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51. 閑話 愛する人への懺悔

いつも読んでいただきありがとうございます。


今回は星の国の王様の話です。




「スピカに似ていたな…」


 つい先程対面した息子の顔を思い出す。


 愛しい人が私の元からいなくなって何年経ったのだろうか…。


 何故こんなことになってしまったんだろう。


 本当はつくはずではなかった王座についてから全ての歯車が狂いだしたような気がする。


 若い頃、長男ではない私は気楽な立場なので勉強のためと理由をつけて世界中を旅をしていた。そうすれば道楽者として王座を巡る争いにも巻き込まれないだろうという打算もあった。


 兄達が結婚して子供ができた頃くらいに帰国すれば全てが上手くいく…とあの頃の私は単純に考えていたんだ。


 だが…私が生きていることすら許してくれない奴らがいるということを身をもって教えてもらった。


 旅の途中で襲われて動けなくなってしまったんだ。その時、私の意識が失くなる直前に私を襲った男が「これで依頼達成だ。報酬をたんまりもらえるぜ」と言ったのを聞いて、あ~、私は生きていることすら許してもらえないのか…と知った。


 私の考えが甘かった。…と後悔したところで体はゆうこときかず、ここで死ぬのかと諦めて意識を手放した。


 まさかそれが彼女との出会いになるとは…イタズラ好きな神様がいるものだなとあの時は思っていたな。


 目を開けた先に美しい女性がいるのを見て、天国に来れたのか?と一瞬思ったが、体の痛みが酷く生きていることに気がついた。


「やっと目を覚ましたわね。どこか痛い?気分が悪いとかはない?お水飲む?」


 矢継ぎ早の質問に唖然としていたら彼女が笑い始めた。


「プッ…ごめんなさい。驚かせたわね。口が開いたままになってるわよ。イケメンが台無しね」


 その笑顔に私はドキッとした。思えばこの時一目惚れしたんだろう。


 私の体が回復する頃には二人の仲は変化していた。ただ彼女の兄に反対されていたので秘密の仲という感じだった。


 世間一般的にエルフ族である彼女と人間の私が付き合うことはあまり歓迎されることではなかったし、私の素性も話していなかったから仕方ないのだが…。


 エルフ族は人間に比べて長生きする。恋人や伴侶になると人間が先に天に召されることが多く彼女を一人にする事、悲しませる事を彼女の兄は心配していたんだろう。私達もそれは理解していた。…が、少しの時間でも二人で一緒にいられることが幸せだったのだ。


 だからこそ、自分の素性を言い出しにくかった。星の国の王子だと言ってしまえば関係が壊れるのではないか?と考えていたからな。


 今思えばこの時彼女と別れていれば彼女…スピカは生きていられたのだろうか…。何十回、何百回と何度も考えていることだ。


 子供ができた時、スピカには素性を正直に話した。驚きはしていたが彼女は私を受け入れてくれた。そして風の噂で兄達が亡くなった事を知った彼女は星の国に帰る事を私に進めてきた。


 母国に命を狙われた私が母国に帰ることに抵抗がなかった訳ではないが幼い頃から叩き込まれてきた王族の使命感というものが消えなかったのだ。


 私は意を決してスピカと一緒に星の国に帰国した。


 私の帰国を回りは表面上は喜んでいた。…が、スピカが命を狙われるということおこるようになった。


 国内の貴族がスピカの事を認めなかったのだ。私はスピカの命を狙わないという約束のもとで国内の貴族から王妃を娶ることになった。それが魔女だとも知らずにな…。


 思えばこれも歯車を狂わした原因の一つだな。


 あの女と出会ってから私の頭の中には白いモヤがかかったような状態になり、考えが上手く纏まらなくなった。王妃の言うこと全てが正しいとさえ思っていた。まさかその間にスピカを王城から追い出していたとは知らなかった。


 王城全体の様子がどんどんと変化していき、国全体も変化していたことに貴族も平民も誰一人として気がつくことは無かった。こんなにも異常な状態だったのに…。


 いや…いたな。気がついていた人物が…あれは当時スピカの護衛をしていた今の男爵。当時は平民だったはずだ。


 何度か秘密裏にスピカの事を私に教えに来てくれていたが、当時の私はあんなにも愛していたスピカより王妃の事が気になりスピカの事に何も対処をしなかった。


 だんだんと男爵は私の所に来なくなり姿を完全に見せなくなったが…そうか…あの頃にスピカは国を出たのかもしれないな。


 すまないスピカ…。


「苦労を掛けるかもしれないが良いのか?」


「普通に生きていても苦労するわ。愛する人の為の苦労なら頑張れる自信があるわよ!」


 精霊国を出る時にスピカに聞いたことがあったが本当に想像以上の苦労をさせてしまった。…寿命を縮める苦労までかけるとは思っていなかった。


 すまないスピカ…。


 もっと君と一緒に居たかった。


 もっと君と話をしたかった。


 もっと君と笑いあいたかった。


 もっと君を愛したかった…。


 今はもう君を見ることは叶わない。


 君に謝ることも、もう叶わない。


 だから…私は自分に罰を与える。


 私達の愛する息子にはもう二度と会わない。


 あの子には愛する人と何事にも縛られず自由に生きてほしい。 


 君の面影が残る息子に会えないのは辛いが、私が今まで君に背負わせてきた苦労を考えれば耐えられるだろう…。


 願わくば私が天に召される時には君に迎えに来てほしい。そして愛する息子を上から二人で見守りたい。


 愛しいスピカ…君は私を迎えに来てくれるかい?



 バルコニーに立ち夜空を見上げるとそこには呪いの力が弱まり久しぶりに星の国らしい美しい星月夜が広がっていた。


 




 


 

 


 




 

女子会


"タイプ?そうですね~、頭の回転が早くて体力があって武芸が得意な方でしょうか"


"えっ、キュートちゃん理想高~い!なかなか居ないわよ"


"そういう妖精さんはどうですの?"


"私?そうね~私はイケメンで私の事だけを愛してくれる優しくて強いお金持ち!"


"妖精さんも人の事を言えないと思いますわ"


なぜか強制参加させられているモコの頭の中には"この二人は似た者同士"という言葉が浮かんでいたとかいないとか…。



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