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カラノソラ  作者: たちばなやまと
6/8

神様からの贈り物

私は人より秀でた才能は無い。


何の取り柄も無い。


しかしながら、人には恵まれる。神様から何の才能を授かったかは定かではないが、唯一無二の親友と出逢わせてくれた事には感謝している。


これは私と親友の始まりのお話。


私はどん底にいた。勿論、気持ちがだ。


可愛がってくれてたバスケ部の先輩が引退して、代替りした途端に風当たりがキツくなった。練習がハードなのは構わなかったのだが、露骨に疎まれていたのはいい気がしなかった。ちょうど夏休みから補講があったので、部活へは行かなくて良かった。

夏休み前のある日、転校生と部活帰りの事だった。

『二年の風当たりキツすぎ。』

転校生も私と一緒に三年生に可愛がってもらってた口だったので、似たような感じだった。


『わかるわー、補講からフェードアウトしようかな。』


『お前辞めるの?俺も辞めようかなー』


『でも辞めて何しよう。』


『俺は塾行ってるから、夏期講習でも行こうかな。』


『えっ?塾行ってるんだ?』


『お前もうちの塾来たら?』


『うーん、親に聞いてみないとなー』


『まぁ、来る気になったら言ってくれ。書類とか貰ってくるから。』


『わかった、助かるよ。てか、腹減ったからモス行こう』


『いいね、行こうか』


この頃には同じ部活ということも相まって、転校生とはかなり仲良くなっていた。ファーストフード店に着くと同じ中学の同級生がいた、店員として。

『久しぶりー、バイトしてるんだ?』


『夏休みに稼いでおこうかなって』


『なるほど、バイトも有りかな。』


席に座って転校生とバイトの求人を早速漁る。思いの外転校生は真剣に読んでいた。私はどのみち補講で半分は夏休み返上だったので、あまり興味がわいてこなかった。


夏休みに入り私は資料室に通う日々を送っていた。そんな夏休みのある日、私は母と姉と近くのファミレスに食事に行った。お昼のピーク時を過ぎた時間だったので、店内は閑散とした雰囲気だった。

テーブルに並べられた料理を平らげ、ドリンクバーに飲み物を取りにいった時のこと、ふいに後ろから

『いらっしゃいませ』と声をかけられた。振り返って見ると、転校生がコックコートを着て立っていた。

『あれ、バイト始めたの?』


『夏期講習行くのは来年からでもいいかなって思って、今のうちに稼いでおこうかなって。』


『いいなー、俺もバイトしようかなー。』


『ここまだ募集してるから、やるなら話してあげるよ。』


『考えておく。てか、今度何か奢ってくれよ。』


『おう、今度遊びに行こう。じゃ戻るね。』

彼は厨房へ戻って行った。


テーブルに戻って同級生がバイトしていたと話すと、姉が『あんたもやってみたら?』と言ってきたので、『気が向いたらね。』とはぐらかした。


地元の夏祭りの日。久しぶりに中学時代の友達が勢揃いしていた。各々の高校生活の話や、彼女の話なんかで盛り上がったものだ。

規模は小さいながら花火も打ち上げられるお祭りだったので、毎年花火を見てお開きという流れだった。花火を見終え帰りがけに、他校に行った友達と口論になった。きっかけは些細な嘘だったように記憶している。その時はその些細な嘘が、妙に気に障ってしまった。普段なら冗談で流せるようなことだったと思う。

口論を続けているうちに段々とヒートアップして殴り合い寸前のところでようやく他の友達が止めに入った。事情を説明するよう促されたので、簡単に経緯を話すと、意外なことに嘘を真に受けた私が大人気ないと皆が口々に言っていた。確かに大人気無いのは認めるが、嘘をつく方が悪いのではないか?と釈然としない気持ちをなんとか呑み込もうとしていた時、

『いやいやおかしいでしょ?嘘ついてる方が庇われるとか意味わかんないよね?もう行こうぜ。』と転校生が言いながら、私の肩に手を回してその場を離れるように促した。


二人になってからも彼は納得がいかないのか、文句を言っていた気がする。他人の事でこんなにも熱くなれる彼に私は信頼を寄せるようになった。この頃から私は彼の事を親友と思っていたのかもしれない。


