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魔法少女はオシャレも大切です!

ひょんな知ったかぶりから、スパイス大魔王と化した白乃。

彼女は任務を遂行できるのだろうか・・・っ!?

「スパイス大魔王はどっか部活とか入るの?」


そう聞いたのはサッカー部不動のエースで反則王のボナペントゥーラであった。


「え、ええっと……ま、まだ全然考えてない、かな」


愛想笑いを浮かべて答えるのはスパイス大魔王。


「じゃあさ! サッカー部入ろうよ! サッカーやったらスッキリするよ。すごい楽しいし」


グイグイと顔を近づけてハイテンションで言う。


「スッキリ……そりゃあ、あなたはサッカーを不純同性交友の場にしているからよね。ふつうはスッキリなんてしないわ」


あきれて言うのは岳である。


「あ、あはは。わ、私、放課後は結構忙しくて、クラブとかはちょっと難しいかなって、思ってるんです」


放課後には当然『シロノホワイト』としての活動がある。


「ああ。放課後と言えば、わたくしたち、実は最近、魔法少女というものを始めたのですよ」


塾に通い始めたくらいのテンションで暴露をするカグヤ。

スパイス大魔王は耳を疑った。


「あ、あ、それ言っちゃうんですか」


スパイス大魔王は、こういうのは内緒にしておくのがセオリーだと勝手に思っていたからだ。


「ちなみに、掃除用具入れの隣に置いてある段ボールあるでしょう?」


そう言って岳は指を指す。


「今は寝ているのだけれど、あそこに魔法少女のマスコット、オコジョちゃんがいるから。クラス公認残飯処理係りだから、ナスとかピーマンはあげるといいわ」


岳は、さも誰もがナスやピーマンは嫌いだろうというノリで言った。


「ク、クラス公認!? みなさんが魔法少女やってるってこと、クラス全員ご存じなんですか!?」


「ええ。教職員も知っているわ。魔法少女になると単位ももらえるもの。あ、そうだ。スパイス大魔王ちゃんもならない? 魔法少女。案外ボロいわよ。敵の組織もダサいし」


「えぇぇぇっ!? わ、私を誘っちゃうんですか!? あ、あと、やっぱりちょっとダサいですよね……」


「? なにかおかしいかしら」


「あ、いえ。べ、別におかしくはないんです……」


もじもじとするスパイス大魔王。


「でもさー、魔法少女になるには条件あったじゃん。岳。忘れたのかよ」


「そうですよ。わたくしたちレベルの高度なマジキチ変態ならまだしも、スパイス大魔王さんは、どこからどう見ても純潔な乙女です。すごく……そそります」


カグヤはジュルリと涎をすする。


「そうだったわね……」

 

岳は思い出す。オコジョちゃんに言われた魔法少女になるための条件。

――『魔法少女……これになる条件は、少女であること。そして……重度の変態であること』


「ねぇスパイス大魔王ちゃん。あなた最近、こんなことしたら胸が高鳴ったとか、イッちゃいそうだったとかないかしら?」


「イ、イク……!」

 

スパイス大魔王は岳の公然セクハラに頬を赤らめる。


「岳! スパイス大魔王いやがってるじゃん。ボクたち変態は変態同士でしかそんな会話しちゃいけないんだ。誰彼かまわずセクハラしてると……通報されるよ?」


ボナペントゥーラの実体験からくる岳への忠告。


「あ、い、いえ。わ、私、気にしてません! みなさんとお話しするの、楽しいです! そ、それに……最近ちょっとだけ、イ、イクっていうか、どきどきしたっていうか……ごにょごにょ」


スパイス大魔王が思い出しているのは、あの時のこと――

岳の魔法、『聖なるサグラダ・ドロップ』を受けて公衆の面前でおもらしをしてしまったとき。

あの黒いフードかぶっているときは魔法少女を覗き、一般人には姿が見えなくなっている。

スパイス大魔王は自分のおもらしをしているみっともない姿を皆に見てほしい……そんなふうに少しだけ考えてしまったのだ。


「ん? なにか言ったかしら?」


岳は都合の良い難聴を発揮する。


「い、いえ! なんでもありませんよ!」


スパイス大魔王は、自分の中にある変態性に気が付かないようにそっとふたをした。


「そう?」


岳は不思議そうに首をかしげたが、それ以上とくに追及しなかった。

そのとき、どこからか携帯の着信音が鳴る。


――『君ガ過ゴシタ千年ノ時ハ~、誰ノ瞳ニモ映ラナイLieLieLie~』


その着信音を聞いたオコジョちゃんは反射的に跳ね起きて、段ボールから飛び出す。


「誰の着信音だい!? これは『GEKAI NO MOAI』の神曲『ライ』じゃないか!! ボーカルのWith youさんの人生観を音楽という退屈で最高なメッセージに変えたと言う神曲じゃないか!(『月刊アーティストトラベルvol.19 With you独占インタビュー』より引用)」


「あ、あ、こ、これ私の着信です! お、お姉ちゃんの好きな曲で……そ、それよりなんでライン通話でかかって来るんだろ……お姉ちゃんラインやってないはずなのに……」


オコジョちゃんの急な登場で完全にテンパってしまったスパイス大魔王。


「あ、お姉ちゃん……ライン始めたの? うん。え? ガウチョパンツ? ううん。私も知らないなぁ……聞いたことない」


電話に出たスパイス大魔王は小声で会話する。


「え、うん。今日の18時に市民病院でするの? う、うん。わかったよ」


ぺこぺこと頭を下げつつ電話を切った。


「あ、ご、ごめんね突然。なんかお姉ちゃんから電話があって」


「いえ。全然大丈夫よ。ただ、ガウチョパンツってなに?」


岳が問う。


「お、お姉ちゃんに質問されたんだけど、知らなくて。皆さん知ってますか?」


スパイス大魔王はカグヤとボナペントゥーラの方を見る。


「いえ。わたくしも全く……」


「ボクも知らないなぁ」


二人は首を横に振る。


「オコジョちゃん知ってるよ! 長い袴みたいな女性用のズボンのことを言うのさ! 今流行中のアイテムさ!!」


ドヤ顔でしゃしゃり出てきたのはオコジョちゃん。


「そ、そうなんですか……オ、オコジョちゃんさんは物知りでいらっしゃるのですね」


「ふふん! オコジョちゃんは天界でもおしゃれ番長として名高いからね!! 憎き宿敵ポセイドンにさえ『く、くそぅ! オコジョちゃんめっさオサレやん!』と言わせてるからね!!」


胸を張るオコジョちゃん。スパイス大魔王は少し困った表情でパチパチと拍手した。


「ちょっと待って。オコジョちゃんのどこがおしゃれなのかしら? あなた基本いつでも全裸じゃない」


岳が核心を突くような質問をした。


「え……岳ちゃんもしかして、全裸のおしゃれさが分からないタイプの人? ぷぷ」


オコジョちゃんがこれでもかというほど岳を見下して言う。

岳はイラっとしたが、相手にしたら面倒くさそうだったのでスルーした。


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