犯人
「て、停電?!これじゃあ中の様子が…!」
ガラス越しに見えるカジノが、突然停電下のか全く中が見えなくなった。そして、同じくバーに居た客や店員も困惑していた。
「...これはぁ...停電じゃないのですよぉ...恐らく隠蔽魔法の目眩しなのですよぉ...」
「それなら師匠達が危ないんじゃ...!」
1分も立たないうちに、再び光が戻り中の様子が伺えるようになった。
師匠はいたが...白色のバニーを着た少女とミリアが居なくなっていた。
「大変なのですよ!ミリアが犯人と思わしき少女を追いかけて行ってしまいました!私達も追いましょう!」
「...!は、はい!」
「コハクも着いていくのですよぉ〜!」
慌てた様子で師匠がバーへ来て、出口へ向かっていった。僕らもその後を追って走る。
「お、お客様?!お支払いと衣装の返却を──」
「お金はバーにまとめて置いてあります!衣装は...また後日返しに来るのですよ!」
「...仕方ありませんね、また後日、追加料金を支払ってくださいね〜!」
店を出て、路地裏を迷路のようにして走る。恐らく師匠はミリアの残した魔力を辿っているのだろう。
しかし...師匠はあの店の衣装を着たままなので、かなり危うい見た目になっていた。
「し、師匠!その服じゃマズイので、これを!」
とりあえず自分で羽織っていたジャケットを渡しておいた。
そして、数分走り...行き止まりへと辿り着くと、ミリアが少女を捕まえて待機していた。
「ちょっと、暴れないでよ...あ、先生!捕まえたよ!」
「ん゛ん゛〜!!!ん゛〜!!」
白いバニーを着た少女は...ミリアに羽交い締めされ、口元は魔術を唱えられないようにハンカチで抑えられていた。
「頑張りましたね、ミリア。───、──、──。...魔術阻害をかけました...もう、そのハンカチを外しても良いですよ」
「ぷはっ...はぁ...早く、離してよ!」
「貴方...お名前をお聞きしても?」
「.....嫌。異種族なんかに教える名なんてない。...特に蛇のアンタにはね」
「...なるほど、そうですか。カナメ、お願いします」
「は、はい。.....あの、お名前を教えてくださ──」
「可哀想に。手下にされてるなんて.....そんな蛇なんか裏切って、私と一緒に世界を救おうよ。きっと...1度の過ちは勇者様は許してくれるから」
勇者...その言葉を聞いた途端、師匠が少し動揺したような様子だった。
「勇者...なぜ、その存在を...知っているのですか.....?」
「そんなのアンタに教えるわけないじゃない、大体...」
「喧嘩もいいですけどぉ...目的を見失ってはいけませんよぉ〜、コハク達はぁ、お姫様のお財布を取り返しに来たんですよねぇ〜?」
「...そうですね、カナメ。私じゃ無理そうなので、頼みました」
「えっと...その、王族の盗まれた財布を返してもらいに来たんだけど、返してもらってもいいですか?」
「...アンタはこっちに来る気は無さそうね、...はぁ、渡すから解放してよね。こんな獣達に囲まれてたら匂いが移っちゃう...」
少女が足で地面を叩くと、その叩いた箇所から財布が飛び出てきた。これは恐らく転移魔術の1種なのだろう...
「ミリア、解放を。...あなたの目的は分かりません。ですが...もしも私達の邪魔をするなら容赦はしませんよ」
「...たったこんな小娘である私の魔術を見抜けなかったアンタが...勝てるとでも?まぁいいや。次会う時は...人形にでもなってる事を祈っとくよ」
そう言って、少女は去って行った。
「本当に、見逃してよかったんですか?何か少しきな臭いというか...師匠?」
「.....すみません、少し考え事をしていました。今日は...帰りましょうか。少し疲れてしまいました」
この後、衣服を返しに行ってから屋敷へ戻り、無事財布はユレシフラスの元へと帰った。




