魔力暴走
「とりあえず、応急処置はしておいた。今はベットで眠ってる」
買い物に行ったっきり帰ってこない師匠を探しに行くと、廃墟となった酒場にいるのを見つけたのだが...見えない何かと話をしたと思うと、そのまま倒れてしまった。
額に触れるととても熱くなっていたためとりあえず宿屋に連れて戻り、カミラさんに診てもらった。
「ありがとうございます、カミラさん。師匠は、大丈夫...なんでしょうか」
「恐らく、魔力暴走を引き起こしたんだろう。1度目を覚ましたがまたすぐに寝てしまった...しばらく安静にしておいた方がいい。しかし、アリアが魔力暴走を起こすとは珍しい事もあるんだな...」
魔力暴走...確かミリアが弟子入りして間もない時に起こしたものだ。だが、結局師匠にどのようなものなのか聞けずじまいだったな...
「あの、すみません。魔力暴走とは...一体何なのでしょう?」
「あぁ、魔力暴走は...主に獣族に起こるものなんだ。前提として...まず、この世界の人類が3種類...エルフ、人間、獣族とあるのはなぜだと思う?」
「それは...見た目の差、ですか?」
「あぁ、それもある意味正解だ。正確には言うには...魔力の適応力の差だ。適応能力高かった者がエルフとなり、中間が人間、低いものが獣族となった。だが...魔力量で言えばその逆となるんだ。適応能力の低い順に魔力を多く貯蓄できるようになる。...魔力というものは厄介でな、勝手に体内に溜まっては発散しないと体が乗っ取られるんだ。獣族は適応力が低いのにも関わらず多く体に貯蓄してしまう...そして魔力が暴走し自我を失う...それが魔力暴走さ。...はぁ、何百年も前に魔王が来なければ...こんな事にもならなかったのにな」
「魔王...でも、確かその魔王は勇者によって討伐されたんですよね?なのになんで魔力は残って...」
「...勇者?キミもしかして...あの教団の信徒なのか?アリアはああいうの嫌うと思ってたんだが...」
「?教団って...なんのことですか?」
「...知らないのか?最近出来た邪教徒の事さ。魔王を倒したのは勇者様だと言い回る奇妙な集団さ。歴史書を少し読めば女神様が降臨したことぐらい分かるはずなんだがな」
教団...の事はよく分からないが、話には少し聞き覚えがあった。確か...この世界に来て間もない頃、師匠に教えてもらった神話の話だ。魔王が現れた際に女神が降臨し、悪を滅した...が、魔力の根源までは断ち切れなかった、と言った話だ。でも...あくまでも神話で、事実では無いはずなのだが...
「まぁ、信者じゃないならいいのさ...あそこはいい噂を聞かないからな。この前も...隣国で暴動が起きたそうだ。関わらない方が身のためさ」
ーーー
「隠れてないで、出ておいで?獣は嫌いだけど...猫ちゃんは可愛いから嫌いじゃないよ?」
路地裏で白兎の服を着た少女が背後に隠れる猫に呼びかけた。
「...かなり魔術を重ねてたんですけどぉ...あなたの目は誤魔化せないのですねぇ」
「アハ!結構従順じゃん!アンタ、あの裏切り者についたのかと思ったけど...もしかしてあれ、演技だった?あんなににゃんにゃん鳴いてたのに?」
「...あのポーチは何のつもりなんですかぁ?コハクはもう、あなた達とは無関係のはずなんですけどぉ...」
「あれ?もしかして...アタシの質屋に来たのってただの偶然だったの?アタシ、てっきり分かってて来たのだと思ってた!違うならごめんね?アタシの作戦に巻き込んじゃって。でもアンタのお陰でアタシ、昇進しちゃった!」
「...」
「どうしたの?黙っちゃって...もしかして、責任感じてるの?アハハ、アンタも結構可愛いところあるんだね?アタシてっきり見た目だけだと思ってたよ。...ねぇ、もっかいアタシ達の仲間にならない?やっぱり1匹ぐらい猫がいた方が癒しになると思うんだよね〜!」
「お断りするのですよぉ...コハクはコハクの居場所を見つけたのでぇ...なぜあなたが蛇さんのことを裏切り者と呼ぶのか分かりませんが、手出しするなら容赦しませんからぁ...」
「アハハ、怖い怖い!安心して?裏切り者には少し夢を見てもらっただけだから...これから暫くは手を出さない!約束!またこの前みたいに捕まるのも勘弁だからね」
そういうと少女は姿を消しどこかへ去って行った。
コハクは追おうか迷ったが...とりあえず魔女の所へ戻ることにした。




