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蛇魔女日記  作者: 悠守景
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逡巡

 ロスヘルス学園へ講師に来て早3週間が経ちました。

 この学園に滞在している間にカナメは中級魔術を修め、なんと最後の1週間は上級クラスの参加が認められる程成長しました。

 ミリアはまだ中級ですが、この魔術学園へ来る以前よりも術式への理解度が増しているため、これからの成長が楽しみです。


「師匠?何を書かれているんですか?」

「ふふふ、近い未来あなたが勇者になった時のための伝記…の元となる日記を書いているのですよ!世界を救った勇者の師匠…それは、偉大で美麗なる魔女だった──!我ながら名作です…覇権確定ですよ!」

「日記、ですか…なんだか僕が来たばかりの時、師匠が教えてくれたあの本を思い出しますね。」

「…本、ですか?」

「あ、覚えていませんか?僕が師匠に拾われたばかりの時、前の勇者の前日譚を見せてくれたじゃないですか」

「そんな事も…あった…のですね」


 魔女は日記を捲り、数ヶ月前に自身が書いた文章を見返すと、半分程…見覚えのない物語が綴られていました。


「…」

「師匠?大丈夫ですか?」

「…大丈夫ですよ。私は何も…忘れていませんから」


 魔女はそっと日記閉じ、戸棚へ戻しました。


ーーー


「ま、魔女様!きょ、今日は…その、一緒に、昼食…いかがですか…!」


 授業が終わり、教室から出ようとするとイディアに呼び止められました。

 カナメ同様、実力が認められたイディアは上級クラスへの参加資格を得ることになり、毎回ではありませんが魔女の授業にも参加するようになりました。

 ですが、昼食に誘われたのは今回が初めてです。


「うーん…そうですね……カナメが同席しても良いなら──」

「アリア・グランデリ先生。少し理事長よりお話が」

「あ…すみません、イディアさん。また今度都合が合えば、ゆっくりお話しましょうか」

「…はい……わ、分かり…ました。」


 イディアはしゅんと肩を落とし、どこかへ去っていきました。


ーーー


「ごめんなさいね、急に呼び出してしまって…この学園での生活はどうかしら?」

「結構楽しいです。教職というのが性に合っているのでしょうか…生徒や弟子が成長していく様はとても感慨深いものがあります」

「それなら良かった…早速本題に入りましょう。アリア…魔術学園の正式な教師として働く気はありません?臨時講師として来てから3週間…生徒達の評判も悪くない。先生方も歓迎の意を示してくれているわ。報酬だって、それなりの額は渡すしボーナスも期待してもらっていい…それに、あの弟子達もちゃんとそれなりの実力を持っているし、正式な生徒として認めたって構わないわ。」

「…何故ですか?臨時講師としてのお誘いを頂いた時もそうでしたが、なんだか私であるメリットはない気がするのですが」

「……教会のことについて、アリアはどれぐらい知ってる?」

「教会…急に何故そのことを?」

「これを見て欲しいの。」


 理事長が取り出したのは、新聞の記事でした。見覚えがないその新聞をよく見てみると、どうやら四つほど国を跨いだ先にある所のもののようです。

 そこには…大きく魔女の顔が印刷され、こう書かれていました。

 魔王の使い魔である、蛇の魔女を捕らえろ…と。


「勇篇教…かつてこの世界を救ったのは女神ではなく勇者と言って回る教団が、とある国を襲ったの。でも、それは表に出ていない…周辺国が力を合わせて制圧して言論統制をしてるみたい。…女神様を否定するような事を言っていたらしいから、当然と言えば当然なのだけれどね。その新聞は国が勇篇教に制圧されてまもない頃に発行された一部よ。」


 勇篇教…それは、以前魔女を襲った白兎の少女が語ったものと同じでしょう。あれから情報を集めようとしたのですが、まるで存在しないかのように、しっぽを掴む事は疎か確かめる事でさえもできませんでした。


「何故かは分からないけれど、あなたは狙われているわ。だからこそ、このロスヘルス学園で身を隠した方が安全の為だと思うの。ここなら、いざとなれば魔術師が集結しているし、あなたの弟子達ももっと魔術について学ぶことが出来るわ」

「…すみません、今はまだ結論は出せません。…考えておきます。」

「えぇ、ゆっくり考えてもらって構わないわ。…なにか困ったことがあるのなら、なんでも言ってちょうだい。私は…あなたの味方よ」

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