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回生の果て  作者: 壊れた靴
夢現
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 人体模型を載せていた台車について、副部長に尋ねたところ、部室に置いておいてよい、と言われたため、台車のみを部室に戻す。

「誰にも見つからなかったか?」と尋ねてきた部長に頷くと、安心したように頷いた。

 改めて屋上に向かう途中、廊下の窓から外を眺めながら、亨が声を上げた。

「この時間じゃ、まだ全然明るいっすね」

 亨の言葉通り日は高く、およそ霊が現れるような雰囲気ではない。副部長は「そうねぇ」と頷くだけだった。

 亨は肩を竦め、「ホントに霊なんか出るんすか?」と副部長に尋ねるが、「そう思うわよぉ」とまた頷くだけだった副部長に、亨は苦笑した。

 屋上に出る扉の前に着くと、副部長は至って何気なく扉を開けた。

「鍵、掛かってなかったんですかね?」と尋ねてきた舞耶に、苦笑して肩を竦める。

 屋上に出る。強い日差しに一瞬目が眩んだ。

 屋上の景色を見た瞬間、強い焦燥感を覚える。何かが思い出せそうで、思い出せない。

「気持ちのいい場所だな」と伸びをする亨に、「やっぱり亨先輩は高い所、好きなんですね」と舞耶がわざとらしく驚いた様子を見せる。

「先輩には敬意を払えよ?」と笑う亨に、「敬意を払うべき人には払います」と舞耶が笑った。亨たちの他愛無いやり取りに、既視感が強まる。

「先輩? 大丈夫ですか?」

 表情に出ていたのか、舞耶が俺の顔を覗き込む。

「いや、ここに来たら、妙な違和感が強くなった気がしたんだ」

「昼に言ってた、思い出さなければいけないことがあるっていう?」

 頷くと、亨が「別にどうってことない屋上だけどな」と笑い、亨の言う通りだと苦笑する。

「違和感はともかく、霊なんか出そうにないけどな」

 亨が笑いながら、いつの間にか俺たちからやや離れ、手摺の前に立っていた副部長を見る。

 副部長は振り返ったが、特に何を言うこともなかった。

 その隣に、こちらに背を向け、手摺に腕を乗せた女生徒の姿が見える。

 また、既視感が強まった。

「副部長の隣に、誰かいるよな?」

 尋ねる俺に、亨も舞耶も訝しむように首を振る。

「何言ってんだ?」

「誰もいませんよ?」

 俺の声が聞こえていたのか、副部長も無表情のまま首を振った。

 違和感と同時に、何故か、予想通りだったな、という感覚も覚えた。

 深呼吸をして、女生徒に向かう。

 手を伸ばせば、彼女に触れられる位置まで歩く。

 彼女は振り返り、泣いているようにも見える笑顔を残し、姿を消した。

 亨と舞耶が駆け寄ってくる。

「なんか見えたのか?」

 亨の声に振り返って頷く。

「先輩? 泣いてるんですか?」

 舞耶の言葉に頬を拭う。気付かないうちに、涙が流れていたらしい。

 俺は、全てを思い出した。

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