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私はサンタクロース

作者: 朝顔

「あ〜あ、とうとう年末かぁ〜」

 加代は溜め息を吐く。



 梅野加代25歳、事務職。彼氏いない歴、年齢と同じ。

 大学を卒業後、大手商社に入社して真面目に働いた。

 その為、貯金はそれなりに蓄え将来の備えはバッチリ何だが……ただ一つ、将来のお相手だけがいないのである。

 真面目な性格でそこまで社交的では無い加代は、昔から友達もそこまで多くは無かった。

 加代自身、クラスメイトとおしゃべりに興じるよりは1人静かに本を読むのが好きだった事もあり、対人スキルも高くはない。

 そのせいで一旦すれ違いが起きると、そのままその人とはサヨナラする事はよくあるのだ。



 そんな訳で、加代は10代の頃こそ結婚して幸せな家庭を築く、という事に憧れていたが……20代も半ばを過ぎた今なお男っ気など皆無な状況に夢もすっかり醒めてしまった。

 幸い1人で生きていける経済力はある。

 そんな加代は1人で生きていく決心をした。














 な〜んてね!!

 というのは表向きの話。

 実は私には誰にも言えない秘密があるのだ。

 その為には他人に自分の周囲をあんまりウロチョロされるのは困るんだよね。付かず離れず適切な距離を保ちつつ冷静に人間観察をしなきゃいけないし。

 それで、そんな私の秘密は何って?

 勿体ぶらずに教えろ??

 んもう、せっかちねぇ……

 じゃあ、特別にアンタだけにこっそりと教えてア・ゲ・ル(^_-)-☆



 実は私、現代のサンタクロースなのです!

 本名はカージョリーナ・メーノ。とある国から夢と希望の種を蒔きにやって来た、駆け出しのサンタクロースなの!

 どう? 驚いたでしょう?

 え? 異世界ファンタジーの読み過ぎだって!?

 そんな事をほざいたアンタ! アンタにプレゼントは無しだからね!?

 人の話は最後まできちんと聞きなさい!!

 サンタクロースと言っても、アンタたちが想像するようなサンタクロースじゃないの。

 アンタたちが想像するサンタクロースって……真っ白なお髭を生やし真っ赤な衣装で、背中にプレゼントを入れた袋を背負った恰幅の良いおじいさんでしょ? トナカイに引かせた空飛ぶ(そり)に乗って、良い子の所にプレゼントを持ってくる、さ。

 そんなのが本当に存在する訳無いじゃない。

 いたら私が是非とも会いたいわよ!!

 第一、不法侵入で警察に捕まっちゃうって。

 それに良い子かどうかなんて、一体どうやって判断するっての?



 ンンン、コホン! 失礼。つい話が脱線してしまったわ。

 つまり、私が言いたいのは……アンタたちが想像するようなサンタクロースは存在しないけど、違う形でサンタクロースっていうのは確かに存在するのよ。

 子供たちにプレゼントを配って回るサンタクロースは存在しないけれど、大人にプレゼントを贈るサンタクロースは存在するのよ?

 といっても、モノではないんだけど、ね?



 どういう事かというと……

 その人に何か夢や願いがあって、真摯に直向(ひたむ)きに努力した人に“成果”や“運”を贈るのが、現在のサンタクロースの役割なのよ。

 え? 何ソレ? って?

 う〜ん……この辺りは企業秘密なんだけど……

 サンタクロースって、実は3人1組のチームの通称なんだよね。

 1人は予め人間社会に溶け込んで、プレゼントを渡す候補を選ぶ役。これは人数に制限は無いからこの人! っていう人にドンドン印をつけていくの。これは主に駆け出しの仕事ね。

 もう1人は印をつけられた人を一定期間観察して候補を絞り込み、どれくらいの“成果”“運”をプレゼントするのかを決める役。このポジションは厳しい試験を幾つもくぐり抜けた精鋭たちが受け持つポジションよ。いわばサンタクロースの花形ね。

 最後は最終的に選ばれた人たちの元へプレゼントを運ぶ役。この役がアンタたちが思い描くサンタクロースに一番近いよね? これは駆け出しを卒業し、花形以外が付く役目ね。だからこのポジションが一番人数が多いのよ。

 で、私は最初の候補を選ぶ役、っていう訳。



 因みに……候補に選ばれた人には試練が課されるからご注意よ。で、試練を与えるのは花形ポジの人たちね。

 え? 何でそんな事をするのか? って?

 そりゃアンタ、何の対価も無く望みのモノが手に入る訳無いでしょ?

 買い物も価値の高い物ほど、お値段が張るでしょ?

 それと一緒。

 夢や目標が大きければ大きいほど試練も規模が大きくなるってものよ。

 その代わり、試練に打ち勝った候補にはボーナス付きでプレゼントを貰えるわ。

 しかも、クリスマス限定なんてケチな事は言わずに1年365日いつでもプレゼントを受け取れるのよ!

 どう? アンタもちょっとは頑張ってみよう、って気になった?

 


 後はね〜、人間に候補の印をつけるサンタクロースは私だけじゃないわよ。

 世界中、あちこちに私みたいな駆け出しのサンタクロースがいるわよ。

 まあ、当たり前の話よね。それこそ、ありとあらゆる街や村なんて小さな集落にだってサンタクロースは潜んでいるわよ。

 勿論、アンタが住む町にもね。



 ちょ〜っと、おしゃべりが過ぎたかしら?

 じゃ、私はそろそろお役目を果たしに行くわ。

 ま。そういう訳だから、アンタも頑張りなさいな。

 さ〜て、今日は良い候補がいるかな〜?

 最近、これだ! って人、中々いないのよねぇ……

 それじゃあ、私はこれで!

 アンタも頑張って、夢を手に入れて頂戴ね!!

  

 


 

 


 


 

 

  

 

 

本作をお読み頂きありがとうございました。

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