夏休みが終わって、部活も退部した。少し暇を持て余すようになった。

冬には彼女にプレゼントでも買ってあげたいと思い、バイトを始めることにした。親友に相談すると、夏休み一杯で先輩が一人辞めたから、多分雇ってもらえるとのことだった。数日後に面接をして無事に採用してもらえた。

またそれと同時期に親友の通う学習塾に行くことにした。


人生初のバイトは楽しかった。先輩は気さくで優しく、色々な事を覚えるのは楽しかった。高校の教師が家族連れで来たときは慌ててバックヤードに隠れたりしたのもいい思い出だ。と言うのも高校はバイト禁止だった為だ。


資料室、バイト、塾、親友や彼女と過ごす休日。私の日常は穏やかで充実していたように思う、あの冬の日が来るまでは。


二年の始業式の翌日。この日は入学式があったので、大半の生徒は休みだった。

私は海へ向かった。何時間も浜辺に座って、失ってしまったモノを思い浮かべては、枯れてしまった涙を流そうとしていた。考える事にも疲れてきた頃電話がなった。親友だった。親友は本当にいつもタイミングが良い。私が辛い時、悲しい時、苦しい時、そんな時に限って連絡をくれる、今も尚。エスパーかよ。

暇なら食事でも行かないかという誘いだった。一人でいても気が滅入るだけだったので、願ってもなかった。ご飯を食べながら親友は気落ちしている私の様子を気にかけてくれた。彼女の事は友達はもちろん、親友にも言っていなかったので私は打ち明けるかを非常に悩んだ。結局のところ私は「失恋」したとだけ伝えた。

親友は深く詮索することは無く、黙って話を聞いてくれた。親友のこういった接し方には何度も救われた。本当になんて出来た人間なんだお前さんは。


翌日から授業があったので学校に行った。本音を言えば色々と思い出してしまうので、学校へは行きたくはなかった。委員長との一件があったので、変な噂が立っては困るとあの時は変に勘繰ったものだ、若かった、青かった。委員長にも一言謝りたかったのもあった。


授業中も上の空だった。ひたすらに時間が過ぎるのを願っていた。時間が全てを解決してくれると信じていた。現実はそんなに甘くも、優しくも無かったが。私は「表の顔」を作り、演じる術を次第に身に付ける事になる。


季節は梅雨。私は梅雨が季節の中でも特に嫌いだ。あまり好きな人はいないと思うが…

塾の帰りに親友とファーストフード店に来ていた。

『最近調子はどう?』

親友は口には出さないが、ずっと気にしていてくれたようだった。

『上の空。何をやっても手につかない感じかな。』本音が溢れていた。

『そっか。俺は失恋した事が無いから分からないけど、ベタに新しい恋でもしてみたら?』

簡単に言ってくれるなぁと思いながら、いつかは先に進まなければいけないのも事実。それが遅いか、早いか。やるか、やらないかの違いがあるだけで。


一学期も期末の時期になっていた。私は毎日のように塾でテスト勉強をしていた。塾には同じクラスの仲の良かった女子がいた。彼女は一番仲の良い女子という感じだった。

塾の自習室で勉強していた時、偶然彼女と二人になった日のこと。

『今回の期末ヤバいよね、範囲広すぎ。』


『ヤバいね、もう夏休み補講の準備してるよ。』


『補講の準備より、テスト勉強しようよ!』


『そんな名案があったか、お前天才だな。』

こんなくだらない事で盛り上がれる、私としては心地よい間柄だった。

『期末終わったら、皆で打ち上げしようよ?』


『いいね、男には声かけておくよ。女子は任せるね。』


『わかった、詳しくはまたメールするね』


『了解、そろそろ授業だから行くね。』


『またね』

私は授業のある教室へ向かうために、自習室を後にした。


期末テストは授業を聞いていないツケが回ってきて散々だった。なんとか赤点を回避出来たのは不幸中の幸いといったところか。

例の打ち上げはカラオケに行くことになっていた。各自お菓子や飲み物を持ち込んで大いに盛り上がったはずだ、記憶にないが。と言うのも、誰が持ってきたのか、飲むと気分の良くなる麦からできた苦い炭酸のせいなのだが。死屍累々、さながら地獄絵図の様相だったと。後日酒豪の親友から聞かされた。


