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回生の果て  作者: 壊れた靴
夢現
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「顔色も良くなったみたいですね。安心しました」

「そんなに酷かったのか?」と苦笑すると、亨と舞耶が同時に頷いた。

「素直に学校休んだ方がよかったんじゃないか?」

「私は、先輩の寝顔見れたんで、来てくれてよかったですけど」

 亨が肩を竦め、舞耶は「冗談ですよ」と笑い、「半分は」と呟いた。

「でも、朝は本当に、学校なんか休んだ方がよさそうなくらい、体調悪そうでしたよ?」

「学校に来なければいけないような気がしたんだ」

「まさか、部長のメッセージの件ですか?」と舞耶が笑う。

「そういえば、朝にも竜宮が気になるとか言ってたな」

 亨の言葉に、舞耶が驚いたような表情を見せる。

「ホントに、そうなんですか?」

 苦笑しながら頷く。

「最近、何か思い出さなければいけないことがあるような、妙な違和感があるんだ」

「思い出さなければいけないこと? それが、竜宮に関係してるとか?」

「なんとなく、そう思うんだ」と頷く。舞耶は「なんでしょうね?」と首を傾げる。

「宗吾先輩に影響されただけだろ」と亨が笑った。

「でも、今朝は副部長からもメッセージありましたよね? 私、副部長からのなんて、初めて見ました」

「そうそう。俺も今日はオカ研に出るから」と亨が舞耶に言うが、舞耶は「部長と同じ件なんですかね?」と黙殺した。

「どうだろう。少なくとも俺が入部してからは、副部長が竜宮に関係することをしたことはないからな」

「気になりますよね。何かとんでもないことかも」

「放課後になれば分かるだろ?」と亨は肩を竦め「それより、お前は転校生のこと気にした方がいいな」と笑った。よほど印象的な転校生らしい。

「こんな時期に転校生ですか? 不思議ですね」

「だろ? しかも、なかなかキャラの立ったヤツなんだ」

「そうなんですか。ちょっと会ってみたいです」

「見るだけにしておいた方がいいな。目の保養にはなるから」

 亨が笑い、舞耶は「どういう意味ですか?」と尋ねる。

「男なんだけど、性別が分からないくらい、凄まじい美形なんだよ」と亨は答えるが、舞耶は興味がなくなったように「ふーん」と返すだけだった。

 その時、保健室の扉が勢いよく開き、志津田が入ってきた。

 俺の顔を見るなり「貴水、大丈夫か!」と近付いてくる。

「朝より顔色良くなったし、大丈夫そうっすよ?」

 亨の言葉に、志津田は大きく頷く。

「そうか! 安心したぞ! 無理するなよ!」

 志津田はそれだけ言うと、忙しなく出て行った。

「保健室だってのに、相変わらず暑苦しいおっさんだな」と亨が笑い、舞耶が苦笑する。

 亨の言う通り、いつも通りの志津田のはずだが、何故か今日は違和感を覚えた。

「どうした?」と尋ねてきた亨に、「前からあんな感じだったよな?」と聞き返す。

「志津田か? そりゃそうだろ」と亨は訝しむような表情を浮かべた。

「そうだよな。気だるげな人だった気が、一瞬したんだ」と苦笑する。

「なんだそりゃ? 志津田とはかけ離れたイメージだな」と亨は笑った。

「先輩。ホントに大丈夫ですか? 無理はしないでくださいね」

 舞耶は本気で心配するような表情を浮かべている。「少し疲れているだけだ」と笑う。

 その後も保健室で過ごしていたが、昼休みが終わる頃、養護教諭が戻ってきた。元気になったのなら保健室を出ろ、という言葉に従う。

「それじゃ、放課後、オカ研で会いましょう」と笑顔で自分の教室に向かう舞耶と別れ、俺たちも教室に戻る。

 俺の席を見ると、亨の言葉通り、浮世離れしていると言える程の美形が隣に座っている。これほどの美形などに会ったことはないはずだが、何故か、初めて会うような気がしなかった。

「まぁ、頑張れ。広い心を持てよ」と笑って自分の席に着く亨に苦笑し、俺の席に向かう。

 俺が席に着いても、こちらに一瞥をくれることもなく前を向いている。一部の女生徒が遠巻きに眺めているようだが、本人は特に気にする様子もない。

「天野貴水だ。よろしく」

「鳳由人です」

 自己紹介した俺の方を向き、それだけ言うと、鳳はまた前を向いた。

 愛想が良いとは言えないが、緊張のためかもしれないし、亨の言っていたような、特徴のある性格というほどではないように思うが。

「教科書なんかは大丈夫か?」

 鳳は俺に反応することなく、前を向いたまま黙っている。

 初対面のはずだが、気に障ることでもあっただろうか、と亨を見ると、肩を竦めた。誰に対してもこのような態度だということだろうか。

 既視感を捨てきれない、鳳の整いすぎた横顔を見ているうちに、午後の授業が始まった。

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