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回生の果て  作者: 壊れた靴
夢現
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 午後の授業を全て終えると同時に、鳳は席を立ち教室を出ていった。どことなく緊張した雰囲気が漂っていた教室にいつもの空気が戻り、そこかしこで鳳の噂話を始めた。

 亨は席を立つと、苦笑しながら俺に近付いてきた。

「お疲れ。俺の言っていたことが分かっただろ?」

 昼休みの後も何度か話しかけたが、ろくに返事ももらえなかったことを思い出す。

「誰に対してもあんな感じだったのか?」

「朝からあんな感じだったな」と亨は頷き、「緊張してるって感じでもなさそうだけどな」と肩を竦めた。

「まぁ、そういう人間もいるだろ」

 苦笑しながら席を立つ。

「俺はオカ研に行くが、お前も来るんだろ?」と歩き出した俺に、「はいはい」と亨が付いてきた。

 部室の扉を開くと、部長と副部長の他に、鳳が席に座っていた。それだけでも十分に予想外だったが、何故か部室の隅には人体模型が立っている。

 笑顔の部長が、俺たちを迎えた。

「君らのクラスメイトらしいな。我らがオカルト研究部の新入部員だ」

 鳳は無言のまま、俺たちに軽く頭を下げた。

 混沌とした状況を受け止められず、扉を開いた状態のまま、鳳につられて頭を下げる。隣に立つ亨も同じように無言で頭を下げた。

「先輩! お疲れ様です。そんな所で何してるんですか?」

 笑顔の舞耶が廊下を駆け寄ってきた。俺の隣に立って部室の中を見ると、怪訝そうな顔を浮かべて俺を見る。

「新入部員だそうだ。俺たちのクラスの転校生の、鳳由人だ」

「確かに美形ですね」と囁いた舞耶は、「それより、あの人体模型は何です?」と続けた。

 俺は「さぁ?」と肩を竦めた。

「君らもいつまでもそんな所に立っていないで、中に入ったらどうだ?」

 笑顔のままの部長に従い、それぞれが席に着くと、部長は立ち上がった。

「全員揃ったところで、改めて紹介しよう。新入部員、鳳由人君だ。竜宮に興味があるとのことだ」

 部長が「自己紹介を頼む」と鳳を見る。

「鳳由人です。よろしくお願いします」

 鳳は表情なく頭を下げ、部長は「うむ。よろしく」と大きく頷いた。

「よし、では活動を始めよう。今日のメッセージの件だが」

 舞耶が部長の言葉を遮るように手を挙げた。

「その前に、あの人体模型は何ですか?」

 部長は眉を顰め、副部長を見た。

「この部の活動に関わることねぇ」

 珍しく読書をしていなかった副部長は、いつも通りゆっくりとした口調でそう言うと、「私の話は後にするわぁ」と部長を見た。

 部長は頷くと、鞄から一枚の紙を取り出し、「読んでみろ」と、机の上に広げた。

 全員で紙に書かれた内容を確認する。

「この辺りで、竜宮が見つかったことがあるってことっすか?」

 亨の言葉に、部長は「その通りだ」と笑いながら頷く。

「なんか古臭い新聞記事みたいっすけど、どこで見つけたんすか?」

「分からん。いつの間にか鞄に入っていた」

 部長の呟くような言葉に、亨は「誰かのイタズラじゃないすか?」と肩を竦めた。

「とにかく、今年の夏休みはこの記事をもとに調査をするぞ!」

 部長は声を上げたが、副部長はそれを遮るように「ちょっと待ってねぇ」と手を挙げた。

「私からも言いたいことがあるのぉ」

 部長はまた眉を顰めると、副部長を見ながら腰を下ろした。

 副部長は席に着いたまま、人体模型を見る。

「この学校の七不思議の調査に協力してほしいのぉ。特に、貴水くんにはねぇ」

 唐突に名指しされたことに驚いていると、亨が「この学校に七不思議なんてあったんすね」と副部長に尋ねた。

「そうねぇ。私も今日知ったのぉ」

「どういう意味ですか?」と舞耶が訝しむように尋ねるが、副部長は「言葉通りねぇ」と呟くだけだった。

「その七不思議の調査に、何で俺の協力が必要なんですか?」

「舞耶ちゃんに聞いたんだけどぉ、今日、倒れたんでしょぉ?」

 倒れたというほどではないが。舞耶を見ると、ごめんなさい、というように笑いながら両手を合わせた。

「今朝は体調がよくなかったのは確かですが」

 それと七不思議にどんな関係が、と続けようとした俺に、副部長は「きっと貴水くんに関係すると思うのぉ」と俺を見る。

 副部長は「無理強いはしないけどぉ」と言うと、話は終わりだというように部長を見た。

 部長は立ち上がると、それぞれの顔を見回しながら声を上げた。

「そういうことだ。君らには、竜宮か七不思議、どちらの調査に加わるか、考えてもらいたい」

「僕は竜宮探しに加わります」

 鳳は即答し、部長は満足げに頷いた。

 俺と舞耶と亨は顔を見合わせる。

「どうすんだ? お前も竜宮が気になってるんだろ?」

「けど、副部長が先輩を名指しするって、よっぽどのことだと思うんです」

 竜宮が気になるのは確かだが、部活へ参加するようメッセージを送ったことといい、調査の協力を求めることといい、副部長らしくない行動がどうしても引っかかる。

「俺は、七不思議の調査に加わろうと思う」

「私は先輩に付いていきます!」

「七不思議ねぇ。ま、俺もそっちにするか」

「亨先輩は竜宮の方がいいんじゃないですか?」と笑顔ながら冷たく言う舞耶に、「黒魔女先輩があれだけ言うんだ。何かは起こるだろ?」と亨が笑った。

 副部長は「決まったようだな」と頷くと、「専念する必要はない。いつでもこちらの調査にも加わってくれ」と俺たちを見回した。

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