深紅のレディメイド 2
高校二年生の僕は、まだ生きている。死ねるなら眠るように死にたい。でも、まだやるべき事は山積みだ。なのに、気付くと僕の目の前には僕と同じ目をした大男が、死神のように立っていた。
「……寒い。」
寒いのは苦手だ。
あれ?、これ前も言った気がする。
まぁいいや。
僕は五階建て程の高さのの建物(何の建物か知らない、というより興味ない)の屋上の端に胡座をかいて座り、道中のコンビニで買った肉まんを齧る。
肉マン、ヒトツ、税込161円也。
屋上だから風通しもよく、冷えているからなのか、街を歩いていときよりも寒く感じる。
寒いのは、苦手なんだよね。
ほんとに。
冗談抜きで。
「……まだかな、時間的はそろそろだと思うんだけど…。」
で、僕がここで何をしているのかと言うと、ただひたすらに僕の真下にある狭く暗い路地に人が来るの待っている。
来ると言うか、逃げてくる。
その逃げてくる相手を待っている。
逃げてくる相手というのが誰かは、名前も素性も知らないけど、メールで依頼内容と一緒に顔写真も送られてきたから顔立ちはわかる。
顔立ちと依頼内容、あと、その人が何をしでかしたのか。
「……寒い。」
今回の依頼の一番大きな敵はこの寒さかもなーなんて考える。仕事を舐めてる訳じゃないけど、服装は舐めてたかもしれない。もう少し厚着すれば良かった、短時間だろうと思って油断した……。
ポケットにねじ込んだスマホを取り出し、画面をつけると現在13時32分。
男が来る時間の予測。
13時。
うーん。
32分の遅刻。遅刻とは言ってもあくまで予測の時間だったから、誤差が生まれてしまうのは仕方あるまい。
今回の、この32分は誤差の範疇ということにしよう。
まぁ、僕にとっては寒いから早く来てほしいんだけど。
寒いから。
「…………。」
あ、来た。
僕の真下の路地をグレーのスーツを着た30代程に見える中肉中背の、少し長い襟足を小さく後頭部で結んでいる男が、黒く大きなビジネスバッグを大事そうに脇に抱え、当たりを警戒するように見回しながら小走りに向かってくる。
多分、あのビジネスバッグには、今回の依頼の目標物が入ってる。
「……んんー。………よし。」
じゃあ、仕事を始めよう。
肉まんの袋を上着のポケットにねじ込みながら立ち上がり、思い切り仰向けに反るようにして、待機中に固まってしまった足や背中を伸ばす。
そしてそのまま、屋上の端から飛び降りた。
一瞬、内蔵や脳が浮くような感覚と、ほんの数秒の浮遊感の後に、僕の体は順力に従い、地面を目指す。
……このまま死んでしまおうか。
そう思える程、この感覚は嫌いじゃない。むしろ何度か経験するうちにこの浮遊感が、生きているはずの僕を、僕自身の体を空気のような、質量の感じにくい物体に変えてしまう感覚に包まれる。
死ぬとはこういう事なのかな……なんて考えてるうちに地面がかなり近くなっていた。僕の体が、このまま無抵抗に地面に叩きつけられ、潰れたトマトみたいにならないうちに、僕が暇を持て余していたビルの水道の配管や、窓枠や、外階段の手すりなんかに3回ほど掴まり、うっかり死んでしまわないように落下の勢いを殺して飛び降りた。
僕が男の道を塞ぐようにに着地すると、男は声をあげて驚いた。男からすると僕は急に目の前に降ってきた訳だから、そりゃ驚くよね。
かなりの勢いで飛び降りたからか、足裏、膝から腰、背中、うなじにかけて響くような鈍痛が、ほんの一瞬走る。勢いよく配管やら何やら掴んだせいで手袋も少しずれたから、立ち上がりながら元の位置に戻していると、依頼対象の男が僕に用心深く話しかけた。
「な、何か用か?、アイツらの連れか!?」
「うん、まあ、用がないっていったら嘘になるね、あ、でもすぐ済むけど、君が言う”アイツら”とかじゃないよ、もっと他。」
「なんだ・・・俺は急いでるんだ!、ガキはどいてろ!」
「いやいや、ガキって……。」
心外だなあ。
おっさんからすると17の僕はガキかもしれないけどさ。
「人を見かけで判断してはいけませんって、生まれて今まで聞いたことないかい?。」
