危機一髪
恐怖で目を瞑っていたが一向に痛みはやってこなかった。一体どうなったのかと、恐る恐る目を開くと、そこには空中で静止している口を開けた狼の姿があった。
「うわっ、びっくりした。しかし何だこれは。何かに引っかかってる、というわけでもなさそうだしなあ」
突っついて見るが、特に反応はない。
不思議に思って周りを見渡すと全く音がないことに気がついた。
ここまでくると考えられるのは、
「時間停止、だろうな」
多分。では俺は時間停止魔法が使えるということなんだろうか。試してみよう。
その前に取り敢えず狼を何とかしなくてはいけない。そうだな、木の枝にでも刺しておくか。そう考え狼を持ち上げる。
小さいながら結構重い。何とか木の枝の高さまで持ち上げ枝を口の中へ突き刺す。
「よいしょっと。結構奥まで入ったな。まあ、念のためもう少し押し込んでおこうか」
グイグイと狼を枝に押し込み、腹の方まで枝を突き刺しておく。
準備は万端だ。早速時間を動かしてみよう。
しかしどうすればいいんだろうか。
解除って言えばいいんだろうか。
「時間停止解除!」
すると、辺りから風の音、葉が揺れる音、そして狼の悲鳴が聞こえてきた。
どうやら俺は本当に時間停止魔法が使えるらしい。良かった、魔法が使えて。無かったら森で死んでたところだもんな。
さて、ではまた人がいる場所を目指して歩き出そう。




