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歌手志望のダンジョン暮らし―【爆殺歌姫】は今日も歌でモンスターを爆破するー  作者: ミジンコ
第二章

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第十五話 音楽フェスへの誘い

お待たせしました!

本日より、二章の投稿を開始したいと思います!

 入院生活は退屈な日々だった。何せ私は怪我人だ。歌うことはおろか、まともに運動することすら出来なかった。しかしそこは現代医療の力。それなりの重傷だったらしいけど、一週間ほどで完全回復することが出来た。


 退院した後は、レイカさんにお礼を言いに行った。


 実はレイカさんは、入院中にも何度かお見舞いに通ってくれた。何より倒れた私をダンジョンで見つけ、助けてくれたのがレイカさんだった。気を失う前に聞こえた声は、やっぱりレイカさんのものだったらしい。


 どうやって私を見つけたのか?という部分については……うん。


 今はあまり考えたくない。


 私のポカが原因なだけに、誰にも何も言えないから……


 そうしてお礼を言いに行った先で、褒められたり怒られたりした。褒められたのは、歌について。怒られたのは、何の準備も無く第三階層に踏み入ったことについて。


 そんなこんなで色々ありつつ、あれからおよそ二週間でいつも通りの生活に戻ることが出来た。


「ふぅー…………」


 今日はあの日以来、初めてのレッスンだ。実に二週間ぶりぐらい。


 久しぶりのレッスンだから、ちょっと気合いを入れ過ぎたかもしれない。一曲歌っただけで、少し息切れする。それとも入院生活で身体が鈍ったか? 確かに二週間近くまともに発声練習すら出来なかったからな。


 でも、手応えあり、だぜ?


 私はそんな意志を視線に込めて、MEGUMIさんを見る。


 目を閉じて私の歌を聞いてたMEGUMIさんは、少ししてから口を開いた。


「声量が少し小さくなったんじゃない? それに息が続かないから、変なところでブレスが入ってたわよ。その所為で歌に必要無い間が生まれてる。この間のレッスンで聞いた時の方がよっぽどマシだったわ」

「ぐっっ」


 退院したばかりの奴を相手に、相変わらずズケズケと意見を言ってくれる。

 

 しかもそれが正論だから、たまったもんじゃない。歌いながら自分でもなんか変だなと感覚的に分かっていた部分を、ばっちり指摘されちまった。さすがに反論のしようがない。


 入院してたから? そんな言い訳したってダサいだけだろ。

 

 これはまた一から鍛え直しだな、と思っているとMEGUMIさんの言葉が続く。


「――け・ど。前よりも歌の輪郭がはっきりしてきたわね? その影響で、よりダイレクトに歌詞に感情が乗って伝わって来る。この点だけは、前回より今回の方がいいわ」

「ほ、本当っすか!?」

「こんな嘘吐いても仕方ないでしょ。それで? アンタはどんな答えを見つけたの?」


 あの日の歌で掴んだ感覚は、まだ私の中にしっかりと残っていた。


 それは、対象を明確に意識して歌うこと。


 これまでは大勢に聞いてもらいたいという漠然とぼやけていた意識を、あの時はモンスター相手に。今日はMEGUMIさんに聞いてもらうんだ、という意識をもって歌った。


 そのことをMEGUMIさんに伝えると――


「なるほどね。良い答えだと思うわ。でも調子に乗るんじゃないわよ? 欠点の一つに見られただけで、課題はまだまだあるんだから。ここのところ休んでいたんだから、取り戻す分も合わせて倍は頑張りなさい」

「分かってるっす! 引き続きよろしくお願いします!」

「返事は立派ね――じゃあその言葉が本当かどうか、確かめさせてもらいましょう」


 そう言うと、MEGUMIさんは一枚のチラシを見せてきた。


「えっと何々。代々木ソングバースト…………ソングバーストっっっ!? メ、MEGUMIさんこれって!?」

「書いてある通り、代々木で行われる音楽フェス。ソングバーストフェスティバルのチラシよ」


 代々木ソングバースト……


 それはプロ、アマ問わず様々な音楽人が参加する音楽の祭典。そしてプロを目指す者にとっては、一種の登竜門と言われているイベントだ。


「ど、どうしてソングバーストのチラシを……?」


 私はちょっとドキドキしながら、その理由をMEGUMIさんに聞いた。自分でも声が上ずっているのが分かる。


 だってここでこのチラシを出してくるってことは、ひょっとしてひょっとするんじゃないか!? もう胸のバクバクが止まんねえ!!


