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第四話 境界の崩壊 Ⅰ

本当は今回直ぐに投稿する予定だったんですよね。

エディターのフリーズでデータが飛んで時間掛りました……。

 百にもなるであろう、魔物の大群。多種多様な、魔物達。

 それらが、私達を囲む。


「ははっ……まさか、魔物に包囲される時が来るとは思いませんでした」


 九条が乾いた苦笑いを漏らす。

 そうだ、同種ならまだしも、これだけのバラバラの魔物が手を結ぶなんて、通常ならありえない。

 本当に……この街は。


「笑い事じゃないぞ。お前、いつも使ってる式神はどうした、囮にして一点突破するしかない」


「拠点で姫さんの護衛をさせてる。呼び寄せるか…………何?」


 魔物に囲まれても焦っていなかった九条が、急に焦りはじめた。

 拠点の姫、というのは里奈の事だろう。

 それに護衛の式神というと……あの、戦った時に私を押さえつけた奴だろうか。

 確かにあれほどの式神を使い捨てれば、この包囲網を突破できなくはない気がする。


「反応がない……まさか、拠点にも魔物が?」


「これ以上にまだ魔物が手を組んでいるというのか」


 師匠の顔が、更に歪む。

 苛立ちや恐怖というよりも、悔しさだろうか。


「どういうこと。里奈は?」


「連絡が取れん」


「そんな……」


 もし、九条の拠点という所にこれと同じ数の魔物が向かってるとしたら……


「じゃあ、里奈は……」


「スメラギの奴が間に合った事を祈るしか無いな」


 そうか、さっき皇……さんが転移したのか。

 あれだけの力を持った人――人?なら、魔物なんて敵じゃない。


「後ろが薄い、西から逃げるぞ。出来ればそのまま皇と合流する」


 九条が唯一魔物の壁が薄い西から逃げる事を提案する。

 どう考えても罠としか思えないが……それ以外に道はない。

 もたもたしていると、大量の魔物から飽和攻撃されかねないし、確かに皇さんと合流してしまえばどうとでもなりそうだという気はするのだ。




 後ろをで弧を描くように薄く囲んでいた小型の魔物を蹴散らし、真っ直ぐ突破する。

 あまり強い個体も居ない。わざと薄くしているとしか思えない布陣だ。

 走って逃げる私達を、私達が横道に入らないようにするためか、横もしっかりと固めつつ、付かず離れずで追ってくる。

 足の早い魔物だって沢山居るはずなのに、散発的に雑魚が襲ってくるだけだ。


 この中で一番足の遅い蓮を片手で引っ張っている私はどうしても剣が振りにくくなるが、そこは師匠がカバーしてくれている。

 必死に付いてくる蓮が転ばないように横目で見つつ、私も脳をフル回転させて、屋上から見たこの街の地形を思い出していた。

 あの場でしっかりと囲まず、後ろを手薄にしたのは、単に後ろを包囲するだけの魔物が集まるのが間に合わなかったから……ならば、問題ない。

 しかし、この前に待ちぶせや包囲しやすい場所が有るのなら、このまま逃げればこ一か八かこで戦うより危険かもしれない。

 太陽の位置から北に向かっている事、その方向が蓮の家であること、その途中に蓮の父親が経営し、もしかしたら今両親が居るだろう喫茶店が有ることは分かっていた。

 しかし、この辺りの地形は精々遠くのビルからうっすらと見た程度で、まだ全然分かっていない。


「この先、何が、あるっけ?」


「この……先っ――?」


 人外の速度で走らされて余裕の無さそうな蓮が、それでも少ない私の言葉に頭を働かせて考える。

 躓きそうになりながらも周りを見渡し、


「高速がっ!」


 そう言った。

 高速は目立つので覚えている。

 川にそって一本。それと、駅の近くにある巨大な立体交差ジャンクションで交差するように一本が有った筈だ。

 こんな方向には伸びていなかった筈だけど……。


「地下っ!」


「成る程……」


 確かに、地下ならばビルの屋上から見ただけでは見逃しているかもしれない。

 高速が三本も交じり、しかもその内一つは地下を走ってるというこの街の混沌カオス具合に驚く。

 けど、高速道路が関係するとは思えなかった。

 確かに地下の高速で前後を挟まれれば逃げ場がないけど、私達が高速に入らなければいいだけの話だからだ。


