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8. 花の国 次の国に出発!


 花の国に永住…。


 とても魅力的なお話だし、レグルスにとってはお母様と一緒に居られる事になるし安心よね。だけど…。


「ありがたいお話なのですが返事は保留ということにさせていただけませんか?」


「保留ですか?」


「はい。私は緑の国から出たことが無かったのでこの機会に世界中を旅してみたいのです。その後で花の国に永住したいと思ったら永住させてもらうというのはダメでしょうか?勝手な事を言ってますよね…」


 でも、やっぱり異世界一周は諦めきれない!


 転生して自由になったのだから自分の思うままに生きてみたい。この国にあったシャボ花のようなこの異世界にしかない物があるならそれを見てみたいし、花氷のようなここにしかないものも沢山食べてみたい!


 だから…この花の国は素敵だけど今は永住は出来ない。


「…分かりました。貴女様の気持ちはわかるような気がします。私もこの国から離れる事が出来ない立場です。もし、自由になれたのなら私も旅をしてみたいと考えた事がありますからね」


 少し寂しそうな表情を浮かべるフリージア殿下。きっと王族ということで制限されることも多いんだろうな。


「なので、この国でお帰りをお待ちしております!あっ、その前に各国にいるファンクラブの会員に呼び掛けて貴女様の旅が快適になるようにしておきますね」


 え…ありがたすぎます!


「いや…それよりも緑の国のファンクラブを一度ぶっ潰して私が作り直すほうが先かな。そうだな…そうと決まれば早く行動しなければいけないな」


 フリージア殿下から何だか物騒な言葉が聞こえているような気がしますがスルーします。


「隻眼聖女様、もっとお話をしていたいのですがやらなくてはいけないことが出来てしまいましたので失礼させていただきます。良い旅になることを祈っております」


 イケメンの満面の笑顔は眩しすぎます~!拝みたくなるような後光が見えるのは気のせいなのでしょうか。


「フリージア殿下。ありがとうございます」


 フリージア殿下は何度も立ち止まり、私の方に振り返りながら去って行きました。犬が散歩の時にご主人様確認する感じに見えたのは私だけなのかな。


「アイオラ様良かったですね。心強い味方ができましたね。因みにあの方はファンクラブの会長ですので先程言われていた事をすぐに実行できると思いますよ」


「え?!」


 隣国の王族が会長って…どうなのよ。


「そうだ!それよりも緑の国の追手を振り切る為に旅のルートを変更しませんか」


 たしか…前は大地の国に行くって言ってたんだったかな。


「馬車や馬で来られないように岩山を登る石の国に行く方が安全かと思うんですけどね」


 そうなのかな。確かに大地の国に行く道だと馬車や馬が通れる様に舗装された道があるってレグルスが言っていたから簡単に追い付かれそうと言われればその通りのような気がする。


「石の国って危険な道だって言って無かった?」


 前に聞いた話だと慣れていない人が登るにはかなり危険な岩山なのだと言われたと思うんですけど…それを登る?私は山登り初心者ですよ。


「危険ですが、アイオラ様なら怪我してもご自分で治せますよね?それに身体強化の魔法もできましたよね?それを使っていただければ大丈夫だと思います。そうですね…大地の国に到着するまでに捕まる方を選ぶか危険だが捕まる確率が低い石の国に行くかはアイオラ様が決めて下さい」


 それって始めから選択肢は決まっているパターンの質問じゃない?


「捕まりたくないので石の国に行きます」


「わかりました。では準備できたらすぐに出発しましょう。ロープ等必要な物がありますからね」


 ロープ…前世のロッククライミングを思い出した。まさかあんなに過酷ではないよね。前世テレビでロッククライミングをしている番組を見た記憶が甦る。画面を見ているだけでも背筋がゾッとしてチャンネルを変えたんだよね。高所恐怖症ではないけれど、あれはできれば避けたいな。


 だけど間の悪いことに緑の国にいる時に見た図鑑を思い出してしまいました。


 待てよ…確か石の国って高い石の山の頂上にある国だった!前世で見た水墨画の山みたいな絵だったので印象に残ったんだ。あの絵の通りだとすると…私の悪い想像は当たっているんじゃない!?


「レ、レグルスあのね、石の国ってドラゴンとかに乗って行くのは無理なのかな?」


 険しいロッククライミングを避ける方法を探ってみる。


 真剣にロープ選びをしているレグルスに甘える様に聞いてみる。


「どうされました?声がおかしいですね。風邪でもひかれましたか?体調が悪いのでしたら別の方法も考えますよ」


 私の甘えた声を理解しなかったレグルスは体調が悪いと勘違いしたみたいだ。だけど結果オーライだよ!私はロッククライミングはしたくない!


「ありがとう。できればそうして欲しいな」


 自分で自分の声に笑いそうになるのを堪える。


「そうですか…。少し乗り心地は悪いですが歩くよりは疲労が少ないかもしれないので我慢してくだいね」


 やった~!ロッククライミング回避!!!


 だけどドラゴンってそんなに乗り心地悪かったかな?わりと快適だったと思うんだけど…。


 少し疑問を感じながらもレグルスについていく。


「さあ、着きましたよ。これに乗って下さい」


「え!?これって…」


 目の前にいるのはドラゴン…ではなく大きなカエルだった。


「ロックフロッグという魔獣です。石の国にしかいない珍しい生き物なんですよ。石の国には空から入る事が出来ない様に結界が張ってあるのでこの魔獣に乗って山を登るしか他に方法は無いんです」


 そんな~!


 ロックフロッグの背中に大きな籠がついていて、どうやらその中に入って登るらしいです。


「ほら、早く乗って下さい!」


 レグルスが私を籠に入れて蓋を閉めました。中には椅子があり、目線の高さに少し隙間があって外の様子が見える様になっています。椅子には前世でいうシートベルトがついていてこの先の不安を煽っているようです。


 かなり揺れるということだよね…。


「では準備は良いですか?出発しますよ!」


 魔獣使いのおじさんが掛け声をかけるとロックフロッグが元気に飛び跳ね始めました。


「う、嘘でしょ~!!!」


 何度も飛び跳ねたり、岩山に張り付きながら移動します。脳みそが揺れて視界も揺れて…げ、限界です。


 結果…石の国に到着した時、私は意識を無くしてみたいです。


 もう絶対に乗らないと思ったのは言うまでもありません。


 











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