表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
回生の果て  作者: 壊れた靴
実地調査
9/40

 翌朝、俺たちは昨日と同じく森の入口に集まった。集合時間前ということもあり、部長と副部長の姿はまだない。

 舞耶が「副部長、どんな服で来るんでしょうね?」と笑顔で言うと、「いつものに一票」と亨が笑った。

「まさかぁ。あんな恰好でこんな日差しの中を動いてたら、死んじゃいますよ?」

「森の中だし、大丈夫だろ。というか黒魔女先輩だったら大丈夫だろ」

 亨の言葉に「そうかも」と舞耶が呟く。確かに、副部長であれば気候など意に介さないのではないかとも思う。

「結局、副部長に来てもらって、どうするんですかね? ダウジングとか?」

 舞耶の言葉に苦笑する。いくら何でも、とは思うが、可能性を捨てきれない。

「ダウジングって何だ?」と尋ねてきた亨に、「L字の棒やら、紐を付けた水晶やらを持って歩き回って、物を探すというものだ」と答えると、「ああ、アレか」と頷き「黒魔女先輩なら出来てもおかしくないな」と笑った。

「副部長と一緒に、このような調査を行ったことはないのですか?」

 由人の質問に「ああ」と頷く。

「この一年ではないな。そもそも部長と副部長とが揃って行動するところを初めて見る」

「あの部長と黒魔女先輩じゃ、噛み合わないことは間違いないだろ」と亨が笑い、由人も苦笑した。

 集合時間を迎えると同時に、部長が副部長を伴って現れた。副部長はやはりいつもの改造制服で、荷物は全く持っていない。この暑さの中で汗もかかず、いつも通りの無表情である。

「皆! おはよう!」

 部長の挨拶にそれぞれが返した。部長の背負うバックパックは昨日より膨らんで見える。

「それでは行くぞ! 今日こそ竜宮に辿り着くのだ!」

 部長と副部長は並んで先頭に立って歩き出した。

「副部長、荷物はないんですか?」

 舞耶の質問に、副部長は部長の背負うバックパックを一瞥した。やはりである。

 森に入ってすぐ、副部長が道を外れる方向を指さした。部長と副部長はそちらに向かって歩き出す。

 二人に付いていきながら、舞耶は「あの、副部長、そっちに進む、何か根拠とかあるんですか?」と歯切れ悪く尋ねる。

「人体模型が見つかったって連絡があったでしょぉ? その人に会って、どこで見つけたのか聞いてきたのぉ」

 副部長は「学校もどんな人か知らないみたいでぇ、大変だったんだからぁ」と呟いた。どのように探し当てたのか、大変だったのは間違いないだろうが、相手にとっても大変な出来事であったのも間違いないだろう。

「でも、今探してるのは、人体模型の場所じゃないですよ?」

 舞耶が当然の疑問を口にするが、副部長は「そうねぇ」と首を傾げ「でも、全く無関係ではないと思うのよねぇ」と続ける。

 部長は「どうしてそう思うんだ?」と尋ねたが、副部長は「なんとなくねぇ」とだけ答える。部長は肩を落として溜息を吐いた。

 傍から見たら突拍子がないように見えても、何かしらの根拠を持って調査にあたる部長にとっては、副部長の勘に頼る状況は許容しがたいのだろう。ダウジングの方が幾らかマシだったかもしれない。

 亨が「そういえば」と口を開いた。

「黒魔女先輩は、竜宮はあると思ってるんすか」

 副部長は「あると思うわよぉ」と軽く答えたが、その答えに俺はやや驚かされた。

 部長が入部した時から、オカ研全体が竜宮探しを主目的として活動していたらしいが、少なくとも去年は、竜宮に関する活動の中で副部長の姿を見たことはなかった。

「そう思うなら、なんで竜宮関連の活動には参加していないんですか?」

「闇雲に探して見つかるものでもないからぁ」

 それはそうではあるが。

「今回参加したのは、見つかると思ったからですか?」

「そうねぇ。そろそろかなぁと思うのよねぇ」

 そろそろとはどういうことだろうか。時期が関係するとでも言うのだろうか。何と聞けばよいか迷っているうちに、副部長が呟くように言葉を発した。

「場所は関係ないのかもしれないのよねぇ。そもそも場所ではないのかもぉ」

 副部長の言葉に、由人がやや考えるそぶりを見せて尋ねる。

「竜宮とは場所ではなく、現象のようなものかもしれないと?」

 副部長が「そう思うのよねぇ」と返すと、部長は「ふむ」と唸った。

「そうであれば、俺が竜宮に行った場所を探しても何もなかったのも頷けるな」

 部長は納得したように頷いているが、亨が声を上げる。

「だとしたら、そもそも今回の探索でも何もないってことになるんじゃないすか?」

 部長は「うむ」と呟いて俯いてしまうが、副部長はそれを気にする様子もなく口を開いた。

「この森を調べるのは間違っていないと思うのぉ」

 いつものように、妙な説得力を伴う副部長の言葉に、部長は顔を上げた。

 それからしばらく歩いた頃、副部長が立ち止まった。

「この辺りだそうよぉ。何かないか探してみてねぇ」

 周囲を見回すが、何の変哲もない景色である。何か見つかるだろうか。

「よし! それでは皆! それぞれはぐれない程度に散開して探索してくれ!」

 部長の言葉に従い、それぞれある程度の距離をとって周囲を探索するが、やはり特に変わったところは見当たらない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