お姫様
「日用品…はこれ、魔道具は…これ……よし、準備バッチリですね!お二人とも、忘れ物はありませんか?」
「はい!全部持ちました!」
「あたしもばっちりだよ!」
「それじゃあ…出発です!」
スーツケースを1人ひとつと、各々鞄を持ち、家を後にしました。
まず、最初の目的地は…主に人間族が暮らし、獣族、エルフ族と様々な種族が入り交じる国家…リルカディアへ向かうことになりました。
「これは……汽車ですか?!」
カナメが目をキラキラとさせながら、大きな列車を指さしながら言いました。
「いえ、これは魔動車ですね。魔力を燃料とし、高速で移動をすることができます。汽車もあることはありますが…ここから、かなり遠くに行かないと通じていないので私は見た事がありませんね」
「そ、そんな…この世界にと汽車があっただなんて…!それ魔力で動くのも…!」
「魔動車知らないなんて、どんな田舎に住んでたの?ここら一帯だったら、結構開通してるのに…」
ミリアにはまだカナメが勇者であることは話していません。理由は…特にありませんが、魔王が現れた時、実は勇者だったー?!的な展開で知る方がミリアもカナメも嬉しいでしょう…と言う気遣いなのです。
「あ、ミリアには言ってなかったっけ?実は異世─っむぐ!!」
「な、何故話そうとするのですか?!」
「え…話しちゃまずいことなんですか?」
「まずいのですよ!危機的状況で実は勇者宣言〜っといったかっこいい登場ができなくなるではありませんか!」
「え…別にそんなかっこよくなくていいですけど…」
「先生と二人で内緒話なんて…ずるい、あたしも混ぜてよ!」
「実は、カナメが弟子入りした時…魔動車に取り残されていたのを保護したのですよ。その時頭を打ったのか…ちょくちょく記憶が飛んでいるみたいなのです」
「えぇ!そんな感じで弟子入りしたの?!結構…大変な人生送ってるんだね…」
「かなり変な誤解を招いている気が…」
そんなことを話していると、魔動車の汽笛が聞こえました。乗る予定の車両が来たようです。
「来ましたね。さぁ、お二人共…行きましょう!」
ーーー
「疲れた…長旅…だった……」
「旅はまだ始まったばかりなのですよ」
魔動車の列車に揺られて8時間程。ようやく目的地に着いた。
「ここが…リルカディア……!」
人口の約半数以上が魔術師以上の階級を持つと呼ばれるここ、リルカディアは活気に溢れている街なのです。
「あら…もしかして、蛇魔女先生?お久しぶりですわね」
「この声は…お久しぶりですね、お嬢様」
宿屋を探して街を歩いていると、赤髪の白いドレスを着たエルフ族の少女に声をかけられました。
「師匠の……お嬢様?お知り合いなのですか?」
「貴方達は蛇魔女先生のお弟子さんかしら?初めまして。私は…ユレシフラス・リルカ・ルアと申しますわ。貴方たちの師は…かつて、私の専属魔術教師兼メイドとして仕えていましたの。」
「師匠が…メイド?!」
「メイドと言っても、ほとんど魔術教師としての役割しか果たしていませんでしたけどね」
「…あ、あの…先生……ユレシフラス…様って、もしかして……」
「恐らく推察の通り、私は…この国の王族に当たりますわ…まぁ、現在の王とは血縁は少しばかり離れていますけれど……そうですわ、蛇魔女先生。もし宜しければ、この後お茶をしませんこと?久しくお会いしていない間に、色々とお話したいことが沢山溜まっているのですわ」
「その…お茶したいのは山々なのですが、実は宿屋を探しておりまして。どこかしら宿泊できる所を見つけるまでは…」
「それなら、是非私の所においでくださいな!蛇魔女先生であれば、何人弟子が居ようともお招きしますわ」
「それじゃあ…お言葉に甘えて」




