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閑 話 私の存在する意義 壱 【皇視点】

閑話です。

今回壱は皇が先の戦闘中どんな事を思っていたのか、何故逃げたのかを書いただけなので流し読み程度で良いのではないでしょうか。

 私はその時、確かに救われたのだと思います。

 けれど……今でもまだ、私の魂はそこに囚われていて。

 綺麗な、魔力の、暖かな光……。

 本当は、有りもしない、幻想を抱きながら――



 閑 話 私の…… 【皇視点】




 遥か上空……ビルの屋上より更に上から、私は地面を見下ろしていました。

 そこまで上空で待機する必要が有るのかはわかりませんが、命令であれば仕方ありません。

 足元の不安定さに揺れる心を抑えて、薄く、意識を伸ばします。


 突然始まった戦闘行為。

 その時にはもう、私の心のスイッチは入っていました。


 宣戦布告も無く行われたその攻撃に、私は特に焦りませんでした。

 一撃目は防ぐと言ったのは彼自身なのですから、怪我をしても私の責任ではありません。


 飛び降りた事で感じる、強力な加速(G)と、相反する筈の浮遊感。

 それに一切動じる事無く、唯冷静に、狙いを定めて、殺してしまわないよう少しだけ調節した魔力を開放する。


 それが私の、対魔術師初の実戦……その開始の合図でした。



 当たらない攻撃。

 どうして、何故。


 目の前の彼女の攻撃があたっても痛くもありません、恐怖も感じません。

 私の莫大な魔力から生み出された、魔術の複合装甲は、どんな攻撃でも破ることは出来ません。

 ただ、その時私は初めて、負けるのではないかという、どこか焦るに似た気持ちを感じていました。


 里奈様に「殺さないで」と言われていたから、確かにいつもより力は抜いています。

 それでも、剣も、魔力もこれだけ当たらないと、私がいつもどれ程自分の力に頼り切っていたかが浮き彫りになっているようで。


 剣を失いながらも拳で、全く攻撃が効かない私に、その上さり気なく後ろの彼女を守るような位置取りで戦い続ける彼女に、私は気持ちで圧倒されていました。

 私のほうが、戦闘力は勝っている筈なのに。

 どうしたって、私には真似出来そうに無いから。


 いえ、あるいは里奈様の為になら、私にだって……。



 ふと意識が逸れていると、突如こちらに向かってくる存在を探知しました。

 あの小さな彼女です。

 向かってきている相手に、外す筈もありません。

 目の間で拳を振るうこの人には悪いですが、命令には従わなければ。


 殺しはしない、ギリギリの魔力を放ちました。

 音速に近く、ほぼ透明な私の攻撃は、彼女には見えなかったはずです、

 だというのに、彼女はその魔力の塊を、何かで防ぎました。

 流石に防ぎきれはしなかったものの、威力の減衰した上避けられては、大したダメージにはなりません。


 ――どうして。


 油断した訳じゃありません。

 威力以外は本気ですし、そもそも私の攻撃の殆どは、埋め込まれたプログラムによる自動的なものです。

 全てを防ぎ、目標を狙って圧倒的な力を放射する。

 ただそれだけで、勝てる筈なのに。


 混乱と、焦りが、私の中にエラーを蓄積させていく。

 予測と現実の齟齬が、許容範囲を超え、それが更に私の狙いを狂わせていく。

 それでもデータは揃った。気持ちとは裏腹に淡々と、思考システムが攻撃の精度を高めていく。

 もう、外す方が難しい程。


『お願い、弥珠朱の事、殺さないで――』


「たかが退魔師二人、さっさと殺せ!」


 そして――私は逃げ出しました。



 私に許された権利を最大限利用して。

 里奈様の願いすら、命令として利用して。


「……理解不能」


 理解らないのは、私の存在意義でした。


「飛鳥里奈様による殺すなという命令と、今の命令に矛盾があります――」


 ただ忠実な道具で有れば良い――いや、そうで無ければいけない私が、唯の道具では嫌だと、必要とされることを願ってしまった。


「九条半十郎の命令権の剥奪を確認、任務終了」


 命令されれば従うしか無い私が、しかし、そんな状況を許されている。

 綻びた鎖から抜けだそう。


「マスターの体調が心配ですので、私は先に"跳んで"帰りますね。ご武運を」


 里奈様の事が心配だ……なんて、そんな理由にもならない言い訳をしながら……。

 私は、里奈様に、逃げ出した事を叱られたら楽しそうだ――なんて、そんな事すら思っていました。

期末の課題ラッシュで気力が。成績が余程悪くなければそろそろ長期休暇……ただ、休みになると逆に書けなかったりしますよね、不思議と。

本当はもう少し皇の話は短く纏めて、練ってから投稿してしまいたいのですが、何時まで経っても投稿できなさそうなので一旦強行。この話、壱はやっぱり要らなかったかな。


皇は外から見たら、特に戦闘中はロボットのように淡々とした人ですが、内心が表に出ないだけで、色々考えてはいます。ただ本人はそれに気づいておらず、また里奈が絡めば別な様子。

次――もしくは次の次から少し物語が進み、閑話ですが本編に先んじて中ボスが登場します。

関係の無い事ですが、自分が敬語苦手な人なので一旦書いてから読みなおしてみたらおかしな所が量産されてました。まだ大量に在庫残ってそう……

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