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閑 話 私の存在する意義 弐 【皇視点】

「閑話は一気に終わらせよう」としたらちょっと遅れたけど、続きです。

今日の10時に次を投稿して、閑話は一応終わります。

 転移するための魔力が、私の体を優しく包む。

 転移魔法を扱うその一時だけ……私は、懐かしいその感覚を鮮明に思い出すことができました。


 ――綺麗な、魔力の、暖かな光。


 それが、昔の記憶を、意識せずに思い浮かばせます。

 重力や、空間といった概念すら存在しないその場所で、ただ時が流れていくのを感じながら――何も知らず、現状に対して疑問を抱くだけの知性も無く、ただその光の中で存在し続けるだけの日々。

 暖かで、綺麗で、穢れのない……私には居ないけれど、きっと母親のお腹の中のような、そんな世界。

 転移の魔力に飲まれている間は、ちょっとだけ、その感覚に似ている。


 私がそんな世界から出たのは、私が生まれてから千年の後でした。


 初めて体験する、見るという感覚。

 黒と赤の線が部屋中を這いまわって、よく分からない機器に繋がっていて――


「い、いや……」


 私は、今までにない情報量に、ただ恐怖していました。

 言葉や学問、常識……教えこむかの様に、淡々と私へと流れ込んできていたそういった空虚な情報の塊とは違う、本物の重み。

 色とりどりの光、空気の流れ、初めて見る人間という存在、その全てが……。

 いいえ、違う……そうじゃありません。

 恐怖していたのは、きっと――私が、私もこの世界の存在の一つであった事に……


 その中でも唯一つ、怖くない存在がありました。


「なんか怯えてるけど?」

「ふーん……じゃあ、妹みたいなものだね」

「反論は聞かない、邪魔するっていうなら……」

「じつは姉か妹が欲しかったんだよねー。ねっ、いいでしょ? 妹になってよ――」


「貴方は……誰?」


 そして、これが、私と里奈様の出会い。

 忘れることのできない、去年の12月24日……肌寒い冬の事でした。





 今日も、沢山のそれを、纏めて薙ぎ払っていく……。

 大きい物も、小さいものも関係なく……。


「凄いね!」「流石だね!」「ありがとうね!」


 その言葉の為だけに。

 ばけもの達(わたしとおなじもの)を、殺していく。




「あっ笑った顔、りな初めて見たかも。すっごい可愛いよっ、もっと笑ったほうが――」


 暖かな春の日、初めて見た満開に咲き誇る桜の木の下。

 貴方がそう言うのなら、貴方の前では頑張って笑ってみせよう。


 この怖い世界で唯一つの光に、見捨てられないように。

 私が存在する意味を作る為に。




「ごめんねっ……ごめんなさいっ」


 冷たく暗く何もない。コンクリートの灰色で染まった、私の部屋。

 涙を流す彼女に、何も言うことが出来ない。

 私は、不幸な"人間"なのでしょうか?

 私の今までの人生は……同情されるものだった、のでしょうか?

 いえ、本当は分かっています。

 この今だって、私は――


 でも、私のために泣いてくださる人が居るから……


「私は、幸せですよ」


 そうでなければ、いけない。




「少しずつ、一緒にやっていこうね」


 物が置かれ、ピンクに染まった私の部屋で、彼女が満足そうに微笑む。

 彼女が幸せだというのなら、まぁ、それもいいでしょう……。




「どうして分かってくれないの!」


 知っては居ても、理解できない、人間の、感情という現象。

 同じ種族というだけで、敵対する相手すら殺せない。

 既に同種族(ばけもの)を殺し、殺して、殺した私には――。

 彼女がそれを望むなら、それを演じてみせます。

 全ては……そう、捨てられないために。




 人が死んだら悲しむもの、私はそう理解しました。

 だから、その通りに演じてみせました。

 本当は悲しくなんてなかった……その事だけは、悲しかった。


「こいつは兵器だ、余計なことは教えなくていい」

「お前は分かっているのか。お前のその一人よがりな同情は、後々に彼女を辛くするだけだぞ」

「見てみろ、もう彼女は何の動揺もしていない。お前のしてきたことは――全て無駄だ」


 急に出てきた偉そうな、私のよく知らない男が言う。

 頭を下げる彼女を見て……胸が締め付けられるように痛かった。

 ――多分これは、捨てられるのが怖いから。

 そうして私は、相手によって演じ分けなければいけないことを知りました。

 私には、死を悼む事すら赦されない。




 そう、彼女に出会ったその時から、私の全ては演技でできています。

 元々何も持たない私に出来たのは、後から覚えた知識でひたすら人間の真似をすることだけなのだから。

 里奈様を心配してみせたのも、後で不利になるような行動をするのも、彼女がそれを嬉しそうに、喜ぶから。

 里奈様が、望むことを演じていれば、それで良い。

 この敵だらけの恐ろしい世界で、一人ぼっちにならないように。


里奈と皇の話で一つの物語になるのですが、当然全部を全部書いていたら話が進まないのでダイジェストに。

こんなので、二人の何となくの流れ分かるかな……。長くなるけど、閑話だし補足しとこうかな。

ついでにまとめるための自分用のメモでもありますのでお目汚し。回避しても良いですね。


皇は最終兵器、切り札、奥の手として、千年以上前から用意というか、開発が進んでいたモノ。

正体は不明だけど……まあ、重力や、空間といった(物理的な)概念が存在しない、魔力の溢れる場所と言ったらほぼあの場所になる訳で、そこから産まれた人間は――……。

三家はどこも似たような、強い退魔師の代わりになる人型の兵器を作ろうとしている。その中でいち早く実用化したのが皇……それでも千年。

何やら思惑があって、神器というチートを使って未完成な所を無理やり完成させたようだけど、その辺りのごちゃごちゃ、設定は色々あるけどもこのお話には多分出てこないかな。余程長編にならない限り、三家のごちゃごちゃは事件の原因や背景ではあっても直接は弥珠朱は関係しない筈。


まあ、その過程で里奈にバレて、色々駆け引きもあって里奈に貸し与えられている状態。その辺りが里奈に九条半十郎がひっついてる原因でもあるけど、流石にこれは本編で説明が必要か。

里奈自身は妹のようなつもりで色々世話をしているのだけど、いまいち二人は噛み合ってない。特に皇自身が生まれもあってかひねくれたと言うか、自分を見失ってるのが痛い。


弥珠朱と里奈の百合友情√も考えてたけど、この状態で里奈が皇を捨てて弥珠朱へ行くのは無いなー(ぉぃ

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