このバスはどこ行きですか?
五月はつらい
なぜこの世界には、会話があるのか。
よくあるその辺のゲームみたいに、テレパシーでもできないものか。
なぜこの世界には、ステータスがないのか。
どれだけ頑張れば、カンストするのものなんだ。
なぜこの世界には、セーブがないのか。
ちょっとした、挑戦だって怖くてできもしない。
モンスターはいないし、魔王もいない。敵国という、敵国なく。皆で平和を享受する。
周りを見ながら、置いて行かれないように、逆に行き過ぎないように、注意する。
何者にもなれて、何者にもなれない。このクソゲーを、リセットがないからやり直しできずに、細い一本道を進む。
ある時、共が周りばかり気にし過ぎて、足元の石で転んだ。待ってくれと手を伸ばすが、誰もその手を掴まない。平和がゆっくり首を横にふった。少し経って、諦めたのかうずくまった。
あの手を掴むべきだったのか、そうでなかったのか、迷い迷いに立ちどまると、平和が他人となって、肩を叩いた。何か言うこともなく、肩を叩いた。
それはとても痛くて、周りを見れば、皆から遅れていて、慌てて足を動す。
ちらっと後ろを振り向けば、遠くの彼方に、バスが去っていくのを見かけた。