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皇子達に福音の鐘を鳴らせ!  作者: はつい
第Ⅱ楽章:皇子の瞳が映すモノ。
36/54

第34曲:足跡

「あの?」


「なんでしょう?」


 スフィールさんと一緒に宿を出て、徒歩で移動し始めるも、話題が無い。


「恥かしくないっスか?」


「いいえ。」


 会話がこう、終始単調なうえに、スフィールさんの無表情っぷりがなんとも。

しかも、俺、今スフィールさんと手を繋いで歩いてます・・・はい。


「あなたは目が悪いのだから、この方が安全です。」


「確かにその通りです。」


 つまり、手を引かれる形で誘導。

お陰で、前を歩く彼女の後ろ姿をじっくり観察できるワケだ。

ちなみに彼女は、後ろ髪が非常に長く腰近くまである。

それを一つに束ねているのが、服のレースと同じ素材、模様の髪留め。

彼女の歩みに合わせて左右に揺れている。


「私から一つ宜しいですか?」


「なんでしょう?」


 余りに無表情過ぎて、尋問されている気分です。


「あなたは、金銭に執着はないのですか?」


「は?」


 そんなに俺、がめつく見える?守銭奴?

でも、貧乏は誰でもイヤじゃん?


「宿の女将の取り分の話と、私の主を聞かない事と。」


「あぁ、元々、宿に来る客の取り分の内訳けはそう決めてあったっスからね。それに正直言って、スフィールさんの仕えてる人の名前とか身分に興味はないっス。」


「どうしてですか?」


 を?

会話が珍しく続いてるぞ。

彼女主導だからか?


「お客さんには変わりないっスから。それに、もし断ったら"スフィールさんが叱られる"ってのも困るっス。」


 夜中に人を呼びつけるっていう時点で、タカが知れている。


「・・・優しい・・・ですね。」


「どうっスかね。」


 今、少しだけスフォールさんの背に感情・表情があったような。


「人と会う、関わるのは嫌いじゃないっスから。ほら、例えばスフィールさんの声とか。」


「私の声?」


「透明感があって、とても綺麗っス。きっととても美人さんなんだろうなぁとか、旦那さんの愚痴を言う奥さんの声で、こんな表情してるのかぁとか、兵士さんはこんなかなとか、考えながらの仕事は楽しいっスよ?」


 ぶっちゃけ、スフィールさんは、とても肌が白くて綺麗な人だ。

エルフの肌の白さと遜色ないくらい。

・・・あぁ、無表情さを除けばね。


「・・・そうですか。ありがとうございます。でも・・・。」


「?」


「私は、決して綺麗なんかではないです。」


 いえいえ、見えてますから、充分美人さんです。

あなたが美人さんじゃなければ、俺のクラスメイトの女子の7割以上はブス認定されてしまいます、アーメン。

しかし、なんだろうな、元々無表情ってワケじゃないんだな。

それに言い方がなんか引っかかる。

・・・その辺、これから探れるかな?


「こちらです。少し道が細いので、左右の壁にぶつからないよう。」


「あ、はいはい。」


 そう言うと、スフィールさんと俺は、さっきまで歩いていた大通りから外れ、狭い路地に入る・・・んだが・・・。


「随分と歩くっスね。これだと街外れまで行けるくらいの距離は歩くような・・・。」


 外れは外れでも、大通りから見て斜め前方にね、その、デッカイ城があるんだが・・・どうしよう・・・。

ちょっとヤバめの汗が出てきそう。


「そうですね、見えないのですから、ここが何処かくらいは言わないといけないですね。我が主は、この街で領主をしていますデトビア様です。」


 どう考えてもヤバい展開ですね。

どうしたものかと考えても、どんどん城に近づいている。

今更断るのも失礼だしな。

権力者に目を付けられると、ロクな事がない。

流石に会って、治療士の事を直談判するなんて危ない橋を渡るつもりはない。

アルムとアンソニーがいないという戦闘力は皆無な状況だけれど、情報収集のチャンスとしては最高だ。

ハイリスク・ハイリターンの言葉の通り、ここは腹を括っていくしかないな。


「どうしました?」


 おっと。


「いえいえ、なにやら路面もデコボコして歩きづらくて・・・。」


 目が見えなくても、この暗闇の細道は歩きづらい。

普段は、人が通らないのだろうか?


「デトビア様の遣いです。ご苦労様。」


 城の横合い辺りに裏口(?)と兵士姿の二人。

スフィールさんの言葉に敬礼で応えている。

見張りは・・・二人か。

中はどうなんだろうな。


「どうぞ、お入り下さい。」


 大きな裏口の門の横に備え付けられた小さい木戸。

兵士の一人がその扉を開いて、俺達を促す。

扉は建物に直通しているらしく、中に入るとぼんやりと照らされた石畳。

中にも兵士が一人。


「ここも歩きにくそうっスね?先程と大分違う気が・・・もうお屋敷の中っスか?」


 ・・・いつかボロが出るな、コレ。


「えぇ。」


「その割りには、人の気配がないっスね。」


「こちらは使用人や商人等の通用門から入ったところです。正門はもう閉まっている時間なので。」


「なるほど。」


 歩いてすぐさまT字路。

そこを左へ曲がる・・・。


「ん?」


「まだ何か?」


「いえ。」


 なんだろう、この匂い・・・。

果物のような匂いと、カビ臭さ?

あと、何か鉄のような・・・。

石造りの城の普段使わない通路だからだろうか、なんとなく湿気まみれの陰気くさいカンジ。

あれ?

でも、使用人も商人もここを使うって言ってたよな?

きっと上階とか正門側と全然違うんだろうなぁ。

ほら、権力者って見栄っ張り多いじゃん?

て、偏見か。

同じレベルの権力者や、それ以上の権力者を招く事もあるだおるし、こんな匂いを城全体で許容できるとは思わないんだけど・・・。

スフィールさんは何の疑問も違和感も感じないみたいに、前へと進んで行く。

というコトは、この場所のあの匂いは、普段からあんなもんで、普通ってコトか・・・。

人間、自分の匂いと普段から感じている匂いには、ある程度鈍感になるもんだ。

ペット臭とかがいい例。


「ここでお待ち下さい。」


 T字路を左に曲がってすぐの階段を上がると、その匂いはしなくなった。

寧ろ、フローラルな匂い。

そのまま、階段を上がってすぐ近くの部屋に通される。

どうやら、ここに領主・・・デトビアさんだっけか、その人を連れて来るらしい。

呼びつけといて待てというのも、アレだよな、典型的な権力者?(偏見)

ま、ここは、だ。


「了解っス。」

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