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火消なら、おまかせください!

いま明かされる「打開策」の意味――っ!!

「……打開策ってのは、この状況をなんとかする方法のことだよ!」


「そ、そういうことね。分かってたけど確認したのよ。念のため」


そのようなやり取りを経て、岳とカグヤは考え始める。

頭脳労働をこの二人に任せたのは大きな人事ミスではあるが、ボナペントゥーラはとくに気にしてはいなかった。


『犯人さん! 犯人さんはなにか辛いことでもあったの?』


「全部……! 全部あの男が悪いのよ!!」


『あの男?』


「そうよ! アイツは嫁と息子がいるのにそれを黙って私と付き合ってた! 私は! 被害者なのよ! だから、こんな世界私がぶっ壊してやるのよ!」


『ガソリンに火をつける程度じゃ世界は壊れないしさ! もうやめようよ!』

 

ボナペントゥーラと犯人のやり取りは続く。

その時、岳とカグヤは――


「犯人さん、男性に捨てられたらしいわね」


「そのようですね。ですが、自業自得といえますね。男性は男性同士、女性は女性同士お付き合いをすれば、誰も悲しまないというのに」


「まったくもってその通りすぎて反論の余地がないわね」


岳とカグヤはあまり生産的な会話をしているとは言えない。しかし、岳は閃く。


「……そうよ! うさみん! こんな作戦はどうかしら!!」


「はい……」


「ごにょごにょ」


 岳はカグヤに耳打ちする。


「それいいですよ! それで行きましょう!」


「ええ!」


ふたりの話がまとまりつつあったとき、ボナペントゥーラは……



『もうさ! 前の男のことなんて忘れちゃおうよー!』


「いやよ! あの人のことは憎いわ。でも、それ以上に愛してるのよ!」


『あのねー、そういうの失恋してる自分に酔ってるって言うの。やめた方がいいよー!』


説得しているのか煽っているのかもはやわからない。


「……ボナペントゥーラ」


岳が小さな声で呼ぶ。


「岳……作戦、できた?」


ひそひそと話す。


「ええ。まかせて」


岳は短くそれだけ言うと、カグヤに対して目配せする。


「では、行きます!」


カグヤは気合を入れて大きく深呼吸。そして、呪文を紡ぐ。



「『百合革命リリィ・レボリューション』!!」



カグヤの魔法が発動する。

ボナペントゥーラはまさか魔法を使うと思っていなかったので目を丸くしてしまう。

時が止まったかのように静まり返るガソリンスタンド。

何も起こらなかったのかとボナペントゥーラが疑い始めたとき、ことが起こった。


「わ、私……なにを……な、なんで……」


犯人が急におろおろとし始める。

そして、自身の左手に抱えていた幼女を抱き上げ、まじまじとその顔を見た後、ぎゅっと抱きしめて叫ぶ。


「幼女ちゃぁぁっぁぁん! なんて可愛いのかしらぁ!! ちっちゃなぷにぷにの足! すべすべの太もも! ロリっとしたお尻! 寸胴体系なお腹! つるぺたなおっぱい! お顔もむにむにで天使みたい! いいえ! 天使みたいじゃなくて天使よ! お名前なんて言うの? 好きな食べ物は? なんでも知りたい! 大好き!! あ~~、なんで私はこれまで男なんか好きになってたのかしら! 小さい女の子こそが最高だって今まで気が付かなかったのかしらァ!!」