その日の夜、女子側の幹事役の彼女からお疲れ様メールがきた。そのまま何度かメールのやり取りをしているうちに恋愛の話になった。

「〇〇君は今好きな人は居ないの?私で良かったら協力するからね!」と。

その時、私の頭には何時だったか親友と話した「新しい恋」という言葉がよぎっていた。当時の私の人間関係を考えてみれば、その一歩を踏み出すのは彼女以外は考えられなかったと思う。それでも、もっと慎重に相手に探りを入れる位の事はするべきだった。愚直な思い付きだった。

「いるよ?お前の事が好きだよ。」


「またまたー、そういうのはいいから。」


「本気だよ、付き合って欲しい。」


「ごめん、友達としてしか見れない。」


「そっか、ごめん。これからも友達としてよろしくね。変な事言ってごめん。」

フラれた。でも不思議とショックはあまり受けなかった。前に進めた事の方が私には意味があったのだと思う。


数日後、学校へ行くと廊下でクラスメイトが此方を見ながらニヤニヤしていた。私は違和感を覚えながら、教室に入ろうとした時、

『好きだー!』と。クラスメイトが叫んだ。

私は困惑しながら、クラスメイトに『誰が?』と、訊ねた。

『〇〇の事好きなんでしょ?』と、ニヤニヤと。それはそれは楽しそうに、子供が新しい玩具で遊ぶように。

何故その事を知っているのか、まさか彼女が言い触らして回っているのか、皆が知っているのか、頭がグルグルと負の連鎖を始める。次第に心に闇が差す。「ナニガドウナッテイル」

彼女の元へ駆け寄って、どういうことかと詰め寄った。彼女は仲の良い友達に話しただけだと答えた。私はその話を親友だけに話していた。親友は決して他人に言う事は無い、断言できた。そうこうしている間に一限の予鈴が鳴った。

一限の休み時間、私は念のため親友の元へ向かった。私の予想通り親友は誰にも話してないと答えた。次の休み時間に彼女の友達の元へ向かった、親友も付いてきてくれた。噂はもう広まっていて、彼女の友達は私が来るなり謝ってきた。彼女が言うには、話したのは一人だけだと。その一人が問題ありだった、非常に。

噂の発端、それは他のクラスの男子だった。彼は「目立ちたがり屋のお調子者」という感じで、彼の名前が上がった時に得心がいった程、口は軽いと予想できる人間だった。更に不都合な事に私をフッた彼女に思いを寄せていた。


昼休みに私は噂の発端の彼に話をしに行くことにした。正直な事を言うと、どんな話になっても一発殴りに行くつもりだった。親友も心配だからといって付いてきてくれた。

彼は私が来た意味は分かっていた。顔を見るや否や、次々と言い訳が出てきた。よくもまぁ、こんなにも言い訳が思い付くものだと感心してしまう程に。いよいよ我慢の限界、怒りもピークに達していた。覚悟を決めて彼に近寄ろうとした時、私の横に立っていた親友が彼を殴った。親友は人当たりも良く、おおらかで人望も厚いタイプの人間だ。

クラスがシーンと静まり返った、多分誰よりも驚いたのは私だろう。親友をよく知る私は本当に目の前の光景が有り得ない光景だとよくわかるから。

『ふざけんなよお前。こんな奴お前が殴る価値も無いよ。行こうぜ。』そう言い残して親友は教室から出ていった。

親友の後を追うと、笑いながら

『いってぇ、殴るのも結構痛いんだな。』と。


『俺の仕事盗るなよ。』


『やり過ぎるでしょお前さんは。』


『否定できないね。』


『あんなの殴って停学とかなったら最悪だよ?』


『お前は大丈夫なのかよ。』


『その時はその時でしょ。』


『自分勝手な奴。まぁ、ありがとうな。』


『とりあえず腹へったから何か奢ってくれ。』


『学食行くか?高いの上から頼んで良いから。』


『全部同じ値段じゃん。』


『そうだっけ?じゃサボってモスでも行くか?』


『いいね、そうしよう。』



親友は後日担任に散々怒られたが停学は免れた。私はと言うと、学校に居辛い雰囲気だった事と、夏休みに入る時期だった事もあり次第にフェードアウトするように学校へ行かなくなっていた。