 そうして、続くMEGUMIさんの言葉を待つ。


 MEGUMIさんは、そんな私の様子を知ってか知らずか言葉を焦らす。いやあのイイ性格をしてるMEGUMIさんだ。きっと知って楽しんでいるに違いない。その証拠に口が三日月のような形になっている。


「このソングバーストにアンタを出してあげる――」

「っ!?」

「――なんて言うと思った? そんな訳ないでしょ。身の程弁えなさいよ、おバカ」

「っ……!……!!」

「全く。甘ったれるんじゃないわよ! 大体、仮に私の力で出してもらって、アンタはそれでいい訳? 情けないと思わないの?」


 くそっ、至極真っ当なことを言いやがって……!


「じ、じゃあなんだよ! ただの宣伝か!? 見てこいってことかよ!?」

「最後まで話は聞きなさいな。出してあげることは出来ないわ。で・も、チャンスをあげるのはやぶさかじゃないわ。そのための条件は一つだけ。ソングバーストの出演者オーディションの締め切りまでに、アンタが私の求める水準に達すること」

「MEGUMIさんの、求める水準……」

「当然、甘くは無いわよ。どうする? チャレンジして見事玉砕するか。それとも何もせずに、ステージの下で指を咥えて見ているか――さあ。アンタはどっちを選ぶのかしら?」


 どっちの選択肢にも、私がMEGUMIさんの試練に合格するって判定が入ってない。


 私を焚きつけるためなのか、それとも本気で無理だと思ってるのか。どっちにしても、この人の言う通り簡単な挑戦じゃないはずだ。フェス開催、三か月後か……


「募集の締め切りは?」

「一か月後よ」


 たった一か月……


 ブランクを取り戻して、その上で成長する。


「どうするの?」

「……受ける。その挑戦、受けて立つ!」


 成長できるかどうかは、さほど心配すべき部分じゃない。結局はやるだけやってみるしかないんだから。


 それよりも挑戦しない方が勿体ない。だって失敗したところで、何かを失う訳じゃないんだから。おおよそMEGUMIさんには笑われるかもだけど、それがなんだっ。挑戦しない理由にはならないっ!


 やらない理由がないなら、やるべきだろうっ。


「その気はあるってことね……アンタ、どうせ暇よね?」

「ひ、暇って。まあ、そうですけど……」

「なら喜びなさい。この期間だけ特別に、レッスンの量を倍にしてあげるわ!」

「ば、倍っ!?……の、望むところっす!!」

「じゃあ次のレッスンは、明日の同じ時間よ。遅れたら承知しないから」


 それだけ言い残すと、MEGUMIさんはスタジオを後にした。


「一か月、か」


 自分以外に誰も無いスタジオで、一人でぽつりと呟く。


 啖呵はきった。後は目標に向かって走るだけ。


 それにしても、ソングバーストかぁ……


 まさか私に出演の可能性が出てくるなんて思ってもみなかった。だってそうだろう? アマどころか、活動だって最近始めたばっかの私が、そんなデカいフェスに出演しようだなんて土台無理な話だ。


 というか存在は知ってたのに、自分が出演するっていう発想すら無かった。

 

 そんなところに巡ってきたこのチャンス。掴んで見せなきゃ女が廃るってもんだろ。MEGUMIさんに認めてもらえないなら、プロの歌手になるのも夢のまた夢。一歩でも早く辿り着きたいなら、ここが踏ん張りどころだ。


 むしろ、いい目先の目標が出来た。


 ソングバーストに出場して、歌手として名を上げる。私の歌手への道の第一歩だ。


「やってやるぜ!」


 まずは、ここで自主練からだな!

いかがでしたか?

今回は早速、エミリに新しい試練が与えられることとなりました。果たしてエミリはソングバーストに出場することが出来るのか? ぜひ見守っていてくれると有難いです!


という訳で今日はここまで! 次回は明日の更新を予定しています!


また読んでみて面白い・続きが読みたいと思って下さったら、ブックマーク・評価・リアクションなどをしていただけると嬉しいです。執筆の励みになります。よろしくお願いします!

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