表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/34

第一話 元弟子 Ⅱ

 ちょっと着替えてくると言って師匠が裏へ下がってから10分、既に食事を食べ終わった私達の間には居心地の悪い静寂が横たわっていた。

 特に話すことが無い。

 よく考えて見れば私も蓮もお互いの事は殆ど何も知らないのだから、話題の生まれようもなかった。

 魔物やなんかの話なら別だが。


『(ならば、お前が彼の事を色々聞けばいいのではないか? 気にはなっているんだろう?)』


 ビクッと体が跳ねた私を、蓮が目を丸くして見る。

 うん、大人しいから悪魔の事すっかり忘れてた。

 急に話しかけてくれるなと言いたい。


『(何……奴の事は少し苦手でな……)』


 奴と言うのは師匠の事だろう。

 私が弱いせいも有るが、全く自分の力で歯が立たない師匠の事を悪魔は苦手なようだった。


『(何も待たなくとも、帰ってしまえばいいのではないか)』


(どんだけ苦手なのよ……。そういう訳にはいかないわ、態々着替えてくるって言ってたんだから……ほら、戻ってきた)


「待たせたな、少し……歩きながら話そう」


 そう言いながら伝票差しから紙を引き抜いた師匠は、そのままレジへと歩いて行く。


「ちょ、ちょっと待って下さい。師匠に払わせる訳には……」


「そうです。僕が払いますよ」


 何故か蓮も払うと言い出したが、蓮はともかく、少なくとも師匠にお金を出してもらうのは心苦しいどころではない。

 しかし、すっぱり私達の声を無視した師匠はレジの精算済みの伝票の束に私達の伝票を乗せると、そのまま出て行く。


「えーと……」


 呆気にとられる私と蓮に、師匠はこう言った。


「何、一円の給料ももらわず働いてやってるんだ、このくらいは役得さ。何か問題でも?」


 あ、はい……いえ、無いです。


 ちなみに、ちゃんと後で店長さんに請求したそうです。

 ……ちゃんとって何だったっけ。



 しばらく街を歩く。

 その間、師匠はずっと無言だった。

 特に目的地があるわけでも無さそうだが、なにから話そうか迷っているといった感じだ。


「MASDのトップが変わったのは知っているか?」


 唐突に投げかけられた質問に反応するのは、少し時間がかかった。


「いえ……そもそも、どういう組織かもよく知らないです」


「そうか……まずはそこからか。ちょっと長くなりそうだが聞いてくれ」


 師匠が話し始めたのは、MASDの歴史からだった。


「先ず、MASDの前身は宗教団体だ。

 だからどうだというわけでもないが、基本的に古くから存在する神社等はMASD関係と思っていい。

 そして、三大神社と言われている九条神社と飛鳥ヒチョウ神社、御剣神社――これは私の実家でも有るが、それらが主にMASDの決定権を握っている」


「え……師匠はMASDの代表だったのですか?」


 驚愕だ。

 というか、それなのに私のことを見逃す事はおろか、しばらく助けてくれていたのは良いのか?


 そして、飛ぶ鳥と書いてヒチョウ……。

 こんな珍しい名前の人間は、そうそう居ない。

 それが、退魔師であるというなら尚更……。


「まさか、里奈も……」


「飛鳥 里奈か、知り合いか?」


「はい、友達…………でした」


「そう……か。まあ、私の口から話せることは何もないが、彼女には気をつけた方がいい。あまりいい噂は聞かないからな」


 師匠はそう言うが、私はそれを信じられなかった。

 少なくとも、里奈は敵を作るタイプではない。

 さっきあった感じ、そこまで昔と変わってもいないようだったし。


「その飛鳥だが、三年前……そう、お前の町が焼かれるまでMASDの代表、そのトップだったんだ。

 御剣も九条も代表では有るが、実質の決定権は飛鳥が持っていた。。

 しかし三年前、あの事件を知っていながらも防げなかったと批判が出て、飛鳥はトップの座を降ろされた。

 今MASDの決定権を握っているのは、九条……三家一番の過激派だ。

 しかし、飛鳥の穏便さがあの事件を招いたと言われてるからな。その過激さが逆にトップを射止めたと言っていいかもしれん」


「過激派……」


 あまり良い響きではないが、飛鳥家が穏便派で知っていながらもあの事件を止められなかったというのが本当だとしたら……それはそれで複雑な気持ちだ。

 もし、その時、九条家がトップだったら……。


「まあ、御剣が全くトップに興味がなかったというのも有るがな」


 はっはっはと笑う師匠には、生暖かい目を向けるしか無い。自分の家の事だろうに。

 MASDのトップである事がどれ程凄いか分からないが、退魔師全員の支持を集めるというのなら、その権力は凄まじい物に成るはずだ。


「まあ、それは置いておいて……経緯のせいもあるだろうが、九条は飛鳥とはまた別の方向で少し暴走気味だ。それをお前に話しておいた方がいいと思ってな。

 この街を……ああそうだ、聞いたことあるか?この街――上那市が……その、中立都市だって」


少なくとも3月中は休みだから大丈夫だと思ったら、全然そんな事なかった。ほんの少し休みがあったので更新。

私の休みはいったい何処へ……?

新年度の忙しさが予想がつかないので、次回更新は未定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