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永遠が人間を捨てた日  作者: 十三番目
第二章 ネームド

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契約者 ─ Ⅴ


 第三施設の襲撃について話し合うため、永遠はシンと共に会議室を訪れていた。


 室内には、ギルとビルを除いたメンバーが集まっている。

 円卓に腰掛ける各々の隣には、契約者と思しき者たちが座っていた。


「今回はこれで全員ね。まずは、永遠ちゃんに私たちの契約者を紹介するわ」


 永遠が席に着いたのを確認すると、取りまとめ役であるセイが口を開いた。

 セイの隣には、中学生くらいの少年が座っている。


 黒髪と、前髪で隠れ気味な同色の目。

 褐色の肌をした少年は、どこか不機嫌そうな雰囲気をしていた。


「……マーシー。セイの契約者……」


「マーシーは恥ずかしがりやなの。そっけなく感じるかもしれないけど、根はとても優しいのよ」


 セイの言葉に、マーシーは気まずそうに視線を逸らしている。


「つっ、次は下名ですね。下名はルノと申しまして、フェルさんの契約者をしております……!」


 フェルの隣には、二十代後半くらいの女性が座っていた。

 眼鏡をしており、身体は緊張で小刻みに揺れている。


「ルノはいつもこんな感じ。まあ、やる時はやるタイプだから心配しなくていいよ」


「はわ……っ!」


 思わず口元を押さえたルノは、感激した様子でフェルを見つめている。

 ギルがいないため、次は永遠の番だ。

 回ってきた順番に、自ずと視線が集まった。


「永遠です。最近、シンの契約者になりました」


 ぺこりと下げた頭を戻すと、笑顔のティラと目が合った。

 永遠への反応はそれぞれ異なっているが、好意的なものが多いようだ。


「ティラちゃんが言ってた通りだねぇ。可愛い女の子だ」


「でしょ」


 自慢げに応えるティラの隣で、のほほんとした青年が永遠に声をかけた。


「ぼくはラニーって言います。ティラちゃん、ずっと女の子の友達を欲しがってたんだぁ。仲良くしてあげてね〜」


 セイやルノも女性だが、それとは違うのだろうか。

 不思議そうな顔をする永遠に、ルノが説明を付け加えている。


「とっ、永遠人は年齢が不詳なので、相手を外見で選ぶこともあるそうです。下名も含め、契約者の女性は全員、成人していますので……!」


「そうそう〜。契約すると不老になるけど、見た目は契約時点のもので維持されるからねぇ」


 ルノとラニーの話から推察するに、ティラは自分と近い外見年齢の者を求めていたらしい。

 理由は分からないが、永遠はティラのお眼鏡にかなったのだろう。


「ギルは契約者の体調不良。ビルは他の要件を任せている関係で、今回は不参加よ」


「第三施設くらいなら、あたしたちだけで充分でしょ」


「そうね。本拠地の際には動けるよう、今は休んでいてもらいましょう」


 自信を覗かせるティラに、セイが肯定を返す。

 セイから目配せを受けたフェルが、作戦について語り出した。


「僕とルノは施設の近くで待機。見張りと、施設外に出た実験体の除去を担当する。ティラとラニーは内部の実験体の対処。その間に、セイとマーシーが深部へ向かう。永遠人の身体を回収するまで、施設の人間は生かしておいて。ひとまず、シンは永遠とティラたちのサポートに──」


「身体の回収は、僕と永遠で行う」


 異様な空気が漂った。

 永遠を除く誰もが、驚きと動揺を抱えている。


「永遠はまだ契約したばかりだよ。いくら何でも無茶だと思う」


「これは提案じゃなくて決定事項だ。深部には、僕と永遠で向かう」


 さらに言葉を続けようとするフェルを、セイが手で制している。


「シン、本当にそれでいいのね?」


「あの程度の施設、問題にもならないよ。それに──確かめたいことがあるからね」


 永遠を映したシンの目が、ゆるりと細められる。

 状況を把握できていない永遠を視界に収めると、シンは冷ややかな表情を一変させた。


「分かったわ。私とマーシーは、ティラたちと共に施設の内部を担当しましょう」


「はあ……了解。それなら、実行は明日の日没でどう?」


 諦めた様子のフェルが、円卓をぐるりと見回した。

 反対意見が出ないのを確認すると、フェルは「僕からは以上」と口にし、セイに会議の進行を戻している。


「決まりね。明日の日没に、第三施設への襲撃を開始するわ」


 セイが会議の終わりを告げたことで、皆一様に席を立っていく。

 前回と違うのは、それぞれが自らの契約者と寄り添っていることだろう。


 心配そうに永遠を見つめるティラの傍で、ラニーがゆったりと手を振っている。

 気がつくと、室内には永遠とシンだけになっていた。


「ねえ、シン。確かめたいことってなに?」


 永遠の問いかけに、シンが微かに笑んだ。

 妖しく光る赤い瞳は、鮮やかな血のようにも、深く輝く宝石のようにも見える。


「そのうち分かるよ」


 シンの指が永遠の銀糸を避け、目尻に当てられた。

 反射的に閉じた瞼の上を、親指がそっと撫でていく。

 ぱちりと瞬いた瞳は、透き通る青空のようで。


 シンはもう一度、永遠の目尻を優しくなぞった。


 

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