 しかし、遠くに見えたそれを見て、私は考えを改めた。

 魔物がそこを選んだ意味がよく分かる。


 私達が走って逃げているのは太い道だ。両サイドにビルが立ち並んでいて、なだらかな丘のようにほんの少しずつ登るようになっている。

 しかし、谷にダムが有るように。もしくは、堤防のように。丘の頂上として少しだけ山になった部分が、道を横に連峰の如く塞いでいた。

 それは、山というのもおこがましい、精々標高二十メートル程度のものだった。通常なら何の問題なく道が山を越えているだろう。

 しかし――


「トンネルに、なってる、立体交差っ」


 しかし、ここは開発が進む大都市。しかも、その場所にちょうど高速道路が通っていた。

 なんと、小さな山一つに大きな穴をあけ、高速と一般道とを立体交差させていたのだ。


 この街中を走る地下高速は、地下と言っても構造的には少し掘って溝のようにした場所を走っているだけで、天井部は開いている。

 山の下を潜らせる訳にはいかなかったのか、何を思ったのか、この付近だけ高速道路は地上に露出し、山の上を走っている。

 当然、一般道が高速を横切るわけもなく。小山の真ん中に穴を開けて、トンネルにした部分を通っていた。

 左右の斜路スロープからならば、山の上を高速道路と沿うように走る一般道へも行けるが……両サイドを走る魔物はそこへ行かしてくれそうもない。

 当然、あのトンネルの先には魔物が待ち構えていて、後ろの魔物と私達を挟撃するだろう。


 先に見えただけで、トンネルまでまだ二キロ弱の距離は有った。

 どうする……と、師匠と顔を合せたその時。


「ぐっ……がぁ!」


 前を走っていた九条が急に体を強張らせ、バランスを崩して地面を転がった。

 唐突な出来事に反応できない私達の前で、九条の張った上級の結界が音をたてて崩れていく。

 内部で起こったどんな破壊も、その消滅とともに修復するその結界。

 それが晴れて行くとともに、結界外の世界の悲惨な状態が顕になった。

 崩壊したビルや、穴だらけの道路。大破し、炎上する車。


「なんだ……これはっ」


 師匠が九条を気にかける事すら忘れて呻く。私も、蓮も言葉も出ない。

 それどころか、止まった私達に追いつき始めていた魔物たちも、突然の惨状に足を止めた。


 突然、下半分を失った高層ビルが私達の進行方向に倒れる。

 いや、それはもう倒れると言うより、吹き飛んだと言っても可笑しくなかった。

 まるで、積み木で作った塔を蹴り飛ばしたかのような崩壊具合だった。

 崩壊した下側が道路を挟んで向かい側のビルの一階部分に雪崩れ込んでいく。

 そこには逃げようとしたのか、沢山の人が押し寄せていた。その人達がどうなったかなど、考えるまでもない。

 もし九条が倒れずあのまま走っていたら、私達も巻き込まれていただろう。

 いや、結界が壊れてなければ巻き込まれる事はないけど……。


 空中を舞った瓦礫が、広がるように落ちてくる。

 私達に直撃するような物は無かったが、その断片は周りのビルや道路に放置された車等、様々な物を破壊した。

 そして、その瓦礫に混じって降り注ぐ赤い物体。


「ぉうえぇっ――」


 ちょうど私達の目の前で、地面にべチャリと広がったそれを見て。

 蓮が吐いた。


 それを見て、ようやく思考が戻ってくる。

 ただ認識するだけではなく、何が起こっているか、理解した。


 逃げ惑う人間とそれを追う炎、悲鳴と遠く響くサイレンの音――

 怒鳴り声とともに、パンッと爆竹がはじけたような音が数回した後、ビルが崩壊する音に負けない程の巨大な炸裂音がする。


 結界は今、解けているままだ。

 つまりこれは表の世界で、これは……


「これは……あってはいけない事だ」


 未だにどこか呆然としているような状態でつぶやいた師匠と私は、単純ではあるが、全く同意見だった。

大都市に起こった隠し切れない大災害。

超局地的な地震とか、竜巻とか、ガス爆発とか色々言い訳出来そうな気もしなくはない。

次回は未定。時間的には余裕ありそうだけど……。

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