夏休みの間も塾へは行っていた。時々フラれた彼女とも顔を合わせたが会話はしなかった。

二学期になっても私は学校へ行っていなかった。朝学校へ行く時間に家を出て、図書館で時間を潰して、塾へ行く毎日だった。

何かをしていないと気が滅入る、その何かのベクトルが偶々勉強だったのかもしれない。塾の帰りは決まって親友と過ごしていた。


そんな非日常にすっかり慣れてしまったとある日の事、私はいつもの様に塾の自習室に向かった。自習室には先客がいた。同じ高校の女子だ。彼女とは一年の時から同じクラスで、仲の良い方だった。

『早いね、ちゃんと勉強してて真面目だね。』


『〇〇君の方が真面目でしょ、毎日来てるんでしょ?』


『部活辞めたから暇なんだよ。』


『そうなんだ。そう言えば昨日のホームルームの話覚えてる?』


『いや俺学校行ってないから。』


『そう言えば最近見てない!』


『今更だね。夏休み位から行ってないよ。ていうか、ホームルームの話って?』


『あぁ、うーん…』


『ん?どうした?』


『イジメって言うか、不幸の手紙の話なんだけど…』


『不幸の手紙?あはは、小学生じゃないんだし。お前が出したんじゃ無いの?』


『私じゃ無いよ!知らないならいいや、気にしないで。』


その日の塾帰り、親友の家に寄っていた。私は何となく手紙の話を思い出して、親友に聞いてみた。

『今日さ〇〇と話してたんだけど、不幸の手紙流行ってんの今?』


『あぁ、ホームルームで言ってたね。それ貰ったの〇〇さんだよ。』


『えっ?本当に?』


『本当だよ。』


『最悪だわ、俺出したのお前じゃないかって言ったわ。』


『あら、結構気にしてるみたいだよ。だからホームルームで話する位の大事になったんだよ。』


『どうしよう…最悪だな俺。』


『取り敢えず、電話して謝ったら?』


『あの子携帯持ってない。家電は知らな…あ、一年の時のクラス名簿見れば分かるかも。』


『どうする?』


『家に取りに行ってくるよ。』


急いで家に帰って、本棚を漁りお目当ての名簿を見つけて、親友の家へ戻った。時間が時間だったので翌日にするか悩んだが、思い立ったが吉日である、番号を打って発信ボタンを押した。お父さんが出たらどうしよう、なんて言おうかなんて考えていると、電話に出た、お父さんが。

クラスメイトでクラスの事で伝達があると伝えると、お父さんはすんなりと娘に代わってくれた。

私はとりあえず謝った。知らなかったとはいえ軽率だったと、気を悪くさせたと。 彼女は寧ろ気を使わせてしまって申し訳無いと言っていた。良ければ改めて話を聞いてもらえないかと言われたので、もちろん了承した。翌日に高校の近くの公園で彼女と待ち合わせをした。


翌日、公園に向かうと彼女はベンチに座っていた。私は彼女の隣に座って、もう一度謝った。何となく電話越しでは無く、直接顔を見て謝っておきたかった。彼女はそんなに何度も謝らなくてもと少し呆れた様子だったのを覚えている。

彼女はぽつりぽつりと私に事の経緯を話始めた。半年前位に初めの手紙が来た事、自宅にも送られて来るようになった事、自分の大切な友達が犯人だろう事を。きっかけは実にくだらない、一言で言うなら「恋愛の拗れ」だ。彼女の友達の片想いの先輩が、彼女の事を好きで、それが気に入らないからと逆恨みだ。よくある話だった。

