出発
倒れてから2日、ようやく魔女は目を覚ましました。
最初は少し戸惑っていましたが、カミラさんに状況を教えてもらい、とりあえず落ち着きました。
「すみません、迷惑をお掛けしてしまいましたね」
「あんまり無理するんじゃないよ、弟子達には私が稽古を付けておいたから安心しな!せっかくだし、もう少しゆっくりしていきなよ。アリアの身体も心配だし…それにここらは魔力濃度が高いから、あの子達にとってもいい修行場所だしね」
「あ、その事なのですが…明日にはここを発とうと思っているのです。実は…次の目的地に用事がありまして。急ピッチになってしまいますが、余裕を持って着いておきたいんです」
「そっか…分かった。無理に引き留めはしない…けど、無理はしないでよ?確かにアリアは凄腕の魔女かもしれないけど…だからと言って限界が無いわけじゃないんだから、しっかり休息は取ること!」
「はい、ありがとうございます。…こうしていると、なんだかカミラさんがお姉さんみたいですね」
「ふふ、そう?それじゃあ…カミラお姉さんって呼んでもいいんだよ?」
ーーー
雲ひとつない青空が広がる日、魔女は弟子と猫を連れてパルスを旅立ちました。
「アリアー!元気でなー!」
「はい、ありがとうございました!カミラさんもお元気で!」
カミラに別れを告げ、駅へ向かうべく坑道を歩いています。
「しかし…私が不甲斐ないばかりに、神獣の元へ案内する事が出来ませんでしたね…せっかくここまで来たので一目見ておいて欲しかったのですが……」
「神獣…確かパルスの人達が信仰してるんでしたっけ、そんな簡単に会えるものなんですか?」
そう、神獣とだけあって普段は警備が頑丈に固められ、蝿の1匹も入れない程なのです。
「私の知恵と魔術があれば簡単なのですよ!神獣は厳重な檻の中…鋼鉄で出来たそれを突破するのはなかなか骨が折れますが…地面は薄いコンクリートが敷かれているだけなので、穴を掘っていけば簡単に侵入することが出来るのですよ!」
「……それ、普通にダメなやつなんじゃ?」
「私と神獣はお友達なので、きっと…多分、許してくれるのですよ!あのふわふわは…何物にも代えがたい…あぁ、また機会があれば遊びに行きたいですね…」
神獣の毛は魔力で編まれており、とても手触りが良いのです。一部では換毛期で抜け落ちた毛を高級素材として使用されているのだとか…
「ふわふわならあたしにだって…!せ、先生なら、耳触ってもいいよ!尻尾、も……すこしなら!」
「ミリアさん…!本当にいいんですか!えへへ…実は、いつも触ってみたいと思っていたのですよ…!」
魔女は飛びつくようにミリアの耳や尻尾をもふもふとし始めました。ミリアは最初こそ気恥ずかしそうにしていたものの次第に慣れ、魔女とじゃれ始めました。傍から見ると魔女が大型犬と戯れているようでした。
「蛇や狼は幸せそうでいいですねぇ…あ、亀さん、疲れたのでコハクをおんぶしてください〜」
「え、僕ですか……嫌ですよ、ちゃんと自分で歩いてください…」
「はぁ…蛇さんはいいのに、なんでコハクはダメなんですかぁ…さっき独り言で言ってましたよねぇ?」
「ちょっ?!き、聞いてたんですか?!師匠に言うのはやめてくださいよ?!」
「嫌ならコハクを楽させろなのです〜」
「ぐぅ…はぁ、分かりましたよ……けど、本当に師匠には言わないでくださいね?…あんまり気を使って欲しくないので」
「分かりましたよ〜…それにしてもあの二人、いつまでああしているんでしょうねぇ?」
数分間魔女はミリアをずっともふもふとしていました。
「ふぅ〜!ミリアさんのふわふわは充分堪能できました!…そういえば、猫さんも…ふわふわしてみたかったんですよね…」
「な、なぜコハクを見るのですぅ?」
「折角ですし!コハクさんもふわふわさせてください!」
「にゃ…!亀さん!早く走るのです!」
「うわっ、ちょっ…コハク!髪引っ張らないでください!」
こうして、道中は遊びながら駅へと向かいました。




