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崑崙山

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

お待たせしました更新です。前回、師父と泰己は化け物退治を終えて女神と会いました。今回はどんな事が起こるのでしょうか?

女神の媽祖と別れ、町で待っていた官吏に化け物退治の顛末を伝え、師父と俺は帰路に向かった。


もう夜も更け、雲がでて来ていた。夜空に月も星も無く、闇の中を過ぎていく、真っ暗な視界では全てが不確かに思えて心細くなる。


「師父…」

「どうした?」

「起きるって何?媽祖さんは一体なんなの?」

「わからぬ。わかるのは泰己、お前が彼女を呼び、化け物の詳細を知りたがった事だけだ。」

「呼ぶ?知りたがる?俺、よくわからないよ?」

「落ち着け、今は無理をせずとも良い。痛かったのだろう?もう遅い、ゆっくり休め。」


俺は触れている師父の暖かさと柔らかな言葉に気が楽になってきていた、頭痛からの疲れもあって、俺は素直に師父の腕の中で眠った。



◇◇◇◇



「今日は特別な方にお会いする」


珍しく師父が宣言し、俺も一緒に朝から湯浴みをして身を清めた。俺は師父が用意してくれた服に着替える、師父もいつもの服とは違う服装になっていた。

師父がわざわざ言うのも用意もこれまでに無かった事で、俺は少し緊張していた。

一体誰に会うんだろうか?


いつものように師父に抱かれ雲に乗り目的地へ向かう。


「どんな人なの?怖い人?怖くない人?」

「怖くはない…はずだ」

「うん」


師父が珍しく言葉を濁した。


今日のお出かけは長く飛んでいる、どこまで行くのだろうか?街を越え村を越え、山をも川も越え、砂漠も抜けて行く。俺は初めて砂漠を見た。


「砂漠だ!」

「気になるか?」

「初めて見たから…」

「ふふ、後で寄ろう楽しみだな」


師父は微笑んだ。俺の目にまた師父の顔に若い男が重なる。


最近、俺は師父に違和感があった。

師父からの態度や言葉使いを妙に若々しく感じる事がある。

もしかして師父は俺が知ってる人と中身が変わっていってるのでは無いだろうか?それとも俺が若返って子供になっているように、師父も若返ってたりするのだろうか?

俺を夢で助けてくれた青年が浮かんだ。

師父が若くなったら、あんな人なのかもしれない。


砂漠が終わり、草原が見え、山が見えた。


「そろそろだ」


師父がスピードをあげる。

高い山を登って行く、雲も越えて晴天の空に出る。どこまでも青く澄んだ空の中、雲海の果てに建物が見えた。


鮮やかな青い晴天の下、日を照り返すほど白い壁、横に大きく広がる宮殿、所々にアクセントのように朱色の窓が見える。俺の知る日本や西洋とも違う形式の城だった。

大きくそびえる門前に立つ。見上げてもまだ屋根が見えない。朱塗りの門に見事な金の飾りが付けられている、絢爛豪華で荘厳だった。


「こっちだ」


師父の後をついて行く。通用門だろう、それでも大きな門を開けくぐる。

高く広い廊下を進む、続く渡り廊下を歩くと眼下に雲が見えて、歩いている場所が上空だと感じた。太陽の加減なのか雲が七色に見える所もある。

俺は唖然としていて観光気分になっていた。


廊下を突き当たり、部屋に入る。城からの想像よりも小さな部屋で、朱を基調としていた。鮮やかな朱色の玉座に人が座っている。

師父は立礼し、俺もそれに習う。


「よう来た、通用門から入ったのかの?」

「はい、御目通り叶い恐悦至極でございます。」

「ほっほっほっ…いつものように気ままに入れば良い物を…」

「今はこの姿を取っておりますゆえ」

「そうじゃったのぅ」


奥に座っている人は師父と親しげに話する、老人だ。仙人らしい仙人と言うのだろうか。

穏やかで緩やかで、清流のような、満ちた湖のような、捉えどころのない、まるで水のような印象を受けた。


「そこにおるのは?」

「はい」


師父は俺を老人の前に優しく押す。


「…泰己です」


何を言えばいいのかわからず俺は名乗った。老人が立ち上がり俺のそばへ来た。


「…随分と可愛らしいお姿だ、貴方の目には(わし)はどう映っておるのか…」


俺を観察するように周囲を歩く、落ち着かない。老人は俺の顔をジッと見つめた。


「ふむ、儂はここでは太上老君(タイジョウロウクン)と呼ばれておる、わかりやすい名では老子かの」


老子、俺でも聞いた事がある名前だ。何をした人だっただろう?思想家?宗教家?俺の意識は目まぐるしく動いていた。


「ほっほっほっ大層迷っておるな。し…いや、清源、何用で参った?」

「はい、ここ数年増えております件で…


師父は化け物退治で海に行き、俺が頭痛を起こし、師父も知らない女神を呼んだ事、化け物の詳細を知りたがった事を伝えた。


「ふむ…」


老子は腕を組み師父を見ていた。


「して、お主は泰己をどうしたいのじゃ?」

「私は一瞬、刹那であっても苦痛を味わって欲しくありません。そして、泰己が求める物を求められるまま渡したい、私はそのためにここに在ります。」


師父は毅然とした口調で応えていた。老子が俺に向き合う形で膝を付き、顔を見る。


「泰己はどうじゃ?知りたいか?今の姿は傷を癒すための姿であろう。傷が癒えたかどうかは己の判断のみだ。泰己は起きたいのか?」

「え……」


俺は戸惑っていた。質問の意図がわからなかった。俺が起きる?今の姿が傷を癒すため?傷?

俺は俺自身ではない別の者の話を聞いているようだった。


「俺、知るために、起きる必要があるなら、起きたいです…」

「なぜそう思ったのじゃ?」

「今の会話もよくわからないし、海での女神の事もわからないし、わからないままは嫌だから。」


正直に思った事を伝えた。

かつて師父が俺に言った「お前はここに在るから今ここなのだ」なぜ俺が今ここに在るのか?それに意味があり理由があるのなら、俺は何より知りたかった。


「ふふ、愛らしい。」


老子が微笑んだ。


視界にチカチカするような光が舞う。


私は彼の微笑みを前にも見た事がある、彼はまだ青年で私の後ろを嬉しそうに追いかけてきていた『…今度のお姿はソレですか?』

彼は確かに私にそう言った。


痛い‼︎


俺は急激な頭痛に襲われた、立っていられない。師父がすぐに俺の体を支えた。


「少し休ませます」


師父は宣言し俺を抱えて立ち上がった。



ここまで読んでくださりありがとうございます、去年の暮れからなろうで書き始めましたが、ブクマや評価をもらえたり、アクセスで読んでもらえてる事がわかったり、とても楽しいです。


読んでくださってる方にも楽しんでもらえるよう励もうと思います。よろしくお願いします。


次回更新は明日の夕方から始めます。

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