花の精、再び
紫宮で天帝に会い、自分の名前と職務を聞いた泰己。自分に何が出来るのか?何をしようとしていたのか?自らに問いかけていて……
紫宮から帰り、何日か過ぎた。師父は一人で出かける事もあった。
師父が昼間に出かけている間、俺は家の側にある木を触れた。
生と死。
俺は考えていた事を実行してみる。
俺の背と同じほどの木にある葉に触れ
『伸びよ』
心の中で呼びかけ、待つ。
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ
木々が成長し俺の背を超えて行く。
もう一度心の中で呼びかける
『枯れよ』
パサパサパサパサパサパサパサパサパサパサパサパサ
木々の葉が全て枯れ落ち、枝も幹も干からびた。
師父が言ったように、俺はもう起きているのだ。
◇◇◇◇
表の方から物音が聞こえる、師父が戻ってきたのだろうか?出迎えに行くと師父ではない声だった。
「泰己ー!俺だ!哪吒だぞー」
哪吒だった。俺を見つけて目が輝く。
「そこか泰己!真君の居ない間に様子を見に来てやったぞ」
色彩豊かな鎧に包まれ、美少女と見紛うばかりの花の顔だが、中身は小学生男子だと思う。俺は明るく無鉄砲な彼が大好きだ。
哪吒はすぐに見つけた俺を抱き上げた。
「さて、今日はどこか行きたい所はあるか?連れてってやる」
頼り甲斐のある兄貴をしたいのだろう、外見を裏切るように話し方も内容も、近所の兄ちゃんそのものだ。俺はおでかけより聞きたい事があった。
「俺、顕聖二郎真君の事を知りたい!」
「真君?本人に聞きゃいいじゃん」
「それはそうなんだけど、師父はあんまり話してくれない」
二郎真君である師父から聞き出せたのは、妖怪退治をよくしてる、天帝の甥っ子、割と強い、くらいしか教えてくれなかった。
「まぁなぁ、本人から言うと自慢みたいになる人だしな……」
「自慢になるくらい強いの?」
妖怪退治を見てはいるが肉迫の接近戦なんて無かったし、修行も見てないし、どれだけ強いのかなんてよくわからない。
「なんだよ、真君がどんだけ強いか聞きたいの?」
「うん!」
俺は身内贔屓よろしく師父の武勇伝を聞きたかった。師父が強いと聞くのは嬉しい。
「んーなら用事もあったし、知ってる奴に会いに行くか?」
「知ってる人?」
「めちゃくちゃだけどスッゲー奴!会わせてやるよ!」
哪吒は俺を抱き上げ火車を勢いよく回して上空に飛び立った。
「あ、師父に置き手紙!」
「大丈夫!俺が伝えておく」
哪吒は槍から火を出し、地面を焦がして文字を書いていく、達筆過ぎて読めない。
「すごい!」
「へへへ、これでいいだろう!行くぞ!」
火で文字書いちゃうなんてすごい!でも地面に焼き付けられた文字は誰が消すんだろう?やっぱり師父が消すのかな?
キラキラとした哪吒の笑顔を見ながら、哪吒と仕事をしている師父はちょっと大変なのかもしれないと思った。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
前回までシリアスな場面が続いていましたが、今回に引き続き次回も明るい話になります。
天真爛漫な哪吒、再びです。次回は皆が知ってる彼が出てきます。とても書きたいと思ってた彼なので、私もすごく楽しみです。
次回更新も明日の夕方を予定しています、少しでも楽しく読んでくだされば嬉しいです。
よろしくお願いします。




