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神将

本編ではわずかな出番で、ちょっと可哀想な役回りでした、今回はそんな彼が主役の一場面です。

咎められた。そう思っていると足が震えていた。


私の軽率な言葉で五官王に苦言を呈され、天帝のお孫たる泰山王にまで物言わせてしまったのだ。後悔してもしたりない。



◇◇◇◇



私は、戦も遠くなったここ五百年ほどの生まれだ。今回の殲滅戦が初陣に等しい。構えてもいたし、緊張もしていた、戦の経験がある叔父から「どんな戦になるかわからない」そう脅されてもいた。



◇◇◇◇



目の前の殲滅戦は呆気なく進んでいく。私が担当したのは澳洲(オーストラリア)と南西諸島だった。


次でちょうど五百体目か。


戦直前のような緊張感と妙な熱気が漂う中、紋章に従い進むとソレがすぐにわかった。


一人の女の姿をしていた。ただ静かに子を食んでいた。


強力な妖力があるわけでも無い、人の中で施政者と欺いて戦や病を振りまくような事もしない。むしろ、闇に紛れ人に紛れ在るとされぬように存在してきた物なのだ。

よくぞ、このような物にお気づきになられた。紋章が無ければ知らぬまま気づかぬままだったに違いない。

女だったソレは私達を襲ってきたが、打ち伏せ手早く仙火で燃やした。

妙な叫び声をあげながらソレは燃えた。



◇◇◇◇



わかっていたのに、あんなに早く終われたのは全て泰山王が道を作って来れられたからだと。

なんとか謝罪は出来たが、部屋から出ても悔恨の念が抜けない。


嗚呼!なんて愚かな事を!


誰もいない所で深呼吸したくて高台に出た。手すり持たれ掛かる。


「はぁーーーー」


深呼吸よりもため息が出た。いつまでもグジグジ逡巡していて我ながら情けない。


「落ち着いたか?」


後ろから叔父が様子を見にきた。叔父とは言え私の父親よりかなり年若く、私は叔父を兄のように慕っていた。


「落ち着きはしたんだが……」

「ふふ、耳目を集めたからな」

「面目無い、叔父に迷惑が掛からなければいいのだが……」

「気にするな、聞いてた奴らだって何も言わなければ忘れていく。それに咎めてないと泰山王もおっしゃっていただろ?あの方は理知的で慎重な方だ、お前の軽口なんて気にされないよ」

「うん……」

「色々初めてだったんだ、もう気にするな」

「うん……」


それでも呆けてる私を見て、叔父がガサガサと袋を探る。


「ほら、これでも食べろ」

「これは?」


赤い飴を渡される。


「天帝から賜った物だ。疲れてるからウジウジと考えるんだ。気が晴れるぞ、食べてみろ」


口に含んでみる。飴だと思って舐めたらサラリと溶けてしまった。優しい甘さと強い蜜の香りが口いっぱいに広がる。初めて食べた味だ。


叔父と目が合った。


「やっと目を見たな。甘くて美味いだろう?」

「うん」

「泰山王が言われていただろ?己が無いのは悲しい事だって。失敗も後悔も己があればこそだろ?」

「うん」


叔父が私の肩をぐいっと引き寄せた。


「自己研鑽、鍛錬に励もうな、次に何かあれば汚名返上出来るように」

「そうだな」


顔を上げる、地獄の空はいつも暗い曇天だ。


泰山府君の言葉が蘇る「推測を持つのも、感想を抱くのも、己があればこそ」「己を持たぬのは、とてもとても悲しい事」「どこまでも己を見つめ研鑽を積むのは全て平等」


己で選択したから後悔するんだ。己があるから後悔しても次に活かす事も出来るんだ。


肩を組む叔父を見た、私の顔を覗き込んでいる。


「今度、鍛錬に付き合ってくれるか?」

「ふふ、いいぞ」


暗く重い雲を見上げながら、私の心は少しずつ晴れてきていた。



ここまで読んでくださりありがとうございます、失敗は誰でもありますし、言うつもりが無かった言葉が出てしまう事もあると思います。

誰かに聞いた話ですが、何かを恐れて動かないよりも勇気を持って進め、それが失敗したとしても失敗した経験が残る、と。


作中の彼にも経験として次に活かせたらいいな、と思って書きました。


次回更新は明日の夕方を予定しています。

次回の主役はまたも本文に一切出番がない人です、でも主人公達の後日談でもありますので、楽しみに読んでくださると嬉しいです。よろしくお願いします。

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