借金
「もう、頼れるのはコハクさんしかいないのです…お願いします!!何でもしますから!」
コハクが仮拠点としている宿屋で、魔女は土下座していました。
「……はぁ、久々に会ったと思ったらぁ…まさか、金貨二十万という多額の借金をおっているだなんてぇ…何の悪い冗談なのですかぁ?」
「うぐ…そ、それは……」
遡ること2日前、イディア…もといディアの一件が一通り落ち着き、一旦学園の寮に戻ることになりました。まぁご存知の通り火災が起きた為、一時休校となっていましたが…さすが魔術学園と言うべきでしょうか、火災が起きて燃え尽きた建物は二日足らずで元通りになっていました。
理事長に直談判し、どうにか魔女が責任を負うということになり、一件落着…となるはずでした。
……偉大なる魔女は、自慢ではありませんが…かなり貯蓄がある方です。数十年…数百年と、魔女として過ごす中でかなりの数の依頼をこなし貯金に励んできましたからね。それ故、学園や寮の修繕費を支払う事ぐらい、容易いもの…と思っていたのです。
貯金額は金貨八万四千二百枚…おおよそ、普通の人が一生をかけて働いて貯めることのできる額の3倍程はあります。
精々、かかっても数千程…そう思っていましたが、請求額はなんと三十万でした。小さな国家であれば丸ごと買収出来るでしょう…
実験器具や魔術道具などがなかなか高額な物を使っていたようで…こんなにも膨れ上がったようです。
貯金を叩いても残りは二十二万…理事長から報酬として貰うはずだった金貨や魔女の所持品である魔術道具を売り二十万………はぁ…何十年働けば返すことが出来るのか、考えるのも嫌になりました。
「はぁ…仕方がないですねぇ……はい、これをどうぞぉ」
「…!こ、これは…プラチナカード?!」
銀白色の薄いカードを数十枚渡されました。
プラチナカード…相応の身分と実績を持つ者だけが所持することの出来る最高峰のカードです。
一枚で金貨一万枚の価値があるこのカード…噂では聞いた事がありましたが、見るのは魔女も初めてでした。それも一気に数十枚も…
「あぁ…コハクさん……」
「な、なんですかぁ…?」
魔女はコハクの肩をつかみ、諭しました。
「自首、しましょう」
「盗んだものではないのですよぉ!こ、コハクだって蛇さん達を待っている間、遊び歩いてた訳じゃないのですぅ!」
「失礼、お嬢。そろそろ予定のお時間です」
黒服の長身男性がふりふりとしたドレス…?のようなものを片手に来ました。
「…コハクはこれから予定があるのでぇ、後は頑張ってくださいねぇ……あ、絶対についてこないでくださいよぉ?悪いことはしてないのでぇ、そこはご安心を〜」
足早にコハクは去って行きました。コハクが先程まで座っていた席を見ると、ひとつ写真のようなものが落ちていました。
その写真をよく見てみると…先程黒服の男性が持っていたふりふりのドレスのようなものを着たコハクが写っており、激かわにゃんこ、琥珀ニャン♡と丸い文字で書かれていました。
魔女は見なかったことにして、足早に借金を返しに学園へ向かいました。
ーーー
世界の果てにある最も深い洞窟の奥に、カランと乾いた音が響いた。どうやら、壁に刺さった剣が落ちたようだ。剣が刺さっていた箇所から黒い影が現れ、少年を形作った。
黒髪に色素の薄い瞳を持った人間の少年は、今まで五百年間己の胸に刺さっていた剣を拾い、今までの鬱憤を晴らすように壁へ強く打ち付け壊した。
「今度は…失敗しない。必ず……この世界を、破壊してみせよう」
五百年の時を経て、かつてこの世界を破壊せんと、数々の国を滅ぼし…異世界から召喚されし勇者に封印された魔王…リート・グランデリという名の少年が、目を覚ました。
その晩、空に亀裂が入った。
それは魔王が目覚めたという合図であり、世界への…勇者への宣戦布告だった。




