始まってしまった世界の事実確認
つまらなくてごめんね。
このままの状態が続くならば、晴天の柱は崩壊するだろう。
人々は大きな勘違いをしている。晴天の柱は魔力を作ってなんかいない。息を吸うように悲しみを吸収し、息を吐くように魔力を放出する。晴天の柱は魔力の塊だ。悲しみを吸う為に仕方なく魔力を放出しているだけなのに。人々は、嫌なことができたら率先して悲しむようになった。そうすることによりリフレッシュすることができるから。
だが、事実に気づいている者たちがいた。魔力可視病。魔力が見えてしまう者たち。彼らは晴天の柱を見れば、それが魔力の塊であることにすぐに気づく。日に日に少しずつ消えてゆく魔力独特の淡い光。それを見て、晴天の柱の正体に気づくのである。彼らはグループを組み、王族に晴天の柱の正体を訴えた。しかし、その言葉は通じるわけがなく、グループは罰を与えられた。決定的に違うこと。それは、見えている世界だったのである。
「……汚い」
ふと、呟く。曖昧な記憶ではあるが、昔はこんな世界じゃなかった。人々は晴天の柱に感謝していたはずだ。だが、今のこの世界はどうだ? 今の日常を当たり前としているなんて。
もうひとつの柱……「生命の柱」。600年前に消えてしまった、晴天の柱の対となるもの。晴天の柱よりも悲しみを吸収し、晴天の柱に魔力を与えていた存在。晴天の柱は生命の柱と共に悲しみを吸収に、魔力を放出することができない生命の柱から魔力を受け取り、放出した。
世界が変わってしまったのは600年前ごろ。生命の柱が、消えたころ。それ以降に生まれたものは、生命の柱を見たことがない。書物にはしっかりと記録が残っているものの、その時代にはカメラが存在しなかった。穢れた時代の者たちは、見たことがないもののことを否定していった。
ある一族があった。晴天の柱と生命の柱の真実を知るものたちである。一部の学者たちによってその一族の姓が明らかになっていた。「オード」という、この世界では聞かない姓。この世界では姓が4文字以内はご法度となる。そのため、本当ならこのような姓は存在しないのだが、昔からあるためだろうか。それとも、知られていないだけだろうか。この姓がご法度とされ、罰を与えられることはなかった。
「キルー! 船が出航するよ!」
「……」
アルトボイスが響く。ボクはその声の元へと急いだ。
これは、1人の青年の物語。
あなたも物好きですね。




