62. 雨の国 いざ次の国へ!
いつも読んでいただきありがとうございます。
雨の国編終わりです。
「おやまあ!えらく綺麗な鳥だね~。こんな綺麗な鳥を見たことがないよ」
ジウさんが精霊様が変身した鳥に見とれている。
「本当に綺麗ですね」
アイウさんもすっかり見いられているみたい。精霊様も褒められて嬉しそう。
「最後にこんな綺麗な鳥を見せてもらえるなんて…ありがとうね。本当に寂しくなるよ。この国に来たら必ず泊まっておくれ。待ってるからさ…」
ジウさんが別れを惜しんで涙ぐんでくれている。
昨日、精霊様を連れて帰って来てからレグルスと話し合った結果、この国を出ようということになったんです。元婚約者が側にいるのは危険すぎる!ってレグルスに言われちゃいました。
「沢山助けてくれてありがとうございました。皆さんが帰って来られるように私も宿の女将修行を頑張ります!」
この国に来た時より少したくましくなったアイウさんが言葉に詰まることなく話している。
「コロッケもこの国の名物になりそうだからね。アイオラちゃんが他国で雨の国のコロッケの噂を聞くことが出きるようになるくらい頑張って有名にするからね」
「楽しみにしています」
コロッケはあれから連日完売の大人気商品らしい。この国の人達に気に入ってもらえて良かったよ。この国のガイドブックを作るときには必ずコロッケを掲載しよう。…これって、えこひいきになる?
「アイオラ様、そろそろ行きましょう」
宿の外で待っていたレグルスから声がかかる。
「足止めしちゃってすまないね。色男のお兄さんも元気でね。アイオラちゃんを頼んだよ!」
"私の方が色男だと思うが…"
精霊様…変なところで張り合わないで下さいね。
外ではレグルスが静かに頷いている。…黙っていたら確かにイケメンなんだよね。一緒にいすぎて忘れてるけどね。
「お二人ともありがとうございました。とても楽しかったです」
久しぶりに、いっぱいお料理できたのが楽しかったからね。やっぱりお料理は楽しい!作るのも食べるのもね。
私は思いきり二人に手を振りながら宿を出た。二人は私の姿が見えなくなるまで手を振ってくれていた。
良い人達だったな。
「アイオラ様、気を抜かないようにしてくださいよ。あのバカ達がどこにいるかわかりませんからね」
「わかってる」
元婚約者は朝に弱くて朝の予定がある時は必ず誰かが部屋まで起こしに行ってたんだよね。今は早朝だからたぶん会うことはないとは思うけど…。一応は気を付けておきます。
"バカとは誰の事だ?"
そっか、精霊様は知らないから気になるよね。精霊様にこれまでの事を説明しながら歩きました。
"なんと!アイオラをふる男がいるのか!?価値のわからぬ奴だな~"
精霊様に褒められると照れますね。
"そういうことだったのですね"
"……その男はイケメンなのか?"
モコとキュートも興味があったのか会話に参戦してきます。モコはイケメンというワードにこだわっているみたいですね。
「王子ですからね。それなりにイケメンと言われる部類に入ると思いますよ」
私は思ったことがないけどね。
"ケッ…"
モコが口悪く悪態ついてます。なにその歩き方!足を外側に向けて出して歩いています。例えるなら新喜劇でチンピラ役の人が大股外歩きで歩いているみたいに見えます!
イケメンという言葉はモコにとってこだわりというよりも気に入らないワードみたいですね。
「アイオラ様、フードをしっかり被って下さい」
モコの歩き方を見て癒されていたら、レグルスが緊張した声で話しかけてきました。どうしたんだろう?
「前から歩いてくる男の顔に見覚えがあります。緑の国の王族専用の護衛です」
なんで会いたくない人に会っちゃうかな~!
でも認識阻害マントをつけているし見つからないでしょ。…と思っていたが、すれ違いざまに男から声をかけられた。
「おい、お前達止まれ」
私達の回りの空気がピリついた。えっ!バレた?
「何でしょうか?」
レグルスが私の前に出てきて対応してくれている。
「人探しをしている。マントを取ってみろ!」
偉そうな物言いの人だよね。ここは緑の国じゃないよ!
「マントを取るんですか?なぜそんな事をしないといけないのてしょうか?」
レグルスが反抗していますね。
「うるさい奴だな!良いから早くマントを取って顔を見せろ!探している奴じゃなければすぐに解放してやる!」
探している奴だから素直に応じていないんですよ!
私もレグルスもマントを取ろうとせずにただ立っていた。急に声をかけてきてマントを取れなんて普通に考えてもおかしいよ。
「あ~!お前ら言うこと聞かないつもりなのか!たくっ!手間を取らせやがって!」
口も悪いけど手癖も悪い人だった。言葉を言い終わらないうちにレグルスのマントのフードを掴んでいたのだ。どうやら無理やり外すつもりらしい。
早朝で人通りが少ないとはいえ人が全くいない訳ではない。通りを通る人達の視線を集めているのに気がついていないのかな?
「ほら、顔を見せろ!」
レグルスのマントのフードを外された。レグルスが顔を記憶していたということは相手ももしかしたらレグルスの顔を覚えている可能性があるよね…大丈夫かな。
「キャッ!」
周りの女性達から声が漏れているのが聞こえてくる。
「乱暴な人ですね。それで?私はあなたの探している人でしょうか?」
レグルスは髪の毛を整えながら相手を睨んでいる。
「…いや、知っている奴に似ているが髪色が違うし話し方が違うな。チッ!紛らわしいことするなよ!」
え?この人、凄い態度悪いな!!!
「ちょっとあの人相手がイケメンだったから気に入らなくて文句をつけてるのかしら?やだわ」
「本当ね!」
わざと聞こえるように言っていると思われる悪口が耳にはいってくる。髪色を水色にしたレグルスはこの国のイケメン仕様の仕上がりとなっていますからね。
こんなこともあろうかと髪色を変化させていたんです。万が一のつもりだったけど…引き強すぎだよ。これはきっと後でレグルスに言われるな…。
「うるさい!」
男はいたたまれなくなったのか怒りながらどこかに行ってしまった。…逃げたともいうかな。
「はあ~、何とかなりましたね。アイオラ様の引きの強さには毎回驚かされますよ」
ほら、やっぱり言った!
"アイオラだからね、トラブルは仕方ないわよ"
ちょっと妖精さん!?その言い方失礼ですよ。
"そんなにトラブルに巻き込まれるのか?"
精霊様が驚いてるじゃないですか!
"こんなのは軽い方ですわ"
キュートも言い方!
黙っているモコだけは私の味方だよね…と思ってモコを見ると何と寝ていました。しかも少し体を空中に浮かしてキュートに紐で引っ張られています。
「モコ風船?」
"お兄様のことはお気になさらないで下さい。態度が悪かったので教育的指導と言うものをしただけですわ"
キュートの教育的指導…。想像したくもありません。
「ハハッ…そうなんだね」
「アイオラ様、早くここから離れますよ」
レグルスがキュートとモコを脇に抱え込み歩くスピードを上げた。
モコ…起きないな。
「わかった」
モコも気になるけど今はこの国から早く脱出するべきだよね。
いざ、次の国へ!
アイオラとモコの内緒話
「キュートの教育的指導って何をされたの?」
"…男には言えないことがある"
それって使い方間違ってない?
「要するに思い出したくも言いたくもないってこと?」
"……世の中には知らない方が良いこともあるんだ"
ハードボイルド小説の主人公の様なセリフだけど…体震えてるよ。
「…うん。なんかごめん」
モコを思いきり抱きしめるアイオラでした。




