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皇子達に福音の鐘を鳴らせ!  作者: はつい
第Ⅰ楽章:皇子は再び旅立つ。
1/54

序曲。

初投稿から1年、久しぶりの新作投稿、シリーズものです。

これからも、引き続き宜しくお願い致します。

 正直な話をしよう。

俺は今の自分の現状に不満はない。

これは本当だ。

基本的に可もなく、不可もなく。

良い事よりも、悪い事の方がちょっとだけ多い、至って普通。


「んなァ、サク?」


「何?」


 俺の目の前で何事もなく繰り広げられる、いつもの朝食の光景。


「いい加減、向かい合って朝メシ食うのヤメねぇ?」


 子供の頃はそう思わなかったんだが・・・。


「何それ?じゃあ、隣り合って食べるの?そっちのが気持ち悪くない?」


 さすが、我が"双子の弟"。

兄の言いたい事をよく解ってらっしゃる。


「だって同じ顔だぜ?」


 困った事に"一卵性"という単語までついてきやがるんだ。

いや、よく見れば違いが解る。

弟の堂上どのうえ 美咲みさきは、兄である俺、郁実いくみと違って、濃紺がかった黒髪をしていて、眼鏡をかけている。

対する俺は、黒髪に眼鏡なし。

瞳の色は双方とも黒で、俺の方がめつきが鋭い。

むしろ、これで見分けるのが簡単だ。

そして、悲しいコトに兄弟揃って、身長はギリギリ170cmに届かない。

まぁ、二人ともまだ高1だから伸びてくれるんじゃないかと楽観中。

そういう事にしておこうと自分に言い聞かせている。


「今更。生まれてからずっとだよ?」


 確かにその通りなんだが・・・おかしいな、昔は俺よりもずっと繊細なヤツだったんだが・・・。


「意外とざっくばらんだな?」


「違う。悩んだって、どうにもならない事だって結論が、とっくの昔に出ているだけ。」


「・・・誰に似たんだか・・・。」


「兄貴。」


 真顔で睨むな。

ただでさえ、俺達は切れ長の目をしてるんだから。

しかも、俺の顔で。


「外見だって似てるんだから、多少中身が似てもおかしくないでしょう?双子の性格は、環境で変化するのは、科学的に証明されているんだから。」


 あぁ、弟の方が兄より冷静で繊細で博識だと、扱いに困るな。


「なんだかな。」


「仕方ないよ、一応兄貴として尊敬しているからね。」


 これだ。

弟は何かと俺に気を遣う。

オマエは俺の嫁か!妻か!・・・あぁ、どっちも同じか、と突っ込みたくなるくらい。

この朝食だって、弟の手料理だ。


「だから真顔で言うなよ。」


 何度も言う、同じ顔なんだから。

弟が俺に気を遣うのは仕方ない。

それだけの事を俺は弟にしてしまったから。

俺はそれ程、人が出来てない。

だから今まで弟が胸を張って自慢出来るような兄になろうと努めてきたのは認める。

それがいつしか過去の出来事と結びついて、ちょっとした依存になりつつあった時期も。

今は程度も落ち着いてきたけれど、やはり何処か兄である俺に引け目を待ったところはどうにかしなければないと、常々思っている。

だから、俺はそれを決意した。


「兄貴、僕はもう出るよ?」


「あぁ、なぁ、サク?」


「ん?」


 別にこの場所にいるのは悪くない。

不満はないんだ。

弟と離れたいとか、嫌いというワケでもない。

ただ、このままだと弟の人生は広がらないんじゃないか?

・・・違うな、俺自身の人生が広がらないんだ。


「俺さ、ちょっくら旅に出るわ。」


「・・・そう。」


 返ってきた言葉は、それだけだった。

少し困ったような哀しみを含んだ表情。


「やっぱり俺達は双子なんだな。」


 予感。

そうなる予感はずっと前からあったんだろう。

互いにこのままじゃ良くないって。

ただ、互いにそれを言い出せずにいた。


「だね。」


 心に痛いトコロがあるっていうコレは、良心ってヤツなんだろうな。

どうやら、俺にも意外と繊細な人間感覚というモノは多少あるらしい。


「いい機会だろ?一度やってみたいと思ってたんだ。大丈夫、飽きたら帰ってくるさ。」


 他に安住の地ってヤツを見つけた場合は解らない。

もしかしたら、永住するかも知んないケド。


「学校は?」


「ま、なんとかなるだろ。」


 一学期の期末はまだだが、留年は覚悟だな。


「ふぅん・・・。」


 あっさりと頷いて、弟は笑った。

その笑顔はとても痛々しくて、また俺の心が痛む。

俺が思っている以上に、この良心というのは強いらしい。


「んじゃ、ま、後を頼むわ。」


「ん。」


 別れの言葉にしては、酷くあっさりとしていて、如何にも俺達らしいっちゃあらしい挨拶だった。

サク君の方が作者としては、書き易すかったりするんだけれどなぁ・・・。

ではでは、また次話で。

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