第4曲:new world
「イクミ!」
わかってる。
うっさいなぁ。
「あ~。」
声は出る。
身体も動く。
「酸素アリ、重力アリ・・・多分、地球と同じ1G。」
「体感的には何ら変化はないよ。」
うぅむ・・・もう少し休みたい。
だが、危険な地域かも知んない。
さっさかと安全をある程度確保しないと。
「言葉、通じるといいな、トウマ。」
「アルムだ。」
「は?」
何言ってるかわからん。
言葉が通じなくなったか?
「トウマはあの家にいる時だけの名前だよ。」
「・・・そうか。」
仮の名前、仮の存在。
どっちがいいのかねぇ。
「アルムって呼べばいいんだな?」
「あぁ。」
「了解。さて、言葉が通じる、出来れば友好的な知的生命体と会えるといいんだが・・・。」
「イクミ、あれ何だと思う?」
アルムが指をさす場所。
「壁・・・かな?」
赤茶色の壁・・・レンガみたいな。
「少なくともレンガを焼成出来るレベルはあるってコトか?」
てくてくと歩み寄って触ってみても・・・うん、レンガだな。
「しかし・・・また高っけぇ~なぁ、コレ。」
壁の高さはゆうに20mはある。
「こういう展開は・・・。」
アルムがぽつりと呟く。
「何者かを外に出さないか、入れないようにする為に造るんだよな。」
「なぁる。で、現状。俺達は外にいるのか内にいるのか把握できてないと。」
ますます情報プリーズ。
しかも、意外と危険が危ない。
うぉっ、日本語能力弱ェ。
「マズいな、早く離れよう。イクミ、こういう場合は大抵見回りか見張り番が・・・。」
「そこで何をしている!!」
「・・・遅かったみたいだねぇ、アルムさんや。」
声をかけてくるだけ親切か。
不意打ちとかされないだけマシ?
ん?てか、言葉聞き取れるな。
通じるかは別として。
聞き取りと発音はまた別だ。
少なくとも今は戦いを回避したいなぁ。
「第一村人発見!とか暢気に言えないか。」
仕方なく俺は声のかけられた方に向かって、両手を上げて向き直る。
「うほっ、美女。」
金髪、緑眼、軽装服の美女がそこにいた。
そして、とんがった耳。
・・・・・・とんがった耳?
「え・・・エルフ?まぁ、美人だからイイッ。」
「イクミ・・・。」
呆れ果てた目で俺を見るアルム。
仕方ないだろう?
俺の場合、エルフなんて童話の世界の住人なんだから。
「緊張感ナイのは認めるぞ?」
「いや、美的センスが一緒で良かったなと。」
「うぉうっ、心の友よ!」
どうも緊張より興奮のが上らしい。
変なテンションだ。
ここにエルフがいるというコトは、つまり次元を無事に越えられたってコトで・・・。
「って、アルム、ここは!」
「オレのいた所はダークエルフしかいない。」
「・・・白いな。」 「あぁ。」
つまりハズレ、か。
「何をごちゃごちゃ言って・・・お、オマエ達人間か?!いや・・・それにしては髪が黒いな・・・。」
アルムと思わず目を合わせる。
この辺りじゃ、人間も黒髪も珍しいってコトか?
あちゃぁ、嫌でも目立つ展開?
・・・勘弁。
「ともかく!オマエ達!その壁から離れてこっちへ来い!」
「新手のナンパ・・・じゃねぇよなぁ・・・。」
気の強いのは嫌いじゃないけど・・・何処か可愛い気が欲しいよな。
俺の同級生みたいにさぁ・・・。
「アルムくん、美女のお誘いだが如何するね?」
アルムに逃亡、戦闘、その他一切の選択を委ねようじゃないか!
アルムが倒せる相手なら、てのもあるし。
「断るのかい?美女だよ?」
ダメだ、コリャ。
充分、アルムもハイテンションだったの忘れてた。
「へぇへぇ。あ~、荷物は持ってってもいいか?」
両手を上げたままの格好だ。
許可を一応とらんとな、生殺与奪の権利は向こうにある。
下手に出るのが堅い。
「早くしろ!」
・・・俺、キレずにやり過ごせる自信が・・・。
「最悪、すぐにこの世界を出ればいい。」
アルムが小声で囁く。
至極当然、その通りです、はい。
でもね・・・。
「悪ィ。アレ、連続でできんのよ。」
「・・・・・・。」
あぁっ、視線が痛いっ!
「はぁ・・・なら、ギリギリまで従って、この世界の情報を集めよう。」
絶対、今、ある種の諦め的な何かが浮かんだ!絶対!
体力的には・・・3日は欲しいかな。
仕方なく俺達は、この美女エルフ・・・後でちゃんと名前を聞くか・・・と一緒についておく事にした。
あんだけの壁があるってコトは戦いとかがあんのかなぁ・・・。