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回生の果て  作者: 壊れた靴
回生の果て
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「それで、何をすればいいんだ?」

「竜宮を見つける必要がある」と、亨の質問に苦笑して答えた俺に、「時間の流れどうこう言ってたし、そんな気はしてたけどな」と亨も苦笑を返した。

「竜宮が、現実との接点ということか?」と尋ねてきた部長に頷く。

「製作者の意図していない現実との違いが、竜宮らしいです。部長が行方不明になったのが、現実とこの世界との最初の差異だと」

 部長は大きく頷いた。

「なるほど。行方不明になったあの瞬間、俺は現実世界に行っていたとか、それに近い状態にあったということか」

「で、竜宮はどこにあるんだ?」

 亨の言葉に首を振る。

「俺の記憶では、竜宮を見つけられたことはない」

「けど、この世界が繰り返してるってんなら、今回が駄目でも、そのうち見つかるんじゃないか?」

「それも、恐らくはあまり猶予はない」

「どういうことだ?」

「鳳だ」と答えた俺に、亨が肩を竦める。

「やっぱりあの転校生にも、何かあるのかよ」

「鳳は、シミュレータを止めるために作られた存在らしい」

 俺の答えに亨は溜息を吐いた。舞耶が慌てたように声を上げる。

「ちょっと待ってください! もし、そうなったら、どうなるんですか?」

「俺たちの存在も消えるんだろ? 現実には何の影響もないだろうけどな」

 確認するように俺を見る亨に頷きを返す。

「で? そうならないためにはどうしたらいいんだ?」

「シミュレータを止めるのにも、竜宮を利用するらしい」

「俺たちが先に見つけるか、鳳が先に見つけるかってことか」

 亨の言葉に頷き、部長に向かう。

「部長は、さっきまでと同じように、鳳と森での竜宮探しの調査を進めてください」

「つまり、森には竜宮はないと?」

 落胆を隠し切れない部長に頷いて亨を見る。

「まさか、いつかの俺の仕業ってことか?」と笑う亨に頷くと、亨が肩を竦めた。

「そういうことらしいっす。先輩、すみません」と亨は苦笑しながら部長に頭を下げた。

「部員のためだ。気にするな」と部長が首を振り、「だが、竜宮に行く段取りが着いたら、教えてくれよ」と苦笑した。

 部長に頷く俺に、亨が肩を竦めた。

「けど、現実と最も乖離してるのは、先輩かもしれないっすよ? こいつの言う統合に成功したら、下手したらほぼ別人になっちゃうんじゃないすか?」

 部長は大きく頷くと、不敵な笑みを浮かべた。

「竜宮に行くまでの俺は、親の言うことに唯々諾々と従っていただけの人間だったからな。あんな人間になるなら、今のほうが良いと断言できる」

「そっすか」と亨が笑った。

「本当の竜宮はどこにあるんですかね?」

 舞耶の質問に首を振る。正直見当がつかない。

「この学校の七不思議ってぇ、最初からあったのぉ?」

 唐突な副部長の質問に、記憶を辿り、首を振る。この学校の七不思議が出来たのは、夏音が消えてからのことだ。

「七不思議もぉ、この世界を創った人によるものなんでしょぉ?」

 副部長の言う通り、七不思議も夏音によるものなのは間違いない。だが『異界の教室』と『巡らずの鞄』だけは、この夏に夏音と会話した覚えがない。

 『巡らずの鞄』が、亨の悪戯を受けてのものだとしたら。

「『異界の教室』はぁ、竜宮を誘発させる意図があるのかもぉ」

 俺の考えを先回りした副部長に頷く。

「じゃぁ、私たちはその調査を進めましょうかぁ」

 この世界についての記憶がないはずの副部長の提案に、妙な信頼を覚えながら頷いた。

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