくても死にはしない」

「それじゃあ、行ってくる」

「はいよ」

 祐斗はしっかりと鍵を閉めて行った。ガチャって音がした後、何度かドアが開かないかどうか確認していた。あいつ、本当にいい奴だな。


 さて、オレ一人になったわけだが、どうすることもできないから暇も潰せない。

 流石に無音状態だと落ち着かないから、音楽をかけることにした。

 幸いにもスマートスピーカーなるものがあるから、動かずとも音楽をかけることや電話をかけることはできた。

 オレはスマートスピーカーに指示を出した。

「音楽をかけて」

 しかし、なにも起こらない。確かこのスピーカーは最新型だから、名前を呼ばなくても司令を実行することができるはず。

 電源がついていないことを疑ったが、ランプは青く光ってた。しっかりと起動している。

 つまり、考えられる原因は……

「どこかで電波が遮断されているのか」

 なんて、呟いたところでなにも起こらないんだけどな────

「よくわかったわね」

「……え?」

 視界に割り込んできたのは、フードで目まで隠した少女(?)だった。

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