表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神話を歩む旅の果て  作者: 粒燕
第一章 感染都市ヴァリエル
7/24

第七話 回想

 ******


 夢。これは夢だ。

 目の前には小さい頃の自分と、まだ早起きだった頃のレインがいた。

 庭での修行、それはいつかの日の再生だった。

 素振りをしているレインは俺に尋ねた。


 「なぁ、どうしてレインは強いって言われるんだ?」


 確かこの日の前日に俺は剣聖の称号の意味を知った。


 「強い? あぁ、そうだな。答える前に質問だがお前はどういう奴が強いと言われると思う?」


 「どんな奴が? そりゃもちろんどんな戦いにも勝つ奴に決まってる」


 その気持ちは今でもほとんど変わらない。どんな場面でもそこに凛としている存在。それこそが強者としての存在だ。


 「確かにそれも強い奴だ。でもな、本当に強い奴は負けないんだ」


 「負けない?」


 「そうだ負けないんだ。負けないように戦う、それが本当に強い奴がすることだ」


 「負けないって事は勝つって事じゃん。それなら俺の言ってる事と同じじゃん」


 「そう言う事じゃない。……、そうだな、ようは最終的に勝つ奴が強い。負ける戦いを避け、勝てる戦いを戦う、そう言う奴が強い奴だ」


 「そんなんずるじゃん……」


 それはずる賢い奴がする真似だよ。そんな者が強いと、身内であり師であったレインの口から出たことは少なからずショックだった。


 「確かにお前の考えの中ではそうかもしれない。でもな、世の中で強いのはそう言う奴だ。それに勝てない戦いと分かって戦うのは勇気では無い、蛮勇って言うんだ」


 「でも、それでもさ……」


 「最終的に勝てばいいんだ。確かにその場で逃げるってのは恥かもしれない。でもな、その恥を受け入れるっていうのも一つの強さだ。その恥を受け入れて、必死に努力して最後に勝つ奴、それが本当の強い奴だ。それにな、ガンガン行ってやるって言う奴の死に顔は大抵見苦しい。命を大事に、生きていれば何度でもやり直しが出来るんだ」


 「いいか、死が誉れだと言った人間の死に顔は碌なものじゃない。生きて足掻け、それが強者の抱える強さだ」


 レインは優しい笑顔をしてまだ納得しきっていなかった俺の頭を撫でた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