結局彼女は仲の良かった友達グループから距離を取り、クラスで浮いてしまっていた。犯人はさぞや満足したことだろう、お望み通り彼女は大切な居場所を失ってしまったのだから。


私は何か力になってあげたかった。しかし、彼女はそれを望みはしなかった、もう終わったことだからと。

終わったこと。何も終わってない。現在進行形で目の前の彼女は辛い思いをしているではないか。私は何も出来ない、何も与えられない、無力な自分に嫌気がさした。

私は一つだけ彼女の為に、いや今思えば自己満足の為だろう。彼女と同じクラスにいた幼馴染の女子に彼女の事を気にかけてやって欲しいと頼んだ。お節介も甚だしい、とんだ思い上がりの若気の至りだ。幸い幼馴染が上手くやってくれたのがせめてもの事だった。


紅葉が色めき季節はすっかり秋になっていた。そんな秋のある夜の事。私が帰宅すると、父と母が居間にいた。父に座るように言われ着席。

『お前、学校は?』

あぁ、バレたのか。


『行ってないよ。夏くらいから。』


『どうするつもりなんだ?辞めるのか?』


『辞めても良いよ。』


『辞めてどうするんだ?高校一つ満足に卒業出来ないような奴が、勤まる仕事があると思っているのか?』


『無いかもね。』


殴られた。三発も。腹が立ったので殴り返して家を飛び出した。人生初の家出である。行く宛はもちろん親友の家。

親友は会うなり驚いていた。人の顔を見るなり驚くとは失礼な事だった。それもそのはずだ顔が腫れていたようだ。簡単に経緯を説明した。

私達は夜のお散歩に繰り出した。歩きながら私はその時抱えてた不平不満を漏らしていた。漏らし終わった頃にはすっかりネガティブモードだった。

不意にふらふらと車道を歩き始め、前方から車が来た時。私は何故か避ける気になれなかった。疲れていたのだろう、思い描いた理想的な人生とあまりに違う現実に。車はどんどん近付いて来る、後ほんの数メートルの所で私は歩道に引き寄せられた。親友が私の手を掴んでいた。


『ふざけんなよ!あんなので死んでも葬式行かねぇからなっ!』


あの時のあの言葉、どんな言葉よりも響いたよ。少し痛い位にしっかりと掴んでくれた手を忘れないよ。


『もうキツいわ。どうしたらいいんだよ。』


『とりあえず学校来いよ。』

いつもの笑顔でそう言った。


高校へ続く坂道を歩く足取りは重かった。久しぶりの教室、意を決して一歩進む。

私の想いとは裏腹に反応は普通だった。久しぶりー、元気だった?位の反応だった。

その日は放課後に担任と面談をする事になった。まぁ当然だろう、不登校の問題児が登校してきたのだ、次はいつ現れるかもわからないのだから。

担任は端的に私の置かれている状況を説明してくれた。出席日数が足りない為、進級は難しいとの話だった。留年は仕方無い、自分で蒔いた種だ。そう思ってたところで担任から思わぬ提案があった。期末で全科目平均点取れれば、他の先生方に掛け合って冬休みに補講をしてもらえる様に計らってやると。足りない分は三学期も継続で続けてもらえるようにと。

正直簡単では無かった。そもそも授業を受けてないので大半は自分で勉強しなければいけなかった。それでも留年しなくて済む可能性があったのは僥倖だった。


暗記物はとりあえず3日あれば余裕で平均点はクリア出来る自信があった。数学は得意、国語は平均点を割ることは無い、問題は英語だった。元々不得意で塾で英語も選択していた割には毎回平均点位だった。

私は親友に頼ることにした。親友は学年でもトップクラスの秀才。教え方も解りやすかったし、何より上手く授業をまとめたノートが役に立った。


結果は平均点割れが一教科だけあった。しかし担任はやる気を買ってくれて、補講を受けれる様に先生方に頭を下げてくれた。

なんとか出席日数もクリアして、進級出来る事になった。


高校生活も残り一年と少しになっていた。



次回は高校生編のラストの予定です。

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