――豹変。

まさにそんな言葉がぴったりくるだろう。


「ど、どーいうことだよ!?」


ボナペントゥーラが驚いた様子で言う。


「能力を使いました。犯人さんを百合にして、想い人をあの幼女さんにしたのです」


「え、じゃあ、これうさみんの能力!?」


「はい」


と、そうしている間に犯人サイドにも動き。


「え、な、なに……う、うぇ、うぇぇぇぇぇえぇぇえっぇぇぇぇぇっぇん!!」


犯人の目の前の幼女は突然の出来事に恐怖し、再び泣き始める。


「あ、あ、泣かないで……! 泣き顔もキュートだけど……笑顔が一番キュートよ。泣き止んでくれるならなんでもするわ! 私、好きになった人には尽くすタイプなの!!」


ダメ女特有の宣言をする犯人。


「じゃ、じゃあ、わるいことやめて、お家に帰らせて……あと、ハーゲ○ダッツ10個買って」


「わかったわ!!! 10個といわず1000個買わせて!!!!」

幼女は身の解放とアイスクリームを要求。犯人はそれを飲み、それ以上を与えると言う。

典型的な好きになった人には貢ぐタイプだ。たぶん、ホストとかにもハマるタイプだろう。


「上手くいった……のか?」


ライターの火をけし、幼女を地面に下した犯人をみてボナペントゥーラが言った。


「ええ。作戦成功よ」


本日、未だこれと言った活躍の無い岳が得意げに言う。


「よかったです」


カグヤが一安心という感じで同意し、一件落着となるかと思われたその時――


「え、え、えぇぇぇ~! どういうことですか!? は、犯人さん! は、早く火を付けてください! ほ、ほら!!」


『シロノホワイト』が言う。


「もしかして、犯人さんの男性への欲望がなくなって私の支配力が落ちている……? なら、全力を出します! は、犯人さん! ライターに火をつけてください!!」


『シロノホワイ』の言葉で、犯人は再びライターに火をつけた。


「え、え……私、こんなこともうやめて、新しい自分ロリコンとして生きていくつもりだったのに……どうして身体が……!」


犯人も戸惑っている。どうやら自分の意思とは関係ないらしい。


「なっ! おい! 犯人さんのヤツ! またライター持ってるよ!」


ボナペントゥーラが祝勝会モードの二人に告げる。


「『シロノホワイト』の存在を忘れていたわね。彼女は強引に人を操ることもできる……どうしましょう」


岳が冷静に言う。


「ええ。ですが、恐らく長続きはしません。必ずパワー切れがあるはずです」


カグヤが続く。


「って言ってももうガソリンに火が付きそうだよ!」


ボナペントゥーラが世界の終りかという雰囲気で言う。


「待って、今、だ、だか……打開策を考えるから!」


そして、犯人、『シロノホワイト』サイド。


「ふ、ふふふ。そうです。そのままでいいですよ……ひ、火を、つけて……」


『シロノホワイト』は苦しそうだ。岳やカグヤの分析どおり、この力の使用にはエネルギーが必要なのだ。


「い、いや……私……っ!」


必死の抵抗を試みる犯人。

ライターの火はもう地面スレスレ。

もう火が付く……そう思ったとき――



「『聖なるサグラダ・ドロップ』!!」



岳の声が響く。

それと同時に犯人の股間から液体が零れる。

それは少しずつ量を益し、激しくなる。

――シャァァァァーーーーーー。


「アンッ! やだ……っ! 止まらない……っ!!」


喘ぎながら聖水を噴射する犯人。

そして、その聖水は、ライターの火にかかる。

しゅぅぅ。

そう音を立てて、ライターの火は消えた。



「なるほど! おもらしで火を消したのか!! 岳! やるじゃん!」


「さすがです岳さん! 抱かれたいです!」


ボナペントゥーラもカグヤも岳の機転に感心する。


「ええ。計画通り」


ニヤリと岳は笑った。

岳たちの策が上手くいき、焦るのは『シロノホワイト』。


「えぇっ! ひ、火がおもらしでっ!! ええい! は、犯人さん! もう一度火を付けてください!!」


『シロノホワイト』は再び犯人を操る。



「ヤ、ヤダ! ま、また手が勝手に……っ!」

犯人は自分の意思とは関係なく動く右手を、左手で必死に抑える。

『シロノホワイト』は犯人を操り、強引に手を動かす。

しかし、一度濡れてしまったからかなかなか火がつかない。


「うぅぅぅ。ひ、火が付きません……そろそろ、わ、私の力も……」


事が思うように運ばず、焦りと苛立ちを抱く『シロノホワイト』。

――ここがチャンスだ。

そう思ったボナペントゥーラは幼女のところへ駆け寄った。


「幼女ちゃん! 今、犯人さんは戦ってるんだ! なにか応援の言葉をかけてあげて!」


思い人である幼女からの応援こそが最も効果的だと判断したのだ。


「えー、タダではだめー」


「……き、君なかなかだね。わかった。ハーゲ○ダッツ買ってあげるから」


この緊急事態に報酬を要求してくる幼女にイラつきながらも必死に言った。


「えー、それはあのロリコンお姉ちゃんがいつでも買ってくれるしー」


いまキレたらすべてが台無しだ……ボナペントゥーラは自分を抑え込む。


「そ、それじゃあ何が欲しいのかな? なんでも言ってごらんよ」


ボナペントゥーラは引きつった笑顔を作り、幼女の要求を聞き出すことにした。


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