「はぁ?何を言い出すんだ・・・?」
「僕は君が想像したようなもの……何を想像したかはわからないけどあまり良い印象を持たれてないっていうことはよくわかったよ。まぁ初対面の人間と2、3言交わしただけでその人に対して好感を持てだなんて、そんなけったいな話をする訳じゃないけどさ…………とにかく、そういうのじゃ、ない。」
じゃあなんだという目で僕を見つめている名前も知らない男。やはり不安感を隠しきれず、カバンを持つ手には汗が滲み、常に落ち着きがなく当たりを見回す。
僕はその男に、僕の、深紅の、死んだ目を向ける。
その時初めて、僕と男は目を合わせた。
男の目は不安と焦りを感じさせる色をしていた。そして男は僕の目を見ると、引きつった声にならない声をあげて怯えた。
そりゃそうだ。
学校でもよく言われるし、自分でも実際そう思うけど、ほんとに生きてる人の目はしていない。
死人の目、死体の目、死んだ人間特有の乾ききってどす黒く、見てるだけで気分を害すような目。
そんな目を向けられたら、誰だって怖いだろうね。
生きた人間に、死人の眼球が付いていて、その上それが自分を真っ直ぐ見つめてくるんだから。
言ってみれば目を開けたまま死んでしまった物が、ずっと自分を見ているようなもの。それを経験すればホラー映画なんて幼児向け番組と何ら変わらないだろうね。
まぁいいや。
「…僕は、ちゃんと、仕事中だよ。」
「し、仕事中・・・?」
「そう、仕事中。」
僕は目を隠すように、頭に斜めにかけていた狐面を顔に被せる。
目の所は周りを見やすいように穴が空いてるからあまり隠せてはないだろうけど、僕を知る人にとっては、宣戦布告とする行為。
「便利屋の仕事中だね。」
「便利屋、?」
「そ、便利屋。便利屋はなんでもする。」
自分の耳に、狐面のせいでくぐもった自分の声が聞こえる。
あぁ、気持ち悪い……。
僕は、今まで後ろに回していた両手をそっと広げる。
「・・っ・!」
男は僕の両手に握られている物を見て、悲鳴を上げた。
今、僕の両手には、それぞれナイフが握られている。
今どき護身用だと言っても通じるようなアイテムだけど、素人が持つには心ともない物。でも、それをいざ自分に向けられるとなるとある程度の恐怖心は持ってしまうものだろう。小振りとはいえ人の命を簡単に奪ってしまえる物なのだから。
右手には白と黒のツートーンカラーの、短く反りのない、厚みのある、無骨な和式ナイフ。
左手首には純白の、細くて薄く、刃が緩く曲線を描いたダガーのような両刃の洋式ナイフ。
「和洋折衷。」
僕はそう呟き、腕を下げると体重と重心を下に下げ、利き足に乗せると一気に地面を蹴り……。
「……なんてね。」
その一歩で、男との距離を詰める。
「便利屋はね、なんでもするんだよ。」
僕は右のナイフで男の心臓を、左のナイフで男の喉を、それぞれ突き刺し、右手のナイフを捻り、左手のナイフを滑らせる。
何か言おうとしていた男は、遺言を残す間も、悲鳴をあげる間も無く、ぐちゃりと崩れ落ちた。
その顔は悲痛に歪み、死体の首と心臓からは信じられないほどの赤黒い血が湧き続ける。
誰も来ない、誰も気にしない、忘れ去られたような、薄汚れた路地に血の海が広がる。広がり続ける。血の海は僕の靴にも辿り着いたが、僕は特に気にせず、ナイフの血を振り落とすとタクティカルベスト型のホルスターの背中側に下向きについてるホルスターにナイフをしまい込み、狐面を元に戻す。
「たとえば、殺害依頼とか。」
死体に言い聞かせるように吐き捨て、僕は男が持っていた鞄を開ける。
中には1つのノートパソコンとUSBが入っていた。
それを鞄から取り出すと、無造作に冷えきったアスファルトの上に投げ出し、そのまま足を上げて、体重を乗せて、勢いよく、踏みつける。
ぐりゃし、ぐりゃし、ぐしゃぐしゃ。
死体の血が着いてしまった僕の靴で踏み潰したせいか、何度か繰り返すと、パソコンだった物も徐々に徐々に赤黒くなっていく。
今回の依頼内容はコレがメイン。この男が産業スパイとして盗んだ競合会社の商品を発注した履歴、顧客情報、企業としての機密情報含まれているこのUSBとパソコンのメモリの物理的な破壊。
