約束
ロスヘルス魔術学園から少し離れた森の奥…少し開けたその場所には池があり、夜に星々が映り輝く様は絶景と言わざるを得ないでしょう。
そんな神秘的な秘境は今…熱狂的なファンにより作られたありとあらゆる魔女のグッズで埋め尽くされていました。
木を彫って作られた人形に池の水を使って写し出された写真や広い敷地を利用して描かれた肖像画…他にも沢山あり、キリがありません。
「な、なかなか……やるじゃない…ですか…す、少しだけ…見直しましたよ、強敵…カナメ…」
「イディアさんこそ…こんなに麗しい師匠を作れるなんて…伊達に魔女ファンクラブ一号を名乗っていませんね…!」
…何だか二人が仲良くなっている気がします。そもそも魔女ファンクラブとは一体何なのでしょう?
「お二人共…もう暗くなってきましたし、そろそろ寮に帰りませんか…?決着がつきそうにありませんし、一時休戦とした方が良い気がするのですが…」
「…ま、魔女様がそう仰るのであれば…私はそれで構いません…で、ですが、その…わ、私と心中する件は…考えておいてほしい…です…ぜ、絶対に私は、魔女様を後悔させませんから…!」
数時間に及ぶ魔女を賭けた戦いは、一旦幕を閉じました。
ーーー
「所で…何故今日はついてきたのですか?」
深夜、寮の近くにある公園のベンチでイディアとのデート中の尾行についてカナメに問いかけました。
なぜ公園かというと、ミリアにはイディアとのデートの事を秘密にしているからです。知られると面倒な事になるのは火を見るよりも明らかなので…。
「ごめんなさい、師匠…その、何となく心配になったというか…デートと言っていたので、もしかしたら師匠がイディアさんに…」
「取られてしまうかもしれない、と?…あなたの師匠は他の人に誑かされてしまう程軽い女じゃないのですよ。少なくとも、カナメさんが立派な…勇者になるまでは、あなたの師匠を辞めるつもりはありませんから」
「…それもそう、ですけど…」
「ともかく、隠れて尾行をするのは良くありません……ですが…私を助けに来てくれたあの時、とても嬉しかったのですよ。あの時私はどうすれば良いか分からなかったので…。それに、少し恥ずかしかったですが…あんな風に私の事を自慢に思って下さっているだなんて、師匠としてとても…嬉しいです。……今日は、私を守ってくれて、ありがとうございました」
「し、師匠を守るのは、弟子として当然の事をしたまでです!…その、弟子の僕が言うには烏滸がましいかもしれないんですが、師匠は…あ、あんまり誰かと二人きりでデート…とかは避けた方がいいんじゃないかって…何だか最近良くない事が続いているので…」
「それもそう…ですね。それじゃあ…カナメさん、前髪を上げて額を出してください」
「え…こう、ですか?」
魔女はカナメに近づき、額と額を合わせました。
「近っ…?!…し、師匠…?!」
「私の故郷に伝わる約束の儀式です。私はこれから、とても信頼できる愛弟子以外の人と、デートをしない…そして、他の誰かに目移りしたりしない…約束です。…あ、コハクさんも含むべきでしょうか?」
「…約束は約束、です。あとから付け加えるのは…なしがいいです」
「…ふふ、分かりました。魔女の言葉に二言はありません」
約束を交わし、少し雑談をしてから寮に戻りました。




