告白
1ヶ月が過ぎ、講師として働く約束の期限まで1週間を切りました。
自室で学園で教職を続けるか、再び旅に出るか迷っている時、魔女はとある違和感に気づきました。
学園中に、一定量の魔力が滞っていたのです。普通、魔力というものは空気同様循環しています。密封空間や魔力操作といった関与がない限りその場に留まるということはありえないはずなのですが…微かに、薄く止まったままの魔力で満ちていました。
魔力の流れに意識を向けていると、静かにドアがノックされました。
「あ、あの…魔女…様。す、少しお話が……」
イディアが来たようです。今、ミリアは学友と遊びに、カナメは先輩に魔術を教えてもらうということで部屋には魔女しか残されていません。この前の事もありますし少し出るのは躊躇いますが…仕方ありません。
「どうされたのですか?申し訳ないのですが、今少し立て込んでいて…手短にしていただけると嬉しいのですが…」
「あ、あの…今、この部屋には…弟子の方達は…居ないん、ですか?」
「…何故、でしょうか?」
「あ…その、魔女様と…二人きりに、なりたくて」
「ごめんなさい、今日は少し都合が悪いんです。また今度にしてもらっても…」
「い、嫌…です。…っ、失礼します!」
すると突然、イディアは押し切って部屋の中へ入り、魔術でドアを施錠しました。
「…こ、これで…二人きりに、なれましたね…!こ、この部屋に、防音結界貼っているので…叫んでも、無駄ですよ…?」
「あなた…何のつもりですか?これ以上悪ふざけをするのであれば、容赦しませんよ…!」
魔女は杖を取り出し、徐々に距離を詰めてくるイディアへ向けました。
「え、えへへ…魔女様……可愛いな…昼間、先生をしている時は…あんなに強そうなのに…本当は…わ、私より弱いんだもん……で、でも…そんな魔女様も、私…大好き…」
「…っ!近づかないでください!」
「ねぇ…魔女様……ほ、本当はもう、上級魔術も使えないし、魔法で補強しないと…目も耳も殆ど見えないし聞こえない……それに記憶も、曖昧になってきてるんですよね?」
「……何を言っているのか、意味がわかりません」
「つ、強がらなくたって…いいんですよ?ここには私と魔女様の二人しかいないんですから…わ、私は魔女様のことは、全部知ってるから…。それに、もし知らない事があっても、全部…全部、受け入れる……だから、私に……魔女様の全部が、欲しい…な」
壁際まで追い込み、イディアは魔女の頬へそっと手を添えました。
「私…誓うよ。魔女様が例え、完全に魔法が使えなくなって五感を全て失って…全ての記憶を失ったとして空白になったとしても、ずっと、ずっとそばに居る…魔女様の記憶から消えても、私の記憶から消えたとしても、この気持ちは変わらないから…だから、これからは二人で一緒に居よう…?」
息がかかるほどの距離で語るイディアは、頬を朱に染めながら蕩けそうな表情で魔女に再び告白をしました。
何故魔女の事についてここまで詳しいのか、何故ここまで執着するのか…何も分からず動揺していると、視界の端に赤く光る窓ガラスが映りました。
学園中、火の海となっていました。