そして男の殺害。
「……競合相手に人殺しを差し向けるなんて、怖い世の中だね。」
僕はそのままスマホを取り出しクリーナーに掃除を要請する。
現在地の情報と、現場の状態、死体の状態とそれの情報を伝え、代金は依頼主が払うと言うと了承を得た。
社会貢献度◎。
社会の歯車◎。
狐面を元の定位置に戻しながらスマホを仕舞うと、大きく息を吸って、大きくため息をつく。
ひと仕事終えたという事実が、僕に疲労を教える。
「はぁ……疲れた。」
そう呟き、帰ろうとすると、後ろからバタバタと2人分程の足音が近づいてくる。
2人分の足音を聞く限りかなりの勢いで走ってるらしく、路地裏に足音が大きく響いている。
面倒事なら巻き込まれたくない……何も気づいてないことにして帰ろうかな、というか、帰りたい。寒い。
「…………。」
シレーっと帰ろ。
「そこのお前!、止まれ!」
ダメだった。
「……んー?。何ですか?。」
気だるく返事をし、声のした後ろに振り返ると、腰の銃のホルスターに手を掛けた警察官2人、僕に向かって走ってる来ている。若い警察官と白髪混じりのベテランのような警察官、ドラマで見るような組み合わせ。
僕の後ろにある死体に気が付くと、若い警察官がホルスターに掛ける手に力を込めたのが分かった。それに合わせて白髪混じりの警察官もその場に止まる。
僕との距離、大体24mかな。少し遠い。でもハンドガンなら余裕の距離だ。もしこの2人を殺さなくちゃいけなくなった場合、この距離だと不利なのは僕だ。
仕方ない……。
僕は「無害です。」と主張するように両手を上に上げる。
手袋を取らない事から危険信号だと思ったのか、若い警察官が銃を引き抜き、即座に撃てるよう構えるが、白髪混じりの警察官は何も言わず、僕を見ていた。
手袋は僕の必需品なんだから、勘弁してください。
「・・ぅ動くな!」
「動かないよ…。」
というか、動けないよ、遮蔽物も何も無い直線の路地で、ナイフじゃ届かない距離から銃を向けられてるんだから。
動ける訳無いでしょう。
「そのまま地面に・・ 「待て!」
突然、それまで沈黙していた白髪混じりの警察官が若い警察官の前に出て、庇うように、僕と若い警察官の間に自身の手を横に伸ばす、伸ばした手は若い警察官の構えた銃の前に差し出され、若い警察官は訳が分からないというような反応を見せたものの、上官に従い、銃を下ろす。
白髪混じりの警察官はもう既に、腰のホルスターから手を離していた。そして、僕の死んだ目をじっと見据え、絞り出すように声を出した。
「・・・お前、遂行者の家系か?」
白髪混じりの警察官の声は、低く、重々しく、路地裏に響く。2人の警察官から、静寂を通して緊張感が伝わる。
空気がピリピリとする。
よく見ると、白髪混じりの警察官も、汗をかき、前髪が顔に張り付いている。
「……もし、そうだとしたら?。」
「もし?、あんた、こんな分かりやすい状況と問題に対してまだ誤魔化しが効くとでも思っているのか?」
「そうだね、ごめん。あなたが思うように僕は遂行者の第四家「肆屍家」の人間だよ、変な返しをして申し訳ないね。」
「そうか、その人も……」
そこまで言うと重々しい雰囲気のまま、暗い目をした白髪混じりの警察官は帽子を目深に被り直す。
踵を返して、若い警察官に戻るぞと声をかける。
「え、いや、武田さん、しかし・・・!」
「いい、もう、いいんだ、奴らは・・」
若い警察官は納得がいってない様子で、僕と白髪混じりの警察官を交互に見る。
「奴は・・・奴らは、言ってしまえば今の日本の大きな権力の大半を占めている者共だ、政府公認の殺し屋と言っても過言では無い」
「そんな・・・しかし、こんな・・・!」
白髪混じりの警察官が、若い警察官の肩に手をそっと置き、言い聞かせるように続ける。
「奴らに危害を加えるということはその権力に対して反抗し、攻撃したのと同じだ、今の五体満足な体で生き永らえたいのなら、奴らと関わらないことを第一優先にしろ・・・!」
「・・っ・・・・」
