4. 花の国 ご当地グルメ
多くの人に読んでもらえるまで更新ペースを変更しようと思います。
時間や曜日はバラバラになると思いますが読んで頂けると嬉しいです。
「ふわぁ~!!凄いカラフルな屋台だー」
馬車が到着した広場には色とりどりのカラフルな屋台が所狭しと並んでいた。ここは屋台村と言うらしい。馬車の中でレグルスに教えてもらっていたけど前世の屋台村を想像していたので違いにビックリです。
「さっきの話を覚えてますか?」
耳元で冷たく囁く悪魔…じゃなくてレグルス。わかってますよ。目立たないようにしないと緑の国に連れ戻されると言いたいんでしょ!
ふてくされながら広場に目をやる。
「あれは何?」
走っている子供達が持っている花に目がとまる。綺麗な水色の花びらの花。その花の中心がくるんと丸まっていてそこからシャボン玉がでているのだ。
造花?前世でも見たことがないよ!
「あれはシャボ花と言って、花の国にしか咲かない花ですね」
そうなんだ!さすが異世界だと思ってしまう。旅はこういう新しい発見があると嬉しいよね。と思っていたら今度は違う物に目がとまった。
「あの綺麗なかき氷に飾られている花は本物?」
広場の椅子に座っている若い女性達が食べている小さな花が上に飾られたかき氷だ。
「ああ、あれも花の国でしか食べられない花氷と言うものです。あの花は食用なので食べられますよ。アイオラ様食べてみま…」
「食べたいです!」
レグルスの問いかけに食い気味に返答してしまった。食い意地がはっているみたいで恥ずかしいけど仕方ないよね。
レグルスはすぐに花氷を買って来てくれた。
「甘い香りがするね。それに近くで見てもとっても綺麗」
氷には黄色いシロップがかかっていて、その上にピンクや赤、白、紫などの色とりどりの小花が飾られている。
スプーンで白い花と氷をすくい口に入れた。
「美味しい!不思議だけど白い花がフルーツみたいな味してる。これって…そうだ!桃の味!」
前世で大好きだったフルーツの一つだから嬉しい。テンションが上がっちゃうよ。確か前世でも食べられる花はあったけどこんな味では無かったと思う。
「もも…って何ですか?」
レグルスに不思議そうに聞かれて思い出した。この世界に残念ながら桃という食べ物は無かった事を思い出した。
前にどうしても食べたくなって聞いてみたけど「そんな食べ物は聞いたことがありません」と言われて落ち込んだのだ。
「え…聞き間違いだよ。もーって悶えるくらい美味しいと表現したの」
苦しい言い訳だと自分でも思うが、これでのりきり花氷を味わう事に集中する。レグルスの冷たい視線は無視です。
次は赤い花を食べてみよう。
おっ、これは苺味だ~!甘酸っぱくて美味しい。花の国の食用花は前世のフルーツ味なの!?嬉しすぎます。
「美味しそうに食べますね。それが食べ終わったら買い物に行きますよ」
「うん」
レグルスがだんだんと母親のように思えてくるのは気のせいなのかな。黙っていればイケメンなのにな。
「買い物できる商店は近くなの?」
「はい。ここは街の入り口なので屋台村を通り抜けた先に商店が並んでいます」
すぐに花氷は食べ終えてしまったので、屋台村を抜けて商店へと向かった。ひと悶着あったけどね…。
だってもっと食べたかったんです。
花氷…屋台の前を通る時に確認したら5種類ほどあったので食べたい!とレグルスに言ったら「お腹を壊すからダメです」って言われて「一つだけ…お願いします」と粘ったけど…ダメだった。
食べ物の恨みは恐ろしいと言うことをレグルスは知らないのだろうか。いつかこの恨みを晴らしてやると心に誓う。
そうだ!今日から心の中ではレグルスママと呼んであげよう。ささやかな私の復讐だ。
そんなことを知らないレグルスママはというと、目的の商店を次々と巡り、あっという間に買い物を済ませてしまっていた。
レグルスママは主婦能力が高いみたい。いつかレグルスママも、他の主婦の皆さんみたいにそのうちに手首のスナップを効かせて話をしたりするのかな?
私はもう少しこのカラフルな街を楽しみたかったんだけど、さっきの馬車の中で聞いた噂話があるからダメだとレグルスママに言われて後ろ髪を引かれながら街を後にし帰宅した。
家に帰るとレグルスのお母様が花の国の名物だという料理を沢山用意して待ってくれていた。
さっきの屋台でも思ったけど、この国は基本的に何でもカラフルなのだということがわかった。
食用花があしらわれているサラダにご飯、それにスープ。よく見ると花の種類が全部違うみたい。まさか、ご飯に使われている花もフルーツ味…なんて事はないと信じたい。
「これはおめでたい事があった時に出す料理なんですよ」
レグルスのお母様が笑顔で説明しながら私の分をお皿に取り分けてくれている。
ご飯の味が気になるが食べないという選択肢はないので、思いきって口に入れた。因みにご飯に混ぜられているお花は蕾で色は赤色。
「…豆ご飯だ」
色は違うけど前世でも食べていた緑の豆の入った豆ご飯と同じ味がする!美味しい!緑の国では木の実が入った甘いご飯が名物だったけど、私的には苦手だったんだよね。
うんうん、やっぱり旅の醍醐味であるご当地グルメも食べるべきだよね。
「スープも召し上がって下さいね」
「はい!」
勧められたので今度はスープにも口をつけた。
不思議な味がする~。ハーブの様な香りが鼻から抜けて後味が爽やかだ。
「この味付けは何ですか?」
前世でも味わった事がない味に興味を持つ。
「この花で味付けするんですよ。お湯に入れると溶ける不思議な花でチュープと言います」
見せてくれたのは黒い花。花のままだと香りは全然感じられないし、スープの色と全然違う花の色にも驚いた。
スープの色は濃い緑なのに花の色は黒い?どんな化学反応でこの色になるのかさっぱり理解できません。…が美味しいので深くは考えないことにします。
花自体は前世のチューリップみたいな花で、花びらを一枚ずつ溶かして濃度を調節するみたいです。異世界料理は奥が深そうです。花が調味料なんて不思議すぎます。
まだ食べていないサラダも気になります。取り分けてもらったサラダを見るとクリーム色をした花の花びらが混ぜられています。花びらだけを食べてみます。
「ふぉ、こ、これは…マヨ…マヨネーズ味」
なんと前世のマヨネーズ味みたいな味です。マヨラーだった私には感動すら覚える味です!緑の国ではサラダは木の樹液をかけてたべてましたからね。味はオリーブオイルみたいな味だったのですが…。マヨネーズが恋しくて探しましたが緑の国では見つからず涙を流しましたよ。
「何泣いてるんですか?」
「へ?」
どうやら感動しすぎて嬉し涙を流してみたいです。レグルスママにいつもの冷たい視線攻撃を受けています。
フッフッフ…マヨネーズの前ではそんな攻撃痛くも痒くもないのです。
「このサラダに入っているお花の名前はなんですか?」
大量に手に入れる為には花の名前を教えてもらわないといけません。
「それはマヨ花と言います。この国では料理によく使用される花の一つですよ」
よし!明日はこの花を買い占めに走らねば!と思ったアイオラだった。
だが、翌日レグルスママに止められることは今はまだここだけの秘密の話。