上官の絞り出すような切実な訴えに、若い警察官も折れるしか無かったのか、力強く握っていた銃を微かに震わせ、そのままホルスターに戻した。
「それでいい・・・今は、それでいいんだ」
若い警察官は俯き、僕に背を向け、来た道を戻る。
白髪混じりの警察官も僕の目を少し見つめた後、気分が悪くなったのか胸元を抑えながら、若い警察官のそれに続いて元来た道を帰って行った。
「…………。」
僕は上げていた両手を下ろし、もう一度ため息をつく。
確かに白髪の警察官が言っていた事に間違いは無いが、そこまで極悪非道な事はしないんだけど……。
「はぁ…疲れた。……ん?。」
ピリピリとする。
警察官は居なくなったのに、空気のピリつきが収まらない。
何でだろう。
「あぁ、そうゆうことか……。」
見られてる。誰かから。どこからか。
じっと、見つめられている。
敵意を持って、僕のことを見ている。
………とりあえず、動くか。
僕は路地を歩きながら左手首のスマートウォッチで時間を確認する。
現在14時5分。
んんー……。
撒くかなぁ、でもつけてるのが何か気になるんだよねぇと、僕が気を緩めた直後。
「 。」
ひやり。
じわり。
べたり。
ひたり。
と。
身体中に張り付くような、頭から氷水を被ったような、そんな感覚が僕を包んだ。
全身を針の筵で貫かれたようにも感じるこの感触は、前も仕事と母さんとの稽古で感じたことがある。
殺意、殺気、その類いだ。
「………。」
でもこの殺意は、前に仕事で感じた殺意よりも強く、濃厚な殺意。
…3年前の自分を思い出させるような、殺意。
そこまで熱烈に誘うのなら、答えてあげないとね。
「……残業代はつかないだろうなぁ、かといって放置するのもなんだか人間味に欠ける。」
今の今しがた、人を殺した人が何を言ってるんだと怒られそうだ。
まぁ、いいや。
今まで歩いていた路地よりももっと人気の少ない、ある程度動きやすい理想的な場所を見つける為、僕は路地の角を曲がる。
その間も、その敵意の塊は僕をずぅっと見ていた。
背中を突き刺すようにずぅっと。付かず離れず、一定の距離を持ちながら。
少し進むと、僕が探していたような場所よりもかなり良いところに着いた。
それは一つの建物だけど、全体的に屋根が低く、沢山の小さなタンクや外階段や排気口、よくわからないぼろぼろのホースや塩ビ管や鋳鉄管、ダクトが入り組んでいて、敷地の周りをドラム缶やよく分からない大きな箱、何かのプラスチックの大きなタンクや大きなパレットが散乱し、更にその外を有刺鉄線付きのフェンスに囲まれた、全く人の気配のない廃墟。
一言でいうならば、廃工場。
これなら……というか、荒れ放題だった。
建物自体が風化してるのか、全体的に錆びていたりして灰色と茶色のコントラストができている。周囲の落書きが場違いな程目立ち、散乱したゴミが、役目を果たしたここが、その後どう扱われたのかまで物語っていた。
でもまぁ、これなら人気は全く無いだろうね。
僕は工場内部に足を踏み入れる。それでも、僕の背後の殺意を帯びた気配はまだついてきている。
よしよし。
工場内で少し拓けた場所を見つけ、そこに入る。
ここは…元は倉庫か何かな?、大きなコンテナやドラム缶がいくつか放置してある。
その中には何処から運び込まれたのか、学校で使われるような椅子が1つ、置いてあった。
不良の溜まり場だったのかな?、どうでもいいけど。
風化しボロボロになったトタンの天井が数箇所抜けてるのか、日の光が差し込んでいて、閉鎖的な雰囲気のある空間の割には明るく、風通しが良い。
ここなら、いいかな。
僕はアニメや映画でしか聞いたことがないようなセリフを言ってみる。
「.....いい加減出てきたら?。僕はわざわざ君が出てき易い場所に、移動したんだからさ。」
わ、思った以上に響いた。
というか、こんなテレビでしか聞いたことないセリフを僕が言う日が来るとは思わなかった。
厨二病っぽい。
こじらせちゃってパンパカパッパッパーン。
……まぁ、いいや。
僕が言い放ってから2秒程して。
彼は、元倉庫内に入ってきた。
コンクリートの床に黒くて長い、何かを引き摺りながら。
「…………ハハハッ」
男の乾いた笑いが響く。
「……。」
黒。
彼に対する僕の第一印象は『黒』だった。
黒い。
黒い、大男。
身長は優に190以上2m近くはあるだろう。
決して太くはないが、細いという印象は無く、がっしりとした骨格に、強靭なカーボンワイヤーを束ねたような筋肉を纏っているイメージ。スポーツ選手やアスリートのように無駄なものを省き、必要最低限で最大限のパフォーマンスを出す為の器のような物、みないな、そんな印象を受ける肉体。
その鍛え抜かれた肉体の上から、真っ黒のシンプルなデザインの作業着のようなツナギに、真っ黒で無骨な安全靴を履いている。しかし、どこかくたびれていて、苦労した人生をそのツナギが証明しているかのようだった。
真っ黒な髪は少し伸びているのか、目にかかり、伸びた襟足は後ろで結ばれそして、その黒い大男の前髪がかかった狐のような三白眼を見て、僕は驚いた。
黒い、なんてものじゃない。
漆黒。
その言葉ですら足りない、全く足りない、それくらい、彼の瞳は黒かった、漆黒だった。
まるで、煮詰めた濃度の高い墨汁やインクを、更に煮詰めて、煮詰めて煮詰めて、煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰めて煮詰め続けてドロドロになったものを直接目に流し込んだような、そんな、どす黒く吐き気を催すような目をしていた。
そして僕は、この目を嫌という程、毎日鏡で見ている。
僕の、目だ。
僕と、同じ目だ。
死んだ人間のような、生気のない目。
でも、彼の目は少し違った。
見た目や形は似てても、その中にあるものが、僕と少し違うような気がした。まるで、芯や筋といったものが……。
そう思っていると、彼は顔に笑みを浮かべ、右手に持っていた何かを肩に担いだ。
最初は何を持っているかわからなかった、でもよく見るとそれは、鎌だった。
ツヤの無い、黒く異様に大きな黒い鎌。
長さは目測で3m程、弧を描いている禍々しい刃の部分は、刃渡りは2m程あるだろう。
異様な光景だ。
それを彼は片手で扱っている。
……さっきのイメージは、間違っていなかったみたいだね。
「………言葉で解決する気は無いのかい?。」
「………言葉だぁ?」
彼の声は低く、少ししゃがれていたが、威圧感のようなものを感じさせる。
「てめぇだって、さっきは人の意見も……殺す相手の意見も何も聞かずに殺しただろうが、だからっつー訳じゃねぇけど、俺の”対象者”かもしれねぇだろ?、だからさぁ…」
彼は肩に担いでいた大鎌をその場に振り下ろす。
大鎌の軌道上にあったドラム缶が派手な音を立て、荒々しく切り裂かれる。
「疑わしきは罰する。って奴さ、疑り深い人間なもんで」
僕ら以外誰も居ない工場に緊張感が走る。空気がピリピリとし、静寂が痛い程耳を劈く。風で揺れるトタンのカタカタという音がやけに煩く聞こる。
あんなもので切られたら、ひとたまりもない。それに、今朝のニュースで出てた連続殺人事件の犯人は、彼だろうね。
切り口。大きな刃物で荒々しく一撃……僕もニュースの被害者達やあのドラム缶みたいに切られて死ぬのかなぁ。
死ぬなら眠るように死にたいけど、あの刃物だと眠る間もなく気づいたらあの世だろうね……。
まぁいいや。
兎に角。
彼は言葉で解決はしない主義らしい。
それなら仕方ない。僕もここまで来たなら答えてあげないといけないだろうし、もちろん答えてあげるさ。
僕は狐面を顔に被せると上着の前を開け、下に着ていたタクティカルベストからナイフを2本抜き出し、構える。
両方とも形は同じ、中型のコンバットナイフ。軍隊とかで使われるような分厚く丈夫で折れにくく、切れ味もそれなりに良い、使い勝手のいいナイフ。
右手は白黒のツートーン、左手は全体的に灰色の塗装がされている。
僕がナイフを構えたのを見て、彼は低くシニカルに笑う。
くくく、と。
「はぁ……最悪だ。」
僕が彼に向かって一気に距離を詰めようとすると。
彼は僕に向かって大きく大鎌を振り上げる。
静かだったはずの廃墟の工場内に派手な金属音が